売買の「予約」は、相手が買うと言った時から売買の効力が生じます|築古アパートのオーナーが読む民法556条
結論からお伝えすると、売買の「予約」は、相手が「買います」という意思を表示した時から、売買の効力が生じます。民法556条1項は、売買の一方の予約は、相手方が売買を完結する意思を表示した時から、売買の効力を生ずると定めています。予約を結んだ時点では、売買はまだ成立していません。相手が完結の意思を伝えた時から、売買が動き出します。
仮の話です。築古アパートの売主と買主のあいだで、「◯月◯日までに買主が買うと言えば、売る」という約束の書面を交わしました。売主は、この書面を結んだ時点で、アパートを売ったことになるのか。いつまでこの約束に縛られるのか。条文の流れを整理します。
556条は、何を決めているか?
- 556条1項:売買の一方の予約は、相手方が売買を完結する意思を表示した時から、売買の効力を生ずる
- 556条2項:1項の意思表示について期間を定めなかったときは、予約者は、相手方に対し、相当の期間を定めて、その期間内に売買を完結するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。相手方が期間内に確答しないときは、売買の一方の予約は、その効力を失う
条文の言葉を、買う権利を持つ側(相手方)と、売る約束をした側(予約者)に分けて読むと、分かりやすくなります。予約者は、相手が「買う」と言ったら売らなければならない立場です。相手方は、買うかどうかを選べる立場です。この選べる立場を、一般には予約完結権と呼びます。

予約は、売買の契約と何がちがうのか?
- 売買契約:結んだ時点で、売主は引き渡す義務、買主は代金を払う義務を負う
- 売買の一方の予約:結んだ時点では、売買は成立していない。相手方が完結の意思を表示した時から、売買の効力が生じる
手付を払う売買契約は、個人どうしの売買で手付を払ったあと、買主は手付を放棄して解除できます|築古アパートのオーナーが読む民法557条の形です。こちらは、売買そのものが成立したあとに、手付で解除する話です。予約は、売買が成立する手前の約束です。

買付証明書と、予約は同じか?
買付証明書は、一般に、買う意思を示す書面で、売買契約そのものではありません。予約も、売買契約そのものではありませんが、相手が完結の意思を表示すれば売買になる点で、買付証明書とは性質が違います。ただし、書面の題名が「予約」でも「覚書」でも「仮契約」でも、題名で性質が決まるわけではありません。何をいつまでにどう約束したのか、書面の中身で読まれます。迷うときは、書面の写しを持って専門家に聞いてください。
期限が書かれていないと、売主は待たされます
予約を結ぶとき、相手方がいつまでに完結の意思を表示するのか、期限を書いておくのがふつうです。期限を書かなかったときのために、556条2項があります。予約者は、相当の期間を定めて、「買うのか、買わないのか、答えてください」と催告できます。その期間内に答えがなければ、予約は効力を失います。
相当の期間が何日かは、条文が決めていません。事案によって変わります。催告は、日付の入った書面で出し、控えを残してください。
予約を結んだあとで、登記はできるか?
不動産登記法105条2号は、権利の設定・移転・変更・消滅に関する請求権を保全しようとするときに、仮登記ができる旨を定めています。請求権には、始期付きや停止条件付きのもの、将来確定することが見込まれるものも含まれます。売買の予約にもとづく仮登記が使えるかどうか、その手続きは、司法書士に確認してください。
都合の悪いことも書いておきます
- 予約を結ぶと、売主は、完結の意思を表示されたら売る立場に置かれます。予約を結んだまま、ほかの買い手との話を進めるのは、難しくなります
- 書面の題名で、予約かどうかは決まりません。題名が「予約」でなくても、中身が予約にあたることもあり、その逆もあります
- 期限を書いていないと、売主は556条2項の催告を出さない限り、いつまでも待つことになりかねません
今日できること
- 手元の書面に、「予約」「完結」「買う権利」といった言葉がないかを確かめる
- 相手がいつまでに意思を伝えるのか、期限が日付で書かれているかを見る。書かれていないなら、556条2項の催告が選択肢になる
- 書面の題名ではなく、書かれた約束の中身を、専門家(弁護士・司法書士)に見せて確認する
出典
民法556条、不動産登記法105条(e-Gov 法令検索・2026年10月7日時点)。


