滞納家賃の時効は5年ですが、入居者が援用するまで請求は消えません|築古アパートのオーナーが読む民法166条・145条・152条
結論からお伝えすると、滞納された家賃は、支払期日から5年で時効にかかります。ただし、5年たてば自動で消えるのではなく、入居者などが「時効です」と言って初めて効きます。民法166条1項1号は、債権者が権利を行使できることを知った時から5年間行使しないとき、債権は時効によって消滅すると定めています。毎月払いの家賃なら、支払期日が来た時点で権利を行使でき、そのことも大家さんは知っています。
家賃は「1か月分ずつ」別々に数えます
時効の5年は、滞納の合計ではなく、1か月分ごとに進みます。民法140条は、期間の初日を算入しないと定めているので、数え始めるのは支払期日の翌日です。143条2項は、年で定めた期間は、最後の年で起算日に応当する日の前日に満了すると定めています。
たとえば、支払期日が2021年8月31日の家賃は、翌日の9月1日から数え、2026年8月31日の終了で5年が満了します。月末払いの契約なら、2021年9月分は2026年9月30日の終了まで、2021年10月分は2026年10月31日の終了まで、と古い月から順に満了していきます。月末払いか翌月払いかで、同じ月分でも期日が変わるため、契約書の支払期日の欄を先に見てください。
なお、2020年3月31日時点の民法169条は、年またはそれより短い時期で定めた金銭の給付を目的とする債権を、5年間行使しないときに消滅するとしていました。毎月払いの家賃は、2020年4月の改正の前も後も、5年で数えられています。
5年を過ぎたら、請求は自動で消えるのか
民法145条は、時効は当事者が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができないと定めています。条文は、消滅時効の場合の当事者に、保証人、物上保証人、第三取得者その他権利の消滅について正当な利益を有する者を含めています。連帯保証人がいる契約では、入居者本人だけでなく保証人も援用できる立場にある、ということです。時効の効力は、起算日にさかのぼります(144条)。

時効を動かすのは、4つの行いです
- 承認:権利の承認があったときは、その時から新たに時効が進み始めます(152条1項)
- 催告:催告があったときは、その時から6か月を経過するまで時効は完成しません(150条1項)。催告の間にした再度の催告は、完成猶予の効力がありません(同条2項)
- 書面による協議の合意:合意が書面でされたときは、合意から1年、または定めた期間(1年未満)が過ぎるまで完成しません(151条1項)。再度の合意でも、通じて5年を超えられません(151条2項)
- 裁判上の請求・支払督促:その事由が終了するまで完成しません。確定判決で権利が確定すれば、そこから新たに進み始めます(147条)
確定判決で確定した権利は、10年より短い時効期間の定めがあっても10年になります(169条1項)。強制執行は148条、仮差押えは149条にも定めがあります。
催告は、1回で6か月だけです
督促の手紙を出したからといって、時効が止まり続けるわけではありません。150条1項の6か月のあいだに、裁判や支払督促などに進まなければ、時効はそのまま進みます。しかも、催告をくり返しても、その6か月は伸びません(150条2項)。催告を出した日を証明できるように、内容証明郵便のような形にして日付を残しておきます。

古い滞納があるときの点検の順番
- 月ごとに支払期日を書き出し、5年が満了する日を横に並べる
- 最後の入金日と、入居者が支払いを認めた記録(メール・書面・通話メモ)を探す
- 5年に近い月に印を付ける
- 催告でつなぐのか、裁判や支払督促に進むのかを、弁護士や司法書士に相談する
都合の悪いことも書いておきます
承認があったかどうかは、証拠次第です。「払います」と言った記憶があっても、日付と言葉が残っていなければ、時効の更新を主張しにくくなります。5年を過ぎた月の家賃を請求するかどうかは、入居者が援用するか、費用をかけて手続きをする価値があるかという、金額と手間の判断にもなります。この記事は条文の読み方を整理したもので、個別の事案への当てはめは専門家への確認が必要です。
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今日できること
- 滞納の一覧に、月ごとの支払期日と、5年が満了する日の列を足す
- 入居者とのやりとり(メール・LINE・書面)のうち、支払いに触れたものを日付順に保存する
- 5年の満了が近い月があれば、その月から順に、専門家へ相談する予定を入れる
出典
民法140条・141条・143条から145条・147条から152条・166条・169条(e-Gov法令検索・2026年9月30日時点。改正前の169条は2020年3月31日時点)。


