旧耐震のアパートを持ち続けるリスクと選択肢|オーナーが確認する順番

結論からお伝えすると、旧耐震のアパートは「持っているだけで危ない物件」ではありません。ただし、入居付け・売却・保険・融資の場面で条件が不利になりやすく、原因は築年数ではなく「耐震性能が分からないままにしていること」です。建築確認の日付を確認し、耐震診断を受けるかを決める。この2つで、持ち続けるか・直すか・手放すかを数字で比べられます。

埼玉県・千葉県西部・栃木県南部では、昭和50年代までの木造アパートが今も数多く稼働しています。「旧耐震だから」と何もしないまま10年が過ぎるのが、一番もったいない状態です。

そもそも「旧耐震」とは何を指すのか

一般的に「旧耐震」と呼ばれるのは、1981年(昭和56年)5月31日までに建築確認を受けた建物です。翌6月1日から新耐震基準が適用されました。

間違えやすいのは、基準になる日付が「完成した日」ではなく「建築確認を受けた日」である点です。1981年6月以降の完成でも、確認申請がそれ以前なら旧耐震の設計です。登記簿の新築年月日では判断できません。

木造はさらに2000年6月にも改正があり、接合部の金物や壁の配置に関する規定が加わりました。1981年から2000年の間の木造アパートも、現在の基準とは設計が異なります。

旧耐震のアパートで実際に効いてくる4つのこと:入居付けで比較に負けやすい、売却時に買主へ融資がつきにくい、地震保険の割引が使えないことが多い、大地震のときの責任の問題

旧耐震のアパートを持ち続けると、何が起きるのか

実際に効いてくるのは、日々の運営と出口の場面です。代表的なのは次の4つです。

  • 入居付けで比較されたときに弱い……募集図面に築年数が出るため、同じ家賃帯の新しい物件と並ぶと候補から外れやすくなります。ただし後述のとおり、部屋の状態や見せ方で挽回できる部分が大きい項目です。
  • 売却のとき、買主に融資がつきにくい……金融機関によっては融資期間を短くしたり、耐震診断の結果を求めたりします。買える人が減れば、価格と成約までの期間に影響します。
  • 地震保険の保険料が割高になりやすい……建築年や耐震性能に応じた割引制度があり、一般的に旧耐震の建物はこれらが使えないことが多くなります。条件は保険会社や制度改定で変わるため、加入中の契約は代理店にご確認ください。
  • 大地震が起きたときの責任の問題……旧耐震であること自体がただちに責任を意味するわけではなく、一般的には危険を知りながら放置したかどうかが問われます。個別の判断は弁護士など専門家にご相談ください。

「旧耐震だから入居が決まらない」は本当か?

入居が決まらない直接の理由が旧耐震であることは、実務上ほとんどありません。入居希望者が建築確認の日付を調べて申し込みをやめる場面は、まず起きません。

決まらない原因は、写真の質、内見のしやすさ、初期費用の総額、設備の水準といった別のところにあります。詳しくは昭和築アパートの空室が埋まらない5つの原因をご確認ください。

耐震は「今日の空室」ではなく、5年後・10年後に売れるか、貸し続けられるかという出口の問題として考えるのが実態に合っています。

オーナーが取れる4つの選択肢

どれが正解かは、残りの返済期間・立地・相続の予定で変わります。

  1. 現況のまま貸し続ける……収支が回っていて売却の予定もないなら、これも立派な選択です。ただし診断だけは受け、現状を把握して選んでください。
  2. 耐震診断を受けて判断材料を作る……最も費用が小さく、その後の判断の土台になります。結果は売却時の説明材料にもなります。
  3. 耐震改修を行う……壁の補強や金物の追加など、部分的な工事で評価が変わる場合があります。費用は規模と傷み具合で大きく変わるため、必ず複数社から見積もりを取ってください。
  4. 売却・建て替え・別用途を検討する……修繕費が今後もかさむなら、無理に持ち続けない判断もあります。比べ方は築40年のアパートはリフォームか建て替えかで解説しています。

診断や改修には、多くの自治体で補助制度があります。対象要件・補助額・申請時期は市区町村ごとに異なり、年度によっても変わります。着工後は対象外になる制度がほとんどですので、動き出す前に物件所在地の建築指導課へお問い合わせください。

旧耐震と分かったとき確認する順番:建築確認の日付を確認、修繕履歴を集める、自治体の補助制度を確認、耐震診断を受ける、4つの選択肢を数字で比べる

まず何から手をつけるか(確認する順番)

いきなり見積もりを取る必要はありません。費用のかからないところから順に進めます。

  1. 建築確認の日付を確認する……確認済証・検査済証を探します。手元になければ市区町村で建築計画概要書を閲覧できる場合があります。
  2. 修繕履歴を集める……過去に基礎や壁を補強していれば評価が変わることがあります。
  3. 自治体の補助制度を確認する……診断費用の補助があれば、次の負担が下がります。
  4. 耐震診断を受ける……建築士事務所などに依頼します。自治体が診断士を紹介する地域もあります。
  5. 4つの選択肢を数字で比べる……改修費用と、残りの保有期間で得られる家賃収入を並べます。

この5つで「なんとなく不安」が「いくらかかるか」に変わります。判断が止まる原因の多くは、資金不足ではなく情報不足です。

よくある質問

火災保険や地震保険は、築年数が古いと入れなくなりますか?

築年数だけを理由に加入できなくなるわけではありませんが、保険会社によって引受条件や保険料が変わることがあります。詳しくは火災保険についてもご覧のうえ、実際の可否は加入先の代理店にご確認ください。

旧耐震のままでも売れますか?

売れないわけではありません。現金で購入する投資家や、解体して土地として使う買主もいます。ただし買主の層が限られるため、売り出す前に診断結果や修繕履歴を揃えておくと交渉が進みます。

まとめ

旧耐震のアパートで本当に問題なのは建物の古さではなく、性能が分からないまま判断を先送りしている状態です。ここまでの手順は、大きな費用をかけずに進められます。

なお、耐震性能の評価・税務・法的責任の範囲は個別事情で結論が変わります。この記事は一般的な整理ですので、実際の判断は建築士・税理士・弁護士など専門家にご確認ください。

旧耐震のアパートの空室や今後の方針にお悩みでしたら、管理のお問い合わせからご相談ください。空室のまま止まっている建物や、相続で手つかずの物件も、現況の整理からお手伝いしています。

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