建物の高さを測り始める「地面」は、規制ごとに3つあります|築古アパートのオーナーが読む建築基準法施行令2条2項
結論からお伝えすると、建物の高さを測り始める「地面」は、規制によって3つあります。ふつうの高さは「地盤面」から測り(建築基準法施行令2条1項6号)、地盤面は建物が周りの地面と接する位置の平均の高さで、高低差が3メートルを超えると3メートル以内ごとに区切ります(同条2項)。日影の規制は区切らない「平均地盤面」から(建築基準法別表第四の注)、道路斜線は前の道の真ん中から測ります(施行令2条1項6号イ)。坂や擁壁のある敷地ほど、この違いで建てられる形が変わります。
道路から階段を6段上がったところに玄関がある、築40年の木造アパート。道路側は擁壁で1.5メートルほど持ち上がっていて、裏は隣の家の庭と同じ高さ。建て替えの相談で設計者が最初に聞くのは、「確認申請のときの図面に、地盤面の算定は入っていますか」です。同じ建物でも、どの面から測るかで高さが違うからです。

地盤面は、どう決まるのですか?
施行令2条2項は、地盤面を「建築物が周囲の地面と接する位置の平均の高さにおける水平面」と定めています。建物の外壁が地面に接している線をぐるりとたどり、その高さを平均した面です。実務では、外周の長さに応じて平均を取るのが一般的です。
冒頭のアパートなら、道路側の足元を0、裏側を1.5メートルとして、両脇が一定の傾きでつながっていれば、平均はおよそ0.75メートル。道路から見た建物の高さより、法律上の高さは75センチほど低く数えられます。さいたま市で近隣への説明が要るかどうかを分ける「高さ10メートル」のような線も、この測り方で効いてきます(さいたま市で近隣説明が要るのは高さ10メートルから)。

高低差が3メートルを超えると、どうなりますか?
同じ2条2項の後半は、接する位置の高低差が3メートルを超える場合は、高低差3メートル以内ごとの平均の高さを地盤面とすると定めています。崖に沿って建つ建物や、半分が地下に埋まった建物では、1棟に地盤面が2つ以上できます。部分ごとに、その部分の地盤面から高さを測ることになります。
この地盤面は、高さだけでなく地下室かどうかも決めます。施行令1条2号は、床が地盤面より下にあり、床から地盤面までの高さが天井の高さの3分の1以上ある階を「地階」としています。さらに2条1項2号は、地階で地盤面上1メートル以下にある部分を建築面積に入れないとしています。半地下の部屋がある築古アパートでは、この数え方で建蔽率の余裕が変わります。
日影の規制は、別の「平均地盤面」から測ります
建築基準法56条の2の日影の規制は、別表第四で「平均地盤面からの高さ」という言葉を使い、その注で「当該建築物が周囲の地面と接する位置の平均の高さにおける水平面」と定めています。2条2項にある「3メートルを超えたら区切る」が、ここにはありません。高低差が大きい敷地でも、日影は1つの面で測ります。
さらに施行令135条の12第3項2号は、敷地の平均地盤面が、日影ができる隣の土地より1メートル以上低い場合は、高低差から1メートルを引いた残りの2分の1だけ高い位置にあるものとみなすと定めています。隣より低い敷地は、少し有利に数えてもらえる仕組みです。
道路斜線は、道の真ん中から測ります
2条1項6号イは、道路斜線(56条1項1号)の高さは「前面道路の路面の中心からの高さ」で測ると定めています。冒頭のように敷地が道より高いと、道路斜線では建物が1.5メートル高く数えられ、不利になります。
そこで施行令135条の2は、敷地の地盤面が前の道より1メートル以上高い場合は、前の道が「高低差から1メートルを引いた残りの2分の1」だけ高い位置にあるものとみなすとしています。1.5メートルの差なら、道は25センチ高いものとして計算します。北側斜線(135条の4)と隣地斜線(135条の3)にも、隣より1メートル以上低い敷地への同じ形の緩和があります。前の道の幅で容積率が下がる話は前面道路が4メートルなら、指定が200%でも使える容積率は160%ですに書いています。
都合の悪いことも書いておきます
地盤面の算定は、確認申請の図面の中で設計者が行います。古い建物ほど、その算定の図が残っていないことが多く、建て替えのたびに測り直しになります。盛土や切土で敷地の高さを変えれば、地盤面も変わります。擁壁がある敷地では、擁壁そのものの扱いも先に確かめておく必要があります(擁壁は、直さなくても所有者に条文が1つ効いています)。埼玉・千葉西部・栃木南部の丘や台地の物件では、ここで建てられる階数が1つ変わることもあります。最終的な判断は、設計者と市町村の建築指導の窓口にお任せください。
今日やることを1つだけ選ぶなら
確認済証と、確認申請の図面の束が手元にあるかを見てください。図面の中に「地盤面算定」の表があれば、それが次に建て替えるときの出発点になります。
出典
- 建築基準法56条・56条の2・別表第四(e-Gov 法令API・2026年10月10日時点)
- 建築基準法施行令1条2号・2条1項2号・6号・2条2項・135条の2・135条の3・135条の4・135条の12(e-Gov 法令API・2026年10月10日時点)


