空き家になった実家を賃貸に出すまでの流れ|貸せる形にするまでの5ステップ
結論からお伝えすると、空き家になった実家を貸すまでの作業のうち、いちばん時間がかかるのは工事ではなく「名義」と「片づけ」です。ここを先に片づけないと、リフォームの見積りを取っても話が進みません。
四十九日が終わった週末。1年ぶりに玄関の鍵を回すと、たたきに郵便物が積み上がっている。ブレーカーは落ちたまま、水道の元栓も閉まっている。奥の和室には仏壇、押し入れには布団が7枚。台所の冷蔵庫は中身が入ったまま止まっている。「これ、貸せるのかな」と思う場面から、たいていの実家の賃貸は始まります。
そのまま置いておくと、何がまずいのか
人が住まなくなった家は、傷むのが早くなります。水が流れず、風が通らず、誰も雨漏りに気づかないからです。半年空けると、排水のトラップが乾いてにおいが上がってきます。庭は1シーズンで隣家に届きます。
加えて、管理が行き届かない空き家は、一般的には自治体から指導や助言の対象になることがあり、状態によっては固定資産税の扱いが変わる場合があります。基準の運用は自治体ごとに違うため、実家がある市町村の窓口に確認してください。火災保険も、空き家として扱われると条件が変わることがあります。加入中の保険会社に、居住状況が変わったことを伝えて確認するのが確実です。

貸すまでの5ステップ
1. 名義と、誰が決められるかを確かめる
登記の名義が亡くなった方のままだと、貸す契約の名義人が決まりません。相続した不動産の登記は、一般的には2024年4月から申請が義務づけられています。兄弟で共有になっている場合は、貸すこと・条件・お金の分け方を先に決めておく必要があります。手続きと期限は司法書士か法務局に確認してください。
ここで止まっている家がいちばん多いです。片づけも工事も、名義が決まってからのほうが迷いません。
2. 中を空にする
残置物の処分は、家族の合意がいちばん時間を取ります。仏壇、位牌、写真、手紙。「これは捨てていいのか」で1日が終わります。先に3つの箱を決めてください。
- 残す:写真・書類・印鑑・通帳・権利証
- 供養・引き取りを頼む:仏壇・神棚・人形
- 処分する:家具・家電・寝具・食器
家電と寝具は量が読めないので、業者に見積りを頼むときは部屋ごとに写真を撮って渡すと話が早くなります。庭の物置と屋根裏、縁の下も忘れずに開けてください。
3. 建物が貸せる状態か確かめる
電気と水道を通してから、この順で見ます。
- 雨漏り:天井のシミ、押し入れのカビ、2階の壁
- 給排水:全部の蛇口を出す、トイレを流す、床下から水音がしないか
- 給湯とガス:お湯が出るか、給湯器の製造年
- 分電盤:アンペア数、コンセントの数と位置
- シロアリ:床のたわみ、柱の下、風呂の入口
設備の交換をどこまでやるかは 給湯器とエアコンはいつ交換するか|築古アパートのオーナーが壊れる前に決める基準 の基準が使えます。建物が古い場合は 旧耐震のアパートを持ち続けるリスクと選択肢 も先に読んでおいてください。
4. どこまで直すかを決める
実家は、貸すために全部やり直す必要はありません。最低限の線は「水回りが動く・鍵が新しい・においがない・家の中が明るい」の4つです。ここを外すと内見で決まりません。逆に、和室のままでも決まる地域はあります。
和室をどうするかで迷ったときは 和室を洋室に変えるか|築古アパートのオーナーが費用と埋まりやすさを判断する順番 をご覧ください。
5. 誰が対応するかを決める
戸建の賃貸は、入居中の連絡が「設備の故障」と「庭・草」に集中します。遠方に住んでいる場合、ここを自分で受けると続きません。鍵の受け渡し、内見の立ち会い、故障の一次対応を誰がやるかを、募集を出す前に決めてください。
内見のたびに現地へ通う形にすると、それだけで機会を落とします。築古物件で「鍵が現地対応でない」ことがどれだけ機会損失になるか で扱っています。

貸すのか、売るのか
貸すと決める前に、一度だけ両方を並べてください。判断が分かれるのは、直すのに大きな費用がかかる場合と、相続人が複数いる場合です。
- 貸すのが向く:雨漏りがない/水回りが生きている/相続人が1人か合意ができている
- 売却も検討したい:構造に手を入れる必要がある/共有者の意見が分かれている/管理する人が近くにいない
税金の扱いは、貸すか売るかで変わります。譲渡や取得費の考え方は一般的な説明にとどめますので、税理士に確認してください。
まとめ
実家を貸すまでの道は、名義 → 片づけ → 状態の確認 → 直す範囲 → 対応の体制の順です。工事の見積りを最初に取ると、名義と片づけで止まって見積りが古くなります。
今日やることを1つだけ選ぶなら、登記の名義と、決められる人が誰かを確かめてください。そこが決まると、残りは順番に進みます。


