空室に家具を置くのは築古で効くのか|オーナーが家賃を下げる前に試す順番と費用
内見は入っています。今月に入って3件。それでも申込は1件も来ません。仲介会社の担当者は「悪い部屋じゃないんですけどね」と言い、電話の最後に「家賃、あと3,000円だけ下げられませんか」と付け加えます。空室は5か月目に入りました。
結論からお伝えすると、空室に家具や小物を置く「ホームステージング」は、築古アパートでも試す価値があります。ただし「置けば決まる」ではありません。業界団体の調査では成約までが2か月以内という回答が約8割、賃料を上げても決まったという回答が6割を超えた一方、同じ調査に「ほとんど変わらない」「逆に長くなった」「逆に値下げすることがあった」という回答も並んでいます。そして最も多い実施方法は、家具一式ではなく小物だけでした。

その数字は「やっている会社が答えた数字」です
先に数字の枠を割っておきます。ここを飛ばすと、あとで期待外れになります。
もとになるのは、一般社団法人日本ホームステージング協会(代表理事 鵜沼俊英)の「ホームステージング白書2024(第8回ホームステージング実態調査)」です。調査の概要はこうなっています。
- 調査対象期間:2024年1月1日〜2024年12月31日
- 調査実施期間:2025年4月14日〜4月30日/5月12日〜5月30日
- 回答方法:インターネット調査(法人会員、個人会員ほか)
- 回答数:307(不動産業171、ホームステージング業ほか136)
回答しているのは、すでにホームステージングを導入している会社と協会の会員が中心です。無作為に抽出した大家さん全体の調査ではありません。ですから「6割が賃料アップ」は、やってみた側が答えた6割であって、やれば6割上がるという意味ではない。ここを承知したうえで読むと、この調査はかなり使えます。
なお、2026年8月14日時点で公開されている最新版は2024年版(Vol.8)です。同協会の白書一覧ページには2017年版から2024年版までが並んでおり、2025年版はまだ掲載されていません。
築古アパートは、実際に対象になっています
「ホームステージングは分譲マンションや戸建の売買でやるもの」という印象があるかもしれません。賃貸の調査結果を見ると、そうでもありません。
ホームステージングを実施する賃貸物件の種類(複数回答)は、単身者向け42.3%、ファミリー向け40.4%、築古の物件(リノベ済み含む)40.4%、高級賃貸物件26.0%、戸建て賃貸26.0%でした。築古が3番目に多く、高級賃貸より上に来ています。
実施する基準(複数回答)はこうです。
- 長期空室の部屋に実施する:44.2%
- 高額家賃の部屋に実施する:37.5%
- 入居しにくい部屋に実施する(築古物件、駅まで遠いなど):35.6%
- 貸主の要望があれば実施する:23.1%
- 全部の部屋に実施する:2.9%
そして実施のタイミング(複数回答)で2位に入っているのが、これです。
- 内見者数が増えないとき:46.2%
- 家賃を下げる前の最後の手段として:35.6%
- 物件ごとに判断:29.8%
- 募集開始前:18.3%
「家賃を下げる前の最後の手段」——業界の実務者が3人に1人以上、この位置づけで使っています。家賃を下げるのは最後、という順番そのものは家賃を下げる前に試す4つの手で整理していますが、その4つの手の隣に置ける選択肢がもう1つある、ということになります。
いくらかければいいのですか?
同じ調査の「物件あたりのホームステージング費用は家賃の約何ヶ月分か」(単一回答)は、次のとおりでした。
- 家賃の半月分以下:17.3%
- 家賃の1カ月分:32.7%
- 家賃の1.5カ月分:32.7%
- 家賃の2カ月分:9.6%
- 家賃の3カ月分以上:7.7%
1.5か月分以下で8割超(82.7%)です。家賃5万円の部屋なら2万5,000円〜7万5,000円、6万円の部屋なら3万円〜9万円。広告料を1か月分積むかどうかで迷う金額と、ほぼ同じ帯に入ります。
専門業者に頼んだ場合の提供価格は、同調査で5万円〜10万円未満が中心とされています。ただし賃貸では、予算の関係で専門業者への依頼は少なく、自社での実施が主流だとまとめに書かれています。
いちばん多い方法は「小物だけ」です
ここが実務でいちばん効く数字だと思います。実施方法(複数回答)は次のとおりでした。
- 自社で小物だけのホームステージングを実施:46.2%
- 自社で家具・小物を用意して実施:45.2%
- バーチャルステージングを実施:24.0%
- 専門業者に依頼:20.2%
- 貸主自身でホームステージングを実施:15.4%
1位は家具ですらありません。小物だけです。ソファやベッドを運び込む話だと思って身構える必要はなく、カーテン、ラグ、クッション、観葉植物、洗面まわりのタオル——写真に写る範囲を整える、というのが実際にいちばん多くやられている形です。
そして小物だけなら、掃除の延長でできます。どこまで落とすかは空室の掃除はどこまでやるかにまとめました。落とし切った部屋に、色を2つ足す。順番はこれです。
効かなかった人も、同じ調査に載っています
都合のいい数字だけ並べても意味がないので、逆側も出しておきます。
実施前と比べた成約までの期間(単一回答)は、少し短縮した(1週間〜1か月以内)55.8%、大幅に短縮した(1か月以上)17.3%の一方で、ほとんど変わらない20.2%、逆に長くなった3.8%、不明2.9%でした。
賃料の変化(単一回答)も、1〜4%値上げできた50.0%、5%以上値上げできた10.6%の一方で、ほぼ変わらない31.7%、逆に値下げすることがあった7.7%です。
5人に1人は期間が変わらず、3人に1人は賃料も変わっていません。それでも継続している会社が多いのは、費用が家賃1か月分前後で、外れたときの損が読めるからだと考えられます。取り返しがつく金額でしか試さない。築古アパートで新しい手を入れるときの原則は、ここでも同じです。

1部屋で試すときの順番
- 対象は長期空室の1部屋だけにする。調査でも実施基準の1位は長期空室(44.2%)です。全部屋でいきなり始めない
- 掃除を先に終わらせる。汚れた部屋に小物を置いても、写真では汚れのほうが目立ちます
- 小物から入る。カーテン、ラグ、照明の色。家具はその次でよい
- 写真を撮り直す。ここまでやって撮り直さないと、費用が1円も回収できません。撮る順番と枚数は募集写真は何枚・どの順番で載せるかに置いています
- 2週間、内見数を数える。申込ではなく内見数で見ます。内見が増えないなら原因は写真より前(家賃・条件・掲載)にあります
- 使った小物は次の部屋へ回す。1部屋で使い切りにすると、費用対効果が出ません
内見はあるのに決まらない、という状態そのものの切り分けは内見はあるのに決まらないときに見る場所もあわせてご覧ください。
家賃を3,000円下げると、年間で3万6,000円が毎年出ていきます。ホームステージングの費用は1回きりで、小物は次の部屋に持っていけます。どちらを先に試すかという話であって、どちらかしか選べないわけではありません。空室が長い1部屋から、カーテンを1枚替えるところで十分です。
出典
- 一般社団法人日本ホームステージング協会「ホームステージング白書2024(第8回ホームステージング実態調査)Vol.8」(2025年7月公開)https://www.homestaging.or.jp/about/hakusyo/

