保証人に「まず本人に請求して」と言われても、連帯保証人なら応じなくてよいと民法454条が定めています|築古アパートのオーナーが読む452条から454条

結論からお伝えすると、保証人から「まず本人に請求してください」と言われても、連帯保証人であれば、大家さんは応じなくてよいと民法454条が定めています。通常の保証人には、「まず主たる債務者(入居者本人)に催告せよ」と言える権利(452条)と、「本人の財産から先に執行せよ」と言える権利(453条)がありますが、主たる債務者と連帯して債務を負った保証人は、この2つの権利を持ちません。分かれ目は、契約書に「連帯して」と書かれているかどうかです。

仮の話です。入居者が3か月分の家賃を滞納したので、大家さんが保証人に電話で請求しました。保証人は「本人には請求したのですか。まず本人に言ってください」と答えます。契約書の保証人欄を見ると、「連帯保証人」と印刷されていました。この返事に応じる必要があるのか。条文の考え方を整理します。

452条から454条は、何を決めているか?

  • 452条(催告の抗弁):債権者が保証人に債務の履行を請求したときは、保証人は、まず主たる債務者に催告をすべき旨を請求することができる。ただし、主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき、またはその行方が知れないときは、この限りでない
  • 453条(検索の抗弁):債権者が主たる債務者に催告をした後であっても、保証人が主たる債務者に弁済をする資力があり、かつ、執行が容易であることを証明したときは、債権者は、まず主たる債務者の財産について執行をしなければならない
  • 454条(連帯保証の場合の特則):保証人は、主たる債務者と連帯して債務を負担したときは、前二条の権利を有しない

453条は、保証人の側が「資力がある」ことと「執行が容易である」ことを証明して初めて使えます。言うだけでは足りません。

保証人が言える3つの言い分と連帯保証人の扱いを整理した図

見るのは、契約書の「連帯」の2文字

賃貸借契約の保証人欄には、「連帯保証人」と書かれていることが多くあります。ところが、書かれていなければ、通常の保証になります。保証人欄の見出しや、特約の条文を、実際に読んで確かめてください。

  1. 「連帯保証人」「連帯して保証する」と書いてある → 454条で、催告の抗弁も検索の抗弁も使えない
  2. 「保証人」とだけ書いてある → 通常の保証人。452条・453条の権利がある
  3. 保証会社が保証人になっている → 保証会社との契約の定めを見る
通常の保証人と連帯保証人の違いを比べた図

通常の保証人でも、催告の抗弁が使えない場面

通常の保証人でも、452条のただし書きにより、次の場合は「まず本人に」と言えません。

  • 主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき
  • 主たる債務者の行方が知れないとき

入居者が行方不明になった場面は、築古アパートで起きやすい場面です。この場合は、保証人の種類にかかわらず、保証人へ請求できる流れになります。連絡が取れないときの段取りは、連絡が取れない入居者への対応にまとめています。

「まず本人に」と言えなくても、保証人に残る言い分

454条で2つの権利がなくなっても、保証人が何も言えなくなるわけではありません。

  • 457条2項:保証人は、主たる債務者が主張することができる抗弁をもって、債権者に対抗することができる。入居者が「家賃は払った」「修繕してくれないので払わない」と言える事情があれば、保証人もそれを理由に争える
  • 457条3項:主たる債務者が債権者に対して相殺権、取消権または解除権を持つときは、これらの権利の行使によって主たる債務者が債務を免れる限度で、保証人は債務の履行を拒むことができる

つまり、「連帯保証人だから黙って払え」とは言えません。金額が本当に滞納の分なのか、入居者に言い分がないかを、請求の前に確かめておく必要があります。保証人への情報提供の義務は、連帯保証人の保証が切れる3つの場面|極度額を書いていない契約は無効ですでまとめています。

請求は、誰に出せば時効に効くのか?

時効の面でも、本人と連帯保証人は別の扱いです。

  1. 本人への請求:457条1項により、主たる債務者に対する履行の請求その他の事由による時効の完成猶予と更新は、保証人に対しても効力を生じる
  2. 連帯保証人への請求:458条は、連帯保証人について生じた事由に、連帯債務の441条を準用しています。441条は、特に定められた事由を除いて、連帯債務者の1人について生じた事由は、他の連帯債務者に効力を生じない、と定めています。連帯保証人にだけ請求を続けても、本人の債務の時効は、これでは動かないと読めます

本人の債務が時効で消滅すれば、保証人もそれを援用できます(145条)。時効の数え方の全体像は、滞納家賃の時効は5年ですが、入居者が援用するまで請求は消えません|築古アパートのオーナーが読む民法166条・145条・152条にあります。

都合の悪いことも書いておきます

  • 454条は、保証人に請求しやすくする条文ですが、請求しても払ってもらえるとは限りません。保証人の資力は、契約の時とずれていることがあります
  • 極度額(保証人が負担する上限)を定めていない個人の根保証契約は、効力を生じません(465条の2第2項)。この点は、上の連帯保証人の記事に書いたとおりです
  • 保証人への請求の順番や、時効の止め方は、実際の滞納の状況で変わります。訴える段階に進むときは、弁護士に相談してください

今日できること

  1. 手元の賃貸借契約書で、保証人欄が「連帯保証人」になっているかを確かめる
  2. 保証人に請求する前に、滞納額の内訳を、月ごとに書き出す
  3. 本人への請求の記録と、保証人への請求の記録を、別々の書面に残す

出典

民法145条・452条・453条・454条・457条・458条・441条・465条の2(e-Gov 法令検索・2026年10月3日時点)。

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