アパートに高圧のキュービクルがあれば、大家は電気主任技術者を選ぶ立場です|築古の賃貸マンションのオーナーが読む電気事業法43条
結論からお伝えすると、敷地にキュービクル(箱型の受変電設備)があり、電力会社から6,600ボルトのような高圧で電気を受けている建物は、電気事業法上「自家用電気工作物」です。その設置者であるオーナーには、技術基準に合うよう維持する義務(電気事業法39条1項)、保安規程を定めて届け出る義務(42条1項)、電気主任技術者を選ぶ義務(43条1項)がかかります。主任技術者を置かなかったときの罰則は300万円以下の罰金です(118条7号)。
築40年近い大きめの賃貸マンションを買ったオーナーが、引渡しの書類の束の中に「保安管理業務委託契約書」という見慣れない契約を見つけたとします。前の持ち主が、電気の保安の専門家と点検を契約していたものです。この契約は、オーナーが替われば自動的に引き継がれるものではありません。何のための契約なのかを、条文の順番で整理します。

どの建物が「自家用電気工作物」になるのですか?
電気事業法38条1項は、構内で使う電気工作物のうち、低圧で受電するものなどを「一般用電気工作物」と定めています。ここでいう低圧は、電気事業法施行規則48条1項で600ボルト以下です。
- 600ボルト以下で受電している…一般用電気工作物。普通のアパートはほとんどがこちら
- 600ボルトを超えて受電している…一般用ではないので「事業用電気工作物」(38条2項)。電力会社などの事業用でなければ「自家用電気工作物」(38条4項)
見分ける手がかりは、敷地や屋上、建物の一室にある鍵のかかった金属の箱や電気室です。共用部のポンプやエレベーターを動かすために高圧で受けている建物で見かけます。
オーナーにかかる3つの義務は何ですか?
- 技術基準に合うように維持する(39条1項)。人に危害を与えない、ほかの設備に障害を与えない、といった基準です
- 保安規程を定め、使い始める前に届け出る(42条1項)。変えたときも遅滞なく届け出ます(42条2項)。届出をしなかった場合などは30万円以下の罰金です(120条)
- 電気主任技術者を選任し、届け出る(43条1項・3項)。解任したときも届出が要ります
普通のアパートで行われる4年に1回の電気の調査は、一般用電気工作物について電線路を維持・運用する者が行うものです(57条1項)。高圧で受けている建物の内側は、その調査の外側にあります。調査の話は4年に1回の電気の調査は、断られたら行われませんに書いています。
主任技術者を雇わなくても、外部に頼めるのですか?
頼めます。電気事業法施行規則52条2項4号は、電圧7,000ボルト以下で受電する需要設備について、要件を満たす者と保安管理業務の委託契約を結び、国(産業保安監督部長など)の承認を受ければ、主任技術者を選任しないことができると定めています。委託先は、個人なら「電気管理技術者」、法人なら「電気保安法人」と呼ばれます(53条3項)。
承認の条件には、点検を国の告示で定める頻度で行うことや、災害・事故のときの連絡の決まりを契約に入れることが含まれています(53条2項5号)。冒頭の「保安管理業務委託契約書」は、この承認の土台になる契約です。

物件を買ったとき、売るときに確かめること
- 委託契約の名義が誰になっているか。承認は設置者ごとに受けるものなので、一般的には新しいオーナーの名義で結び直すことになります
- 保安規程の届出と、外部委託の承認を、新しい設置者として出し直す段取りが引渡し日に合っているか
- 月々の委託料が収支に入っているか。普通のアパートにはない固定費です
手続きの細かい扱いは、管轄の産業保安監督部と委託先に確かめてください。ここは一般的な整理にとどめます。
都合の悪いことも書いておきます
キュービクルは屋外に置かれていることが多く、築年数とともに機器の更新費用が大きく出ます。金額は容量と機器で大きく変わるので、ここでは書きません。電気の引込みや敷地の電柱の扱いは敷地の電柱は、電気事業法で立っているのではありませんも参考になります。埼玉・千葉西部・栃木南部でも、昭和の終わりから平成のはじめに建った大きめの賃貸マンションで見かけます。
今日やることを1つだけ選ぶなら
敷地か屋上に鍵のかかった電気の箱があるかを、管理会社に1行で聞いてください。あれば、保安管理の委託契約書の名義と日付を見せてもらう。それだけで、自分が「設置者」かどうかが分かります。
出典
- 電気事業法38条・39条・42条・43条・57条・118条・120条、電気事業法施行規則48条・52条・53条(e-Gov 法令API・2026年10月9日時点)


