敷地の一部だけを売ると、残ったアパートが建蔽率を超えることがあります|築古アパートのオーナーが読む分筆の登記と建築基準法
結論からお伝えすると、敷地の一部だけを売ることは、分筆の登記をすればできます。ただし先に計算すべきなのは、売ったあとに残るアパートの数字です。建築基準法でいう「敷地」は登記の筆ではなく建物のある一団の土地(建築基準法施行令1条1号)なので、面積を減らせば残る建物の建蔽率・容積率・接道がそのまま変わります。法令が変わったときの「既存不適格」(建築基準法3条2項)は、自分で敷地を割った場合には当たりません。抵当権は分筆後の両方の土地に残ります(不動産登記法40条)。
駐車場として使っているアパートの奥の一角を、隣の家から「30坪ほど売ってもらえないか」と言われた。駐車場は2台分空いたままで、使っていない土地が現金になるなら悪くない話です。ここで電卓を出す順番を間違えると、売ったあとにアパートが基準を超えた建物になります。

分筆の登記は、誰が申請できますか?
不動産登記法39条1項は、分筆の登記は表題部所有者か所有権の登記名義人しか申請できないと定めています。買いたい人や仲介会社が代わりに分けることはできず、売る側のオーナーが申請人になります(実際の手続きは土地家屋調査士に頼むのが一般的です)。
申請には分筆後の土地の地積測量図を付けます(不動産登記令別表8)。登録免許税は、分筆後の土地1筆につき1,000円です(登録免許税法別表第一)。税金は小さく、時間とお金がかかるのは測量と境界の確認のほうです。
測量の前に、境界を決めます
地積測量図を作るには、元の土地の外周の境界が決まっていなければなりません。隣の家、前の道、裏の水路——接しているすべての土地と境界を確かめます。さいたま市が管理する道路や水路と接していれば、市への「市有地等境界確認申請書」が必要です。隣地との話がまとまらないときの制度は境界標がなくなっても、隣との話し合いで境界は決められませんに、どの時点で確かめておくかは私道と境界、越境をいつ確認するかに書いています。
残るアパートの数字は、どう変わりますか?
施行令1条1号は、敷地を「一の建築物又は用途上不可分の関係にある二以上の建築物のある一団の土地」と定めています。登記で1筆か2筆かは関係なく、建物のために使っている土地のまとまりが敷地です。駐車場の部分も、その建物の敷地として数えられてきたはずです。
たとえば、
- 敷地300平方メートル、建蔽率の上限60%
- アパートの建築面積150平方メートル(いまは50%)
のとき、奥の80平方メートルを売ると敷地は220平方メートルになり、150÷220で約68%。上限の60%を超えます。容積率も同じで、延べ面積を新しい敷地面積で割り直します。さらに、切り方によっては残る土地が道路に2メートル接しなくなることがあります(43条1項)。前の道が幅4メートル未満で後退が必要なら、下がる部分は敷地面積に入らない(施行令2条1項1号)ので、その分も引いて計算します。

「既存不適格」にはならないのですか?
3条2項は、規定の施行や適用の際にすでにあった建物が新しい規定に合わない場合、その規定を適用しないと定めています。これがいわゆる既存不適格です。法令や都市計画が後から変わったときのための規定で、オーナーが自分で敷地を割って数字を超えさせた場合は、この条文の場面ではありません。基準を超えた建物は、建て替えや増築の確認申請のとき、そして買主の銀行の評価で問題になります。
敷地の最低面積が決められている地域では?
53条の2は、用途地域の都市計画で敷地面積の最低限度が定められたときは、その面積以上でなければならないとしています(上限は200平方メートル)。地区計画で同じ趣旨の決まりを置いている地区もあります。
この最低限度ができる前から使っていた土地には、同条3項の例外がありますが、それは「その全部を一の敷地として使用する場合」に限られます。分けた瞬間に例外の前提が外れるので、分けたあとの両方の土地が最低限度を満たすかどうかを、市町村の都市計画図で確かめてください。
ローンの抵当権は、どうなりますか?
土地に抵当権が付いたまま分筆すると、抵当権は分筆後の両方の土地に残ります。不動産登記法40条は、抵当権者が「分筆後のいずれかの土地について消滅させること」を承諾した情報を出したときに限り、その土地の抵当権を消す登記をすると定めています。つまり、売る部分をきれいにして渡すには、銀行の承諾が要ります。買う側から見た抵当権の話は買う不動産に契約の内容に適合しない抵当権の登記があるときにまとめています。
都合の悪いことも書いておきます
境界の確認と測量には、隣地の立会いの日程次第で数か月かかります。費用も、隣地の数や境界標の残り具合で大きく変わります。計算した結果、売れる面積が思ったより小さいことも珍しくありません。埼玉・千葉西部・栃木南部の郊外では、広い敷地の一角を売りたいという相談は多いのですが、建物の数字と都市計画を最後に確かめるのは、市町村の建築指導の窓口と設計者です。税金(譲渡所得)の扱いは税務署か税理士に確かめてください。
今日やることを1つだけ選ぶなら
確認済証か図面で、アパートの建築面積と延べ面積を確かめ、売りたい面積を引いた敷地で割ってください。上限を超えるなら、売る面積を減らすか、話を受けないかを先に決められます。
出典
- 不動産登記法39条1項・40条、不動産登記令別表8、登録免許税法別表第一(e-Gov 法令API・2026年10月10日時点)
- 建築基準法3条2項・43条1項・53条の2、建築基準法施行令1条1号・2条1項1号(e-Gov 法令API・2026年10月10日時点)
- さいたま市「道路・水路の境界確認」(2026年4月1日更新)


