解除するか迷ったまま黙っている買主に、売主は「答えてください」と催告できます|築古アパートのオーナーが読む民法547条
結論からお伝えすると、解除するかどうか迷っている相手に、売主は「いつまでに解除するか答えてください」と催告できます。民法547条は、解除権の行使について期間の定めがないときは、相手方は、解除権を有する者に対し、相当の期間を定めて、その期間内に解除をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができると定めています。そしてその期間内に解除の通知を受けないときは、解除権は消滅します。つまり、迷ったまま黙っている買主の解除権を、売主は条文の手順で終わらせられます。
仮の話です。築古アパートを売ったあと、買主から「雨漏りが見つかった。契約を解除するかもしれない」と連絡が来ました。ところが、その後は何の連絡もなく、数か月が過ぎています。売主は、解除されるのか、されないのかが分からず、次の資金計画を立てられません。こんなとき、売主は待つしかないのか。条文の流れを整理します。
547条は、何を決めているか?
- 547条(前段):解除権の行使について期間の定めがないときは、相手方は、解除権を有する者に対し、相当の期間を定めて、その期間内に解除をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる
- 547条(後段):その期間内に解除の通知を受けないときは、解除権は消滅する
解除は、契約か法律で解除権を持つ人が、相手方への意思表示で行います(民法540条1項)。いったん出した解除の意思表示は、撤回できません(同条2項)。547条は、この解除権を持つ人が、いつまでも態度を決めないときに、相手方が宙づりのままにならないよう置かれた条文です。

541条の催告と、何がちがうのか?
同じ「催告」でも、541条と547条は別のものです。
- 541条の催告:債務を履行していない相手に、「履行してください」と求める催告。期間内に履行がなければ、解除できる
- 547条の催告:解除権を持つ人に、「解除するのかどうか答えてください」と求める催告。期間内に解除の通知がなければ、解除権が消える
547条は、催告を出す側が解除する側ではありません。解除される側が出します。そして、返事がなければ解除できなくなるのは、解除権を持つ人のほうです。

547条が働かない場面もあります
条文の冒頭は、「解除権の行使について期間の定めがないときは」です。契約書に、たとえば「融資の承認が得られないときは、◯月◯日までに解除できる」と期限が書かれているなら、その解除権には期間の定めがあります。期限が過ぎれば、期限の定めのとおりになりますので、547条の出番はありません。
この条文の催告で消えるのは、解除権だけです。条文に書かれているのは「解除権は、消滅する」までで、契約の内容が合わなかったときの追完の請求や、代金の減額の請求、損害賠償の請求まで消えるとは、書かれていません。これらがどうなるかは、別の条文(562条から564条など)と、契約書の内容で決まります。
催告は、どう出すか?
条文には、催告の方法が書かれていません。ただ、あとで「言った」「聞いていない」とならないよう、書面で、日付を入れて出す形が実務では選ばれます。書く内容は、次の4点です。
- どの契約の、どの解除権についての催告か(契約の日付と物件)
- 期間内に解除するかどうかを答えてほしいこと
- 期間の末日(日付で書く)
- 期間内に解除の通知がなければ、民法547条により解除権が消滅すること
「相当の期間」が何日かは、条文が決めていません。事案によって変わります。短すぎる期間を付けると、催告の効果が争われるおそれがあります。日数の目安は、専門家(弁護士)に事案を見せて確認してください。
都合の悪いことも書いておきます
- 547条の催告は、相手が解除権を持っているかどうかを決める条文ではありません。買主に解除権がそもそもあるのかは、別に問われます
- 催告の期間が短すぎたり、書いた内容があいまいだったりすると、効果が争われます
- 解除権が消えても、損害賠償や代金の減額などの請求まで消えたとは、条文からは言えません。売主が「これで終わった」と考えるのは早すぎます
- 買主が期間内に解除の通知を出せば、契約は解除されます。催告は、解除を止める手段ではなく、答えを出させる手段です
今日できること
- 買主から来た連絡(メール・書面)を、日付順に並べる
- 契約書で、解除できる場面と、その期限が書かれているかを確かめる
- 期限の定めがないなら、催告を出す前に、専門家(弁護士)へ文面と期間を見てもらう
手付を払ったあとの解除については、個人どうしの売買で手付を払ったあと、買主は手付を放棄して解除できます|築古アパートのオーナーが読む民法557条に、期限の考え方をまとめています。
出典
民法540条・541条・547条(e-Gov 法令検索・2026年10月7日時点)。


