売買契約書に代金の支払日が書かれていないとき、引渡しの期限と同じ期限が付いたものと推定されます|築古アパートのオーナーが読む民法573条・574条

結論からお伝えすると、築古アパートの売買契約書に、代金の支払日が書かれていないとき、引渡しに期限があれば、代金の支払にも同じ期限が付いたものと推定されます。民法573条が定めています。支払の場所も、引渡しと同時に払うなら、引渡しの場所で払うことになります(574条)。書かれていない部分を、条文が補う形です。

仮の話です。個人どうしで築古アパートを売る契約を結びました。引渡しの日は「令和8年12月25日」と書いてありますが、代金をいつ、どこで払うかは、書いていません。買主から「引渡しのあとで払う」と言われたら、どう受け止めればよいのか。条文を順に並べます。

代金の支払日が書かれていないときに、条文が補うルールを整理した図

573条と574条は、何を決めているか?

  • 573条:売買の目的物の引渡しについて期限があるときは、代金の支払についても、同一の期限を付したものと推定する
  • 574条:売買の目的物の引渡しと同時に代金を支払うべきときは、その引渡しの場所で支払わなければならない

573条は「推定」です。契約書に別の定め(たとえば、引渡しの7日後に払う)があれば、それが先に働きます。574条は、支払の場所だけを決める条文です。契約書に場所の記載がなく、引渡しとも同時でないときは、民法484条1項のとおり、特定物の引渡し以外の弁済は、別段の意思表示がなければ、債権者(受け取る側。売買代金なら売主)の現在の住所でします。

仮の話の買主が「引渡しのあとで払う」と言っているなら、契約書にその旨が書かれていない限り、573条の推定により、引渡しと同じ12月25日が支払の期限と読むのが、出発点になります。

支払日を過ぎたら、遅れた責任はいつから?

支払日が確定した日付で決まっているなら、その日が来た時から、買主は遅れた責任を負います(412条1項)。期限が決まっていないときは、請求を受けた時からです(同条3項)。「引渡しの日に」と決まっているなら確定期限です。期限が日付で確定していない書き方だと、遅れた責任がいつから始まるかが、同条2項と3項のどちらに当たるかで変わり、条文だけでは読み切れなくなります。

売主の側から見ると、書き方一つで、いつから遅延の責任を問えるのかが変わります。契約書の言葉は、日付で書いておくのが無難です。

引渡しと同時に払うとき、先に動くのはどちらか?

引渡しと代金の支払は、双務契約の両方の債務です。民法533条は、相手方が履行を提供するまで、自分の履行を拒めると定めています(同時履行)。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは別です。買主が代金を先に払う約束なら、同時履行の抗弁は使えません。契約書に、どちらが先と書いてあるかを、必ず確かめてください。

引渡しの前に生じた家賃の精算については、売買の引渡しの前に生じた家賃は、売主のものです|築古アパートのオーナーが読む民法575条に整理しています。また、手付の扱いは、個人どうしの売買で手付を払ったあと、買主は手付を放棄して解除できます|築古アパートのオーナーが読む民法557条で書きました。

契約書に支払日の日付がないときに確かめる流れを5段階で示した図

都合の悪いことも書いておきます

  • 573条は、引渡しに「期限があるとき」の条文です。引渡しの期限そのものが決まっていないなら、支払の期限も、この条文からは決まりません
  • 実務では、売買契約の決済は、金融機関の窓口で、代金の支払と引渡しを同じ日に行うことが、一般的に多いようです。条文の補充に頼らず、契約書に、日付と場所を書いておくのが前提です
  • 書かれていない部分が争いになったときは、契約書の他の条項や、当事者のやりとりの記録も、見られます

今日できること

  1. 手元の売買契約書で、引渡しの日と、代金の支払日・支払場所が書かれているかを見る
  2. 書かれていないなら、決済の案内や、売買の担当者とのやりとりに、日付と場所の記録があるかを確かめる
  3. 次の契約からは、支払日を日付で、場所を窓口の名前で、契約書に書いておく

出典

民法412条・484条・533条・573条・574条(e-Gov 法令検索・2026年10月5日時点)。

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