4年に1回の電気の調査は、断られたら行われません|築古アパートのオーナーが停電と断水で動く順番
夜9時すぎ、入居者から電話が入りました。「部屋の電気が全部消えました」。窓の外を見てもらうと、向かいのアパートは点いていて、街灯も生きている。この一言で、話は電力会社のことではなくなりました。
結論からお伝えすると、停電も断水も、最初に確かめるのは「範囲」です。範囲が決まれば、電力会社や水道局に任せる話なのか、オーナーが業者を手配する話なのかが、その場で分かれます。そして電気には、4年に1回、法律で決められた調査があります。ただしこの調査は、入居者が立入りを断れば、そこで行われません。

停電の連絡が来たら、最初に聞くのは3つ
順番に聞きます。慌てて電力会社に電話をしても、原因が建物の中にあれば、電力会社は入ってきません。
- 部屋の一部だけか、部屋全体か(エアコンだけ止まった、キッチンだけ暗い、なども含めて聞く)
- 同じ建物のほかの部屋はどうか(廊下の照明が点いているかも聞く)
- 周りの家や街灯は点いているか
この3つで、行き先が分かれます。
- 周りも一緒に暗い ── 地域の停電。電力会社の停電情報を見る。オーナーがやることは、復旧の見込みを入居者へ伝えることだけです
- その建物だけ暗い ── 引込線から先、つまり建物側の設備が疑わしい。電気工事店を呼ぶのはオーナーです
- 1戸だけ、または1戸の一部だけ暗い ── その部屋の分電盤。ブレーカーが落ちているだけのことも多い
3つ目のとき、入居者に分電盤の位置を伝えられるかどうかで、その夜が終わるか翌朝までかかるかが変わります。分電盤の見方と、呼ぶ相手については昭和のアパートで分電盤と漏電をいつ点検するか|オーナーが見る場所と呼ぶ相手にまとめてあります。
4年に1回、法律で決まっている電気の調査があります
ここは知られていないところです。電気事業法57条1項に、こう書かれています。
一般用電気工作物と直接に電気的に接続する電線路を維持し、及び運用する者(中略)は、経済産業省令で定める場合を除き、経済産業省令で定めるところにより、その一般用電気工作物が前条第一項の経済産業省令で定める技術基準に適合しているかどうかを調査しなければならない。
頻度は電気事業法施行規則96条2項1号です。
- 原則 ── 四年に一回以上
- 所有者や占有者から点検業務を受託する「登録点検業務受託法人」が入っている場合 ── 五年に一回以上
アパートに「電気の調査に伺いました」と人が来るのは、サービスでも営業でもなく、この条文の履行です。設置したときと、変更工事が完成したときにも行うことになっています。
ただし、断られたらそこで終わります
同じ57条1項には、ただし書が付いています。
ただし、その一般用電気工作物の設置の場所に立ち入ることにつき、その所有者又は占有者の承諾を得ることができないときは、この限りでない。
不在が続いた、インターホンに出なかった、知らない人だから断った。どれでも「承諾を得ることができないとき」に当たります。義務は電力会社側にありますが、断られた時点で、その部屋は調査されないまま次の4年に入ります。「うちには来たことがない」という物件は、来ていないのではなく、入れていないことがあります。
結果がオーナーに届かない仕組みになっています
調査して基準に合っていなかったときの通知先は、57条2項にこう書かれています。
遅滞なく、その技術基準に適合するようにするためとるべき措置及びその措置をとらなかつた場合に生ずべき結果をその所有者又は占有者に通知しなければならない。
「所有者又は占有者」です。入居中の部屋は、占有者が入居者です。入居者に紙が渡って、そこで止まることがあります。オーナーは、自分の建物の電気に指摘が出ていたことを知らないまま過ごせてしまう。
ただし、記録は残っています。同施行規則103条が、氏名・住所、調査年月日、調査の結果、通知年月日、通知事項、調査員の氏名を帳簿に記載させ、原則4年間(受託電気工作物は5年間)保存すると定めています。気になったら、調査に来た事業者に「うちの棟はいつ調査して、結果はどうだったか」を聞けます。聞ける根拠がある、という話です。
復旧した瞬間が、いちばん危ない
停電そのものより、電気が戻るときのほうが火災が起きています。消費者庁が経済産業省・製品評価技術基盤機構と同時に出した注意喚起(2023年8月29日)に、やることが具体的に書かれています。
自宅から避難する際に時間的な猶予がある場合は、停電復旧時に異常のある製品に通電されることによる事故を防止するため、分電盤のブレーカーを切ってください。普段から分電盤の位置や操作方法を確認しておきましょう。
特にヒーターを内蔵した電気こんろや電気ストーブなどの電熱器具は、停電復旧時における意図しない作動による火災を防ぐため、停電時には電源プラグをコンセントから抜きましょう。
停電復旧後、浸水や落雷などによる損傷を免れた製品を使う際は、機器などの外観に異常がないか(中略)を確認の上、分電盤のブレーカーを入れ、機器の電源プラグを1台ずつコンセントに差し、様子を確認しながら使用してください。
(出典:消費者庁「停電時の発電機によるCO中毒や、復旧後の通電火災に注意!」2023年8月29日公表/経済産業省・独立行政法人製品評価技術基盤機構と同時発表)
この3つは、そのまま掲示板に貼れる文面です。停電が起きてから書くと、たいてい書けません。先に紙にしておいて、停電の日に貼るだけの状態にしておくのが現実的です。あわせて、分電盤がどこにあるかを入居のときに伝えておくと、この掲示が意味を持ちます。
断水は、法律で「先に知らせる」ことになっています
水のほうも見ておきます。水道法15条2項です。
水道事業者は、当該水道により給水を受ける者に対し、常時水を供給しなければならない。ただし(中略)災害その他正当な理由があつてやむを得ない場合には、給水区域の全部又は一部につきその間給水を停止することができる。この場合には、やむを得ない事情がある場合を除き、給水を停止しようとする区域及び期間をあらかじめ関係者に周知させる措置をとらなければならない。
読み方が2つあります。
- 工事などの計画断水は、区域と期間を事前に周知する義務がある ── 知らされていないはずがない、という前提で探せます
- 突発の断水(漏水事故・災害)は「やむを得ない事情がある場合」に当たり得る ── 事前の周知なしに止まることがあります
そして条文は「関係者に周知させる措置」としか書いていません。誰に、どの方法で、とは決めていないので、実際には市の広報やウェブサイト、回覧、現地の掲示になります。他所に住んでいるオーナーのところに、個別の通知が届く仕組みは、条文の中にありません。物件のある市の水道局の「工事・断水のお知らせ」ページを、自分でブックマークしておくのが確実です。
水は、どこから先がオーナーの持ち物か
水道法3条9項が範囲を決めています。
この法律において「給水装置」とは、需要者に水を供給するために水道事業者の施設した配水管から分岐して設けられた給水管及びこれに直結する給水用具をいう。
道路の配水管から分かれたところから先が給水装置で、これはオーナーの財産です。直せるのは誰でもよいわけではなく、水道法16条の2の指定給水装置工事事業者に頼むことになります。敷地の中の水道管をどこで区切るかは敷地内の水道管は誰が直すのか|築古アパートのオーナーがメーターの前後で分ける負担に書きました。
もうひとつ、覚えておくと切り分けが早いものがあります。受水槽と加圧ポンプで各戸へ配っている建物は、停電すると水も止まります。「電気が消えて、水も出ません」は、故障が2つ起きたのではなく、1つの停電の結果であることが多い。受水槽のある建物にかかる毎年の義務は受水槽のあるアパートには毎年2つの義務がある|築古アパートのオーナーが掃除と検査を分けて考えるにまとめています。

連絡の順番を、紙にしておく
停電の夜に迷わないための順番です。台風のように予測できる場合の動き方は台風が来る前と後、オーナーが動く順番|築古アパートで先に見る5か所と入居者への連絡にありますので、ここでは「突然きたとき」に絞ります。
- 範囲を聞く(部屋の一部/部屋全体/建物全体/周りも)
- 周りも暗いなら、電力会社の停電情報を見る。復旧見込みを入居者へ伝える
- 建物だけなら、電気工事店へ連絡する。夜間対応の可否を先に確認しておく
- 入居者には、電熱器具のプラグを抜くことを伝える(復旧時の火災を防ぐため)
- 復旧したら、1台ずつ差して様子を見てもらう。異音や異臭があれば使用を止める
3の「夜間対応の可否」は、平常時にしか確認できません。停電してから探すと、電話がつながる先を探すところから始まります。ちなみに、壁の中の配線に触る工事は資格が要ります。どこまでを自分で触ってよいかは大家が自分で直してよい範囲はどこまでか|壁の中のコンセント交換は資格が要りますが詳しいです。
今日やることを1つだけ選ぶなら
物件の分電盤と、水道の元栓・受水槽の位置を、写真に撮って1枚のメモにしておくこと。停電と断水の連絡は、たいてい夜か休日に来ます。そのときに手元にあるかどうかで、電話で終わるか、現地へ行くかが変わります。電気の調査がいつ来たかを聞ける先も、同じメモに書いておくと迷いません。
条文の引用は e-Gov 法令検索の電気事業法・電気事業法施行規則・水道法(2026年9月7日時点)、注意喚起は消費者庁「停電時の発電機によるCO中毒や、復旧後の通電火災に注意!」(2023年8月29日公表)によります。個々の設備が技術基準に適合しているかどうかは、電気工事士・電気保安協会など有資格の事業者にご確認ください。この記事では建物ごとの判定はしていません。


