外壁と屋根の修繕を後回しにすると何が起きるか|築古アパートのオーナーが順番を決める基準
結論からお伝えすると、外壁と屋根の修繕を後回しにして増えるのは、修繕費ではなく空室です。雨が入り始めた建物は、直す範囲が広がるだけでなく、入居中の部屋から人が出ていきます。
台風が過ぎた翌朝、2階の入居者から電話が入る。「天井にシミが出ています。丸く広がってきました」。上がって天井を見ると、クロスの継ぎ目に沿って輪が2つ。この時点で、雨はもう半年から数年前に入り始めています。天井に出るのは、下地が水を吸いきったあとです。

後回しにすると、どの順番で悪くなるのか
- 塗膜が切れる。手でこすると白い粉が付く(チョーキング)
- シーリングが割れる。窓まわりやサイディングの継ぎ目に、髪の毛ほどの隙間が入る
- 下地が水を吸う。ここからは外から見えません
- 室内に出る。天井のシミ、壁紙の浮き、押し入れのカビとにおい
- 入居者が出る。ここが一番高い
1と2で手を打てば、直すのは外側だけです。4まで進むと、外壁と屋根に加えて室内の下地・断熱材・クロス、場合によっては床まで工事の対象になります。そして工事中は貸せません。
どこを見れば「もう待てない」と分かるのか
年に1回、晴れた日に建物を1周するだけで判断がつきます。脚立に登る必要はありません。地面から見えるものだけで足ります。
- 外壁を手のひらでこする:白い粉が付いたら塗膜が寿命
- 継ぎ目のゴム(シーリング):割れ・剥がれ・端が浮いていないか
- 北側の壁:緑や黒のコケ。水が乾いていない印です
- 雨樋:雨の日に、途中からあふれていないか
- 屋根の棟(むね):地面から見て、板金が波打っていないか・釘が浮いていないか
- 軒の裏(軒天):茶色いシミ、めくれ、剥がれ
このうち「北側のコケ」と「軒天のシミ」の2つが出ていたら、外だけの工事で終わらない可能性があります。先に室内の押し入れと天井を見てください。

外壁と屋根は、同時に考える
2階建て以上の建物では、足場を組まないと屋根と外壁の高い位置に手が届きません。足場は、外壁だけ組んでも屋根だけ組んでも1回ぶんかかります。3年後に屋根をやる予定があるなら、外壁と一緒にやったほうが足場は1回で済みます。
逆に、雨樋の詰まりや小さなシーリングの打ち替えのように、足場が要らない工事もあります。「足場が必要か」で工事を2つに分けて考えると、順番が決めやすくなります。
金額については、建物の大きさ・階数・足場の掛け方・下地の状態で大きく変わるため、ここでは相場の総額を書きません。現地を見た見積りでしか決まらない工事です。必ず2〜3社から取って、「何を何㎡やるか」が書かれた見積りで比べてください。数量が書かれていない一式見積りは、比較ができません。
入居中に「天井にシミが出ています」と言われたら
雨漏りの連絡が来た日の動き方で、その入居者が残るか出るかが決まります。直る時期を約束できなくても、その日にできることはあります。
- その日のうちに写真を頼む。シミの位置と大きさ。日付が入るので、進行が分かります
- 家財を先に守る。真下の荷物を動かしてもらう。落ちてくるのは水だけではありません
- 雨の日に、もう一度確認する。降っていないときに見ても分かりません
- 「いつ誰が見に行くか」だけを伝える。原因と費用は、その場で答えなくて構いません
入居者が不満を持つのは、水が漏れたことよりも連絡しても何も返ってこない時間です。見に行く日を伝えるだけで、退去の話にはなりにくくなります。
台風や雪のあとは、保険を先に確認する
強風や雪で屋根材・雨樋・カーポートが壊れた場合、一般的には火災保険の風災・雪災の対象になることがあります。ただし対象になるかは契約内容と原因の見極めによります。加入している保険会社か代理店に、先に確認してください。
そのときに効くのが記録です。壊れる前の写真が1枚あるだけで、話が早くなります。年1回の見回りのときに、四方から1枚ずつ撮って日付のフォルダに入れておいてください。
なお、外まわりの傷みは、訪問で点検を持ちかけられるきっかけにもなります。その場では決めない、という一線を先に引いておくと安心です。
直すか、建て替えか、売るかで迷ったとき
外壁と屋根に手を入れるのは、その建物をこの先10年以上貸し続けると決めたときです。5年で手放す予定なら、雨を止める最小限の工事にとどめる判断もあります。
この分かれ目は 築40年のアパートはリフォームか建て替えか|オーナーが判断する5つの基準 と、耐震の扱いを含めた 旧耐震のアパートを持ち続けるリスクと選択肢 で整理しています。
まとめ
外まわりの修繕は、やるかやらないかではなく、室内に出る前にやるかどうかです。室内に出たあとは、費用も工期も空室も一度に来ます。
今日できることは1つだけです。晴れた日に建物を1周して、四方から写真を撮ってください。次に見たときの比較対象になり、保険の話でも役に立ちます。


