固定資産税の課税明細書の見方は6つの欄から|築古アパートのオーナーが4月と3か月で動く

結論からお伝えすると、固定資産税の課税明細書で最初に見るのは「税額」ではなく「価格」の欄です。法律が市町村に「書きなさい」と義務づけているのは価格と面積のほうで、税額の内訳ではありません。そして、あとから争えるのも価格だけです。期限は2つ、4月からの縦覧と、納税通知書が届いた日の3か月後。この2つを過ぎると、その年度分は手が出せなくなります。

5月ごろに封筒が届いて、いちばん大きい数字だけ見て、そのまま金融機関へ持っていく。築古アパートを持っていると毎年これを繰り返します。ところが明細書の中身は、法律で欄が決まっています。どこを見るかを先に決めておけば、開いている時間は3分で足ります。

課税明細書で先に見る欄。地方税法364条3項が定める土地と家屋の記載事項、住宅用地の率、争えるのは価格だけであること、納税通知書の交付日を控えることをまとめた図

課税明細書に「書け」と決められている欄

地方税法364条3項は、市町村が土地・家屋の固定資産税を徴収するとき、納税通知書とは別に課税明細書を交付しなければならないと定めています。そこに記載する事項も、同じ条文が並べています。

  • 土地……所在、地番、地目、地積、当該年度の固定資産税に係る価格
  • 家屋……所在、家屋番号、種類、構造、床面積、当該年度の固定資産税に係る価格

さらに同条4項が、住宅用地の特例(349条の3の2)などの適用を受ける土地・家屋については、価格に特例の率を乗じた金額も明細書に書くことを求めています。

逆に言うと、税額がどう計算されたかの内訳は、法律が書けと言っている項目ではありません。市町村が親切で載せていることは多いのですが、法定されているのは「価格」と「面積」です。争いの土俵もそこにあります。

家屋の価格が下がらないのは、計算式が2本あるからです

「築40年なのに家屋の税額が減らない」という相談は毎年あります。理由は評価のしかたにあります。さいたま市は自らのサイトで、家屋の評価をこう説明しています。

  • 再建築費評点数 × 経年減点補正率等 × 評点1点当たりの価額 = 評価額
  • 当該家屋の前年度の価額
  • この1、2のいずれか低い額が評価額となります

(出典:さいたま市「再建築価格を基準とした評価について」2024年4月1日更新)

前段の「再建築価格」は、いま同じ建物を建て直したらいくらかという金額です。建築資材と人件費が上がれば、この数字は古い建物でも上がります。そこに経年減点補正率をかけて古さを引きますが、建築費の上昇が古さの目減りを上回れば、計算上の評価額は前年より高くなります。そのときは前年度の価額に据え置かれる——つまり下がらないまま横ばいが続くという結果になります。

さいたま市の固定資産税に関するよくあるお問い合わせ(2025年8月7日更新)でも、「家が古くなれば税額も下がるのでは?」という質問に対し、「必ずしも年数が古いからといって税額が下がるとは限りません」と明記されています。建物の評価替えは3年ごとで、同市は次の基準年度を令和9年度と案内しています。

土地の欄で真っ先に見るのは「住宅用地」の率です

アパートを載せている土地は、住宅用地の特例で課税標準が下がります。地方税法349条の3の2は、住宅用地の課税標準を価格の3分の1とし、そのうち1戸あたり200平方メートルまでの部分(小規模住宅用地)を価格の6分の1としています。200平方メートルは「土地全体」ではなく「住居の数で割った面積」で判定するので、6戸のアパートなら1,200平方メートルまでが6分の1の枠に入ります。

注意したいのは、この特例が建物の使われ方に紐づいている点です。さいたま市は、住宅割合が25パーセント以上の建物の敷地であれば特例を受けられ、店舗・事務所用地や住宅割合25パーセント未満の敷地には適用がないと説明しています。1階が店舗、2階が住居という古い併用アパートは、ここで結果が分かれます。

建物を壊したときも同じです。同市は、住宅を取り壊して駐車場にした事例について、家屋分の税がなくなった以上に、土地が特例を外れた上昇分のほうが大きかったと回答しています。空室が続いたアパートを解体するかどうかを考えるときは、この向きを先に確かめてください。関連して満室なのにお金が残らない築古アパート|オーナーが収支のどこを見直すかもあわせて読むと、年間の固定費として見たときの位置づけが分かります。

価格に納得できないときの手順。台帳の閲覧、4月1日からの縦覧、文書での審査の申出、決定に不服なときの取消しの訴えという4段の順番を示した図

価格に納得できないとき、いつまでに動けますか?

順番は決まっています。

1.自分の台帳を見る(閲覧・いつでも)

地方税法382条の2により、納税義務者は自分に係る固定資産課税台帳を閲覧できます。明細書に載っていない評価の内訳は、ここで確認します。

2.他人の物件と比べる(縦覧・4月から)

415条で、市町村長は土地価格等縦覧帳簿・家屋価格等縦覧帳簿を毎年3月31日までに作成します。416条は、これを毎年4月1日から、4月20日または当該年度の最初の納期限の日のいずれか遅い日以後の日までの間、納税者の縦覧に供しなければならないと定めています。目的は条文にはっきり書かれていて、自分の土地・家屋の価格と、同じ市町村内の他の土地・家屋の価格とを比較できるようにするためです。土地の帳簿は土地の納税者、家屋の帳簿は家屋の納税者が見られます。

3.審査を申し出る(納税通知書から3か月)

432条1項は、価格に不服がある納税者は納税通知書の交付を受けた日後3か月を経過する日までに、文書で固定資産評価審査委員会へ審査の申出ができると定めています。市の窓口へ電話で伝えることは手続ではありません。

4.それでも決着しないとき

434条1項で、委員会の決定に不服があれば取消しの訴えを提起できます。そして同条2項が、審査を申し出られる事項はこの2つの方法によってのみ争うことができると定めています。3か月を過ぎたら、その年度の価格はもう動かせません。

家屋の課税標準額が20万円未満なら、家屋の税はかかりません

意外と知られていないのが免税点です。地方税法351条は、同一の市町村内で同じ人が所有する固定資産について、課税標準となるべき額が土地30万円、家屋20万円、償却資産150万円に満たない場合、固定資産税を課することができないとしています。評価額が下げ止まった古い木造の物置や、小さな附属家がこの線を割っていることがあります。明細書で「価格は載っているのに税額の欄が空」なら、この可能性を疑ってください。

1月31日までに出す申告が、もう1つあります

土地と家屋は市町村が評価しますが、償却資産だけは所有者の申告です。さいたま市は、償却資産の例として門、塀、広告塔、塗装路面、屋外配管用設備などの構築物・建物附属設備を挙げ、毎年1月1日現在の所有者に1月31日までの申告を求めています。アパートの外構をまとめて直したとき、そのまま忘れているオーナーは少なくありません。減価償却の考え方は耐用年数を過ぎた木造アパートの減価償却をどう考えるか|オーナー向けに、事業として数えるときの線引きは事業的規模の線は1本ではありません|築古アパートのオーナーが所得税と個人事業税で数え方を分けるにまとめています。

なお、いつ・いくら来るのかという納期そのものの話は固定資産税はいつ・いくら来るかで扱っています。この記事は届いた明細書をどう読み、どの期限までに動くかに絞りました。

今日やることを1つだけ選ぶなら

去年の課税明細書を出して、家屋の「価格」の欄だけを一昨年のものと見比べてください。同じ数字なら据置が効いています。上がっていれば、評価替えで再建築価格が伸びた年です。そのうえで、封筒に入っていた納税通知書の交付日を確認し、3か月後の日付をカレンダーに入れておく。ここまでが、今年できることの全部です。

税務の判断は個別事情で変わります。金額や適用の可否については、資産の所在地の市税事務所・町村役場の資産税担当、または税理士に確認してください。

Follow me!