家賃を受け取る権利を売った大家が入居者の支払能力まで責任を負うのは、「担保する」と約束したときです|築古アパートのオーナーが読む民法569条

結論からお伝えすると、家賃を受け取る権利を売った大家が、入居者の支払能力まで責任を負うのは、「資力を担保する」と約束したときの話です。民法569条1項は、債権の売主が債務者の資力を担保したときは、契約の時における資力を担保したものと推定すると定めています。2項は、弁済期に至らない債権の売主が債務者の将来の資力を担保したときは、弁済期における資力を担保したものと推定する、と続きます。条文は、担保したときに、どの時点の資力までを担保したと読むかを決める形です。

仮の話です。築古アパートの家賃を受け取る権利を、まとめて第三者に売ることになりました。買い手から「入居者が払えなくなったら、売主が責任を持ってくれますよね」と言われました。売主の大家は、入居者の支払能力まで引き受けることになるのか。いつの時点の支払能力を、引き受けたことになるのか。条文の流れを整理します。

569条は、何を決めているか?

  • 569条1項:債権の売主が債務者の資力を担保したときは、契約の時における資力を担保したものと推定する
  • 569条2項:弁済期に至らない債権の売主が債務者の将来の資力を担保したときは、弁済期における資力を担保したものと推定する

ここでいう債権は、大家が入居者に対して持つ、家賃を払ってもらう権利です。債務者は入居者です。資力とは、払えるだけのお金があることです。担保するとは、「入居者が払えなかったら、売主が責任を負う」という約束をすることです。

家賃を受け取る権利を売るときの確認点を整理した図

担保していなければ、売主は責任を負うのか?

569条は、「担保したとき」の範囲を決める条文です。担保の約束がない場合に、売主が責任を負うとは書かれていません。一般には、債権を売った人は、特に約束をしない限り、債務者の支払能力までは引き受けないと考えられています。ただし、契約書に何が書かれているかで結論が変わります。迷うときは、専門家(弁護士)に契約書を見せて確認してください。

買い手の立場では、逆の読み方になります。入居者の支払能力まで売主に持たせたいなら、売買契約書に、担保すると明記してもらう必要があります。口頭で「大丈夫です」と言われただけでは、あとで争いになります。

「契約の時」と「弁済期」は、何がちがうのか?

家賃は、毎月、払う日が来ます。そのため、売る債権には、2種類が混じります。

  1. すでに払う日が来た家賃(滞納分など):1項。担保したなら、契約の時の入居者の資力を担保したと推定される
  2. まだ払う日が来ていない家賃(これから発生する分):2項。担保したなら、払う日(弁済期)の時の入居者の資力を担保したと推定される

たとえば、半年後の家賃も一緒に売って、売主が担保した場合、2項では、半年後の払う日の入居者の資力が担保の対象になると読まれます。契約した日に入居者が元気に働いていたとしても、半年後に払えなくなれば、売主の責任が問われうる形です。

この2つの条文は、どちらも「推定する」です。契約書に別の定めを置けば、別の読み方もできます。つまり、「どの時点の資力を担保するのか」を、契約書に日付や期間で書いておくのが、いちばん争いにくい形です。

払う日が来た家賃と、まだ来ていない家賃で、担保する資力の時点を比べた図

家賃を受け取る権利を売るときの、ほかの条文

家賃債権を売ったときに、入居者への通知を誰が出すのかは、家賃を受け取る権利を第三者に譲るとき、入居者への通知は譲る大家が出します|築古アパートのオーナーが読む民法467条にまとめています。また、建物を売ったときに、売買の前に生じた家賃が誰のものになるのかは、売買の引渡しの前に生じた家賃は、売主のものです|築古アパートのオーナーが読む民法575条が扱っています。建物ごと売るのと、家賃債権だけを売るのとは、別の話です。

都合の悪いことも書いておきます

  • 担保したかどうかは、契約書の文言で決まります。「責任を持つ」「保証する」といった、あいまいな書き方でも、担保と読まれるかが争いになります
  • 569条は「推定」です。担保の時点を契約書に書けば、条文の推定とは違う読み方になりえます
  • 債権そのものが本当にあるのか、すでに払われていないか、といった点は、569条の話ではありません。別の問題として、契約書と事実で確かめる必要があります
  • 金額が大きい取引や、継続的に家賃債権を売る取引は、条文の読み方だけで決めず、契約書を専門家に見てもらってください

今日できること

  1. 家賃債権の売買契約書で、「資力」「担保」「保証」といった言葉があるかを探す
  2. 売る債権に、払う日が来ていない家賃が入っているかを確かめる
  3. 担保するなら、どの時点の資力を、どこまで担保するのかを、日付つきで契約書に書いてもらう

出典

民法569条(e-Gov 法令検索・2026年10月7日時点)。

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