短期プライムレートは3つ公表されています|築古アパートのオーナーが借り換えの前に確かめる金利の出どころ

結論からお伝えすると、アパートローンの借り換えを考えるとき、最初に見るのは提示された金利ではなくその金利の出どころです。変動金利の多くが基準にしている短期プライムレートは、日本銀行が最頻値・最高値・最低値の3つを公表しています。2026年8月3日実施分は最頻値2.375%・最高値2.625%・最低値2.375%で、銀行によって0.25%の開きがあります(出典:日本銀行「長・短期プライムレート(主要行)の推移」)。同じ「短プラ+1.5%」という約定でも、どこから借りているかで返済額が変わるということです。

借り換えの前に確かめる4点をまとめた図。連動する基準、上乗せの率、見直し日と反映月、登記と印紙の実費の順に並べている

「短プラ+1.5%」の短プラは、1つの数字ではありません

金融機関から渡される変動金利の説明には、「短期プライムレートに連動」と書かれていることがあります。この短期プライムレートは、日本銀行が主要行を対象に集計して公表している数字です。表を開くと、金利の列が3つに分かれています。

  • 最頻値:いちばん多くの銀行が採用している値
  • 最高値:主要行のなかで最も高い値
  • 最低値:主要行のなかで最も低い値

2026年8月3日実施分は、最頻値2.375%、最高値2.625%、最低値2.375%です。最高値と最低値の開きは0.25%。この0.25%は、直近の引き上げ1回分とちょうど同じ幅です。つまり「金利が上がったから返済がきつい」と感じている状態は、借入先によってはすでに他行が引き上げる前の水準に据え置かれているのと同じ意味を持ちます。

もうひとつ、表を下まで追うと目に留まる欄があります。2026年2月3日と2025年3月12日の最頻値は、数字ではなく「不定」と記載されています。各行の値がばらけて、最も多い値が決まらなかった日です。短期プライムレートは全国一律に決まる公定の金利ではなく、銀行がそれぞれ決めた数字を集計したものだからこうなります。

長期プライムレートは、日本銀行が決めた金利ではありません

同じページには長期プライムレートも並んでいます。2026年8月12日実施分は3.25%です。年初の2026年1月9日は2.75%だったので、半年で0.50%上がっています

ここが実務者でも取り違えやすいところです。この長期プライムレートについて、日本銀行はページの注記で「みずほ銀行が、長期プライムレートとして自主的に決定・公表した金利を掲載」と書いています。日本銀行が決めた金利ではなく、1行が自分で決めて公表した数字を、日本銀行が転載しているという構造です。

「日銀の長期プライムレートが上がったので、うちも上げます」という説明を受けたときは、その金利が実際に何に連動する約定なのかを契約書で確かめる価値があります。長期プライムレート連動なのか、短期プライムレート連動なのか、それとも一定期間ごとの銀行の裁量なのかで、次に返済額が動くタイミングが変わります。

借り換えを検討する前に、契約書のどこを見るのですか?

金銭消費貸借契約証書の利率の見直しに関する条項です。見るのは3点だけです。

  1. 何に連動するのか(短期プライムレート/長期プライムレート/その他の基準)
  2. 上乗せは何%か(「基準金利+◯%」の◯の部分)
  3. 見直しの基準日と、返済額が変わる月(年2回か、1回か、いつの金利を使うか)

ここを押さえないまま他行に相談すると、比較の土台がそろいません。金利の数字だけを並べても、基準が違えば比べたことになりません。

2年で0.75%。段が上がった日はいつか

短期プライムレートの最頻値は、この2年で次のように上がっています(いずれも実施日・出典は同じ日本銀行の表)。

  • 2024年9月2日:1.625%
  • 2025年3月3日:1.875%
  • 2026年2月2日:2.125%
  • 2026年8月3日:2.375%

2年で0.75%です。借入残高3,000万円・元金均等ではなく元利均等で残り20年という条件なら、0.75%の差は月あたりでも軽くありません。ただし、ここで押さえておきたいのは返済額がいつ変わるかです。多くの契約は基準日を決めて年に1回か2回だけ利率を見直すため、8月3日に基準が上がっても、返済額に反映されるのは次の見直し月からという形になります。契約書の条項を読まないと、上がったことに気づくのが引き落としの通知が届いた月になります。

借り換えの実費を左右で比べた図。旧抵当権の抹消は不動産の個数で決まり、新抵当権の設定は債権金額で決まることを示している

借り換えの実費は、借入額だけでは決まらない

借り換えは「旧ローンを期限前に返して、新ローンを借りる」手続きです。このとき登記と印紙で必ず出ていく実費があります。しかも計算のもとになるものが、抹消と設定で違います

  • 旧抵当権の抹消不動産1個につき1,000円(登録免許税法 別表第一 一(十五))。同一の申請書で20個を超える不動産の抹消を受ける場合は、申請件数1件につき2万円
  • 新抵当権の設定債権金額の1,000分の4(同 別表第一 一(五))
  • 金銭消費貸借契約書の印紙税:契約金額1,000万円超5,000万円以下は1通2万円、500万円超1,000万円以下は1万円、100万円超500万円以下は2,000円(印紙税法 別表第一 第1号)

土地2筆と建物1棟を担保に入れている物件を3,000万円で借り換えるなら、抹消は3個で3,000円、設定は3,000万円×4/1000で12万円、印紙が2万円。登記と印紙で14万3,000円です。これに司法書士報酬、銀行の事務手数料、保証会社を使う場合の保証料が乗ります。

抹消は個数、設定は金額という違いは、実費の見積りを自分で立てるときに効きます。担保に入っている不動産の個数が多い物件(私道の持分が細かく分かれている、土地が何筆にも分かれている築古アパートなど)でも、抹消側は個数×1,000円で、20個を超えたところで1件2万円に切り替わって打ち止めになります。一方の設定側は、借りる金額が増えればそのまま増えます。

それでも借り換えが向かない場面

都合の悪いことも書いておきます。

  • 残り期間が短い:残高が減っていれば、下がる利息の総額が実費と司法書士報酬に届かないことがあります
  • 期限前弁済に約定の負担がある:期限前の返済で貸主が損害を受けたときは、貸主が賠償を請求できると民法591条3項が定めています。実際にいくらになるかは契約の定め方によります
  • 築年数で期間が伸びない:借り換え先の返済期間が今より短くなれば、金利が下がっても月々の返済は増えます。築古物件では期間の条件が先に効きます(→ 築30年を超えたアパートでも融資がつく条件|オーナーが先に整える資料
  • 手元資金が薄くなる:実費を現金で払うため、修繕の予備費まで削ることになれば本末転倒です

埼玉・千葉県西部・栃木県南部で築古アパートを持っている方は、借り換えの相談を始める前に、直近の返済予定表と課税明細書を並べておくと話が早く進みます(→ 固定資産税の課税明細書の見方は6つの欄から|築古アパートのオーナーが4月と3か月で動く)。担保に入っている不動産の個数は、この明細で数えられます。

なお、契約書に貼る印紙の扱いは文書の種類で変わります。賃貸借契約書との違いは大家が結ぶ賃貸借契約書に印紙は要りません|例外の3つと、家賃の領収書にまとめてあります。

金利の水準そのものや、借り換えの可否・税務の取り扱いは、金融機関・税理士・司法書士に確認してください。ここに書いたのは、公表されている数字と条文から確かめられる範囲です。

今日やることを1つだけ選ぶなら

金銭消費貸借契約証書を出して、利率の見直し条項に線を引くこと。「何に連動し、上乗せは何%で、いつ見直すのか」の3点だけを書き写します。この3行がそろっていれば、他行に相談したときに同じ土台で比べられます。数字を写す前に電話をかけると、比較にならない話を長くすることになります。

出典

  • 日本銀行「長・短期プライムレート(主要行)の推移」(2026年9月4日閲覧。短期プライムレートは2026年8月3日実施分、長期プライムレートは2026年8月12日実施分)https://www.boj.or.jp/statistics/dl/loan/prime/prime.htm
  • 登録免許税法 別表第一 一(五)・一(十五)(e-Gov法令検索・2026年9月4日時点の現行法)
  • 印紙税法 別表第一 第1号(同)
  • 民法591条3項(同)

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