木造アパートの地震保険料は埼玉も東京も同じです|築古オーナーが付帯率70.8%の中身から決める
結論からお伝えすると、木造アパートの地震保険料は、埼玉県も千葉県も東京都も同じ4,110円です(保険金額100万円あたりの年間保険料・2022年10月1日以降の始期契約)。「埼玉は都心より地震保険が安い」という感覚は、鉄骨造やコンクリート造の話であって、木造の共同住宅には当てはまりません。付けるか付けないかを決める材料は、保険料の地域差ではなく政令が定めた4区分と出ない損害の線引きのほうにあります。
2026年8月25日に出た数字と、その母集団
損害保険料率算出機構(理事長 早川眞一郎)は2026年8月25日、2025年度の地震保険付帯率を公表しました。全国平均70.8パーセントで、前年度の70.4パーセントから0.4ポイント増、2003年度以降23年連続の増加です(統計開始の2001年度以降で過去最高値)。
ただし、この70.8パーセントが何の割合なのかは押さえておく必要があります。同機構は付帯率を「当該年度に契約された火災保険(住宅物件)契約件数のうち、地震保険を付帯している件数の割合」と定義しています。いま火災保険を持っている人の7割ではありません。その年に契約した人の7割です。すでに持っている契約まで含めた広がりを見るなら、同機構が別に出している世帯加入率のほうで、こちらは2025年度で全国35.5パーセントです。
都道府県別に開くと、当社の対応エリア(東京・埼玉・千葉西部・栃木南部)のうち3県は、次のように割れます(同機構「グラフで見る!地震保険統計速報」2025年度)。
- 栃木県 75.0パーセント(世帯加入率35.0パーセント)……全国平均より高い
- 千葉県 65.8パーセント(同35.7パーセント)
- 埼玉県 65.4パーセント(同33.5パーセント)……前年度の65.6パーセントから0.2ポイント減
全国が23年連続で伸びているあいだ、埼玉県は2021年度65.5、2022年度65.5、2023年度65.4、2024年度65.6、2025年度65.4と5年間ほぼ動いていません。地震のリスクが動いていないからではなく、付けるかどうかを決める場面で外している人が多いということです。以下は、その判断に必要な条文です。
地震保険は自分で設計できる範囲が狭い保険です
地震保険に関する法律2条2項は、地震保険契約の要件を4つ挙げています。実務上効くのは1号と4号です。
- 1号……居住の用に供する建物又は生活用動産のみを保険の目的とすること
- 4号……附帯される損害保険契約(火災保険)の保険金額の100分の30以上100分の50以下に相当する金額を保険金額とすること。その金額が政令で定める金額を超えるときは、政令で定める金額とする
その政令の限度額が、地震保険に関する法律施行令2条の居住用建物5,000万円、生活用動産1,000万円です。日本損害保険協会も同じ内容を示したうえで、店舗や事務所のみに使用されている建物は補償の対象外としています。1階が店舗の併用住宅は対象に入りますが、事務所だけの建物は入りません。
そして商品内容と保険料は、保険会社間で差異がありません(同協会)。地震保険は政府が再保険を引き受けて共同運営している制度だからです。相見積もりで安くなる種類の買い物ではない、ということでもあります。

出るか出ないかは、時価の3パーセントで切られます
支払いは損害の程度で4段階です。地震保険に関する法律施行令1条1項が居住用建物について定めている区分は次のとおりです。
- 全損……主要構造部の損害額が時価の50パーセント以上(または焼失・流失した床面積が延べ床面積の70パーセント以上)→ 保険金額の全額
- 大半損……同40パーセント以上50パーセント未満(床面積50パーセント以上70パーセント未満)→ 保険金額の60パーセント
- 小半損……同20パーセント以上40パーセント未満(床面積20パーセント以上50パーセント未満)→ 保険金額の30パーセント
- 一部損……同3パーセント以上20パーセント未満→ 保険金額の5パーセント
ここでいう「時価」は、同条2項が「損害の発生する直前の保険の目的のその所在地における価額」と定義しています。主要構造部は、建築基準法施行令1条3号の構造耐力上主要な部分(基礎、基礎ぐい、壁、柱、小屋組、土台、斜材、床版、屋根版、横架材など)です。
築古アパートのオーナーが取り違えやすいのはここです。基準は「修理費がいくらか」ではなく「時価に対する割合」なので、時価が下がっている古い建物ほど、同じ被害額でも上の区分に届きやすくなります。一方で、火災保険の保険金額を時価で設定していれば、その30〜50パーセントである地震保険金額そのものが小さくなります。どちらに効くかは、火災保険を時価で契約しているか再調達価額で契約しているかで逆になります。外壁や基礎のひび割れをどう見るかは基礎のひび割れは0.3ミリか0.5ミリか|築古アパートのオーナーが幅より先に見る3つに書きました。
アパートで先に知っておきたい「出ない」ケース
日本損害保険協会は、地震保険で保険金が支払われない場合を明示しています。築古アパートに直結するのは次の2つです。
- 門、塀、垣、エレベーター、給排水設備のみの損害のときは支払われない。損害が一部損に至らないときも同じ
- 地震等の発生日の翌日から起算して10日を経過した後に生じた損害も支払われない
ブロック塀が倒れた、受水槽の配管が折れた、という被害だけでは地震保険は動きません。そして10日の線があるので、地震のあとに「様子を見る」期間を長く取ると、後から出てきた損害が枠の外になることがあります。
旧耐震のアパートは、入れないのではなく割引が使えないだけです
ここも誤解が多いところです。日本損害保険協会によれば、地震保険の割引は免震建築物割引50パーセント、耐震等級割引(等級3は50パーセント、等級2は30パーセント、等級1は10パーセント)、耐震診断割引10パーセント、建築年割引10パーセントの4つで、重複して適用を受けることはできません。建築年割引は1981年(昭和56年)6月1日以降に新築された建物が対象です。
つまり旧耐震の物件は割引が付かないだけで、契約そのものはできます。逆に、耐震診断や耐震改修の結果、改正建築基準法の耐震基準を満たすと証明できれば耐震診断割引10パーセントが使えます。確認資料は、耐震基準適合証明書などの写しです。旧耐震で持ち続ける場合の順番は旧耐震のアパートを持ち続けるリスクと選択肢|オーナーが確認する順番にまとめています。
72時間以内の地震は、まとめて1回と数えます
あまり知られていない条文があります。地震保険に関する法律3条4項は、「七十二時間以内に生じた二以上の地震等は、一括して一回の地震等とみなす」としています。ただし被災地域が全く重複しない場合はこの限りでないと、ただし書きが付いています。本震のあと大きな余震が続いたとき、被害が積み上がっても支払いは1回分の区分判定になる、という意味です。

それで、木造アパートの保険料はいくらですか?
日本損害保険協会が公表している保険金額100万円あたりの年間保険料(2022年10月1日以降の始期契約・火災保険料は含みません)を、当社の対応エリア(東京・埼玉・千葉西部・栃木南部)と、その周辺の県を並べます。ロ構造が主として木造の建物、イ構造が主として鉄骨・コンクリート造の建物です。
- 栃木県……イ構造730円/ロ構造1,120円
- 茨城県……イ構造2,300円/ロ構造4,110円
- 埼玉県……イ構造2,650円/ロ構造4,110円
- 千葉県・東京都・神奈川県・静岡県……イ構造2,750円/ロ構造4,110円
イ構造で見ると埼玉県は東京都より100円安いのですが、ロ構造は埼玉も千葉も東京も神奈川も静岡も茨城も、すべて4,110円で横並びです。木造アパートを持っているかぎり、都県の差はありません。差が出るのは同じエリア内の栃木県で、1,120円と4,110円で約3.7倍ひらきます。栃木県の付帯率が75.0パーセントと全国平均より高いのは、この保険料水準と無関係ではないはずです。
今日やることを1つだけ選ぶなら
火災保険の証券を開いて、地震保険の保険金額が、建物の火災保険金額の何パーセントで入っているかを確かめてください。30パーセントで入っているなら、50パーセントまで上げる余地が制度上あります。付けていないなら、日本損害保険協会が説明しているとおり火災保険の保険期間の途中でも付帯できます。そのうえで、建物が1981年6月1日以降の新築なら、登記簿謄本か建築確認書の写しを出すだけで建築年割引10パーセントが使えます。書類が手元にあるかどうかを、今日のうちに見ておく価値があります。
保険や耐震の判断は個別事情で変わります。契約内容は損害保険会社または代理店に、建物の耐震性については建築士や自治体の窓口に確認してください。


