人口が減る町のアパートは、人口より世帯の数を見ます|築古アパートのオーナーが推計と国勢調査を突き合わせる
結論からお伝えすると、人口が減ると推計されている町でも、アパートの需要を決める世帯の数は、まだ増えているところが多いです。埼玉県の令和7年国勢調査の速報(2026年5月20日公表)では、人口は県全体で0.78%減りましたが、63市町村のうち世帯数が減ったのは14市町村だけでした。その14市町村は、国立社会保障・人口問題研究所(社人研)の推計で2050年の人口が2020年の8割を切る町に集中しています。人口の推計だけで「もう貸せない町」と決める前に、世帯の数と推計の答え合わせを見てください。
行田市に築35年のアパートを持っているとします。ネットで「行田市 人口 2050年」と調べると、社人研の推計で2020年の7万8,617人が2050年には4万9,980人、2020年を100として63.6と出てきます。県内の市では秩父市(60.1)に次いで低い数字です。この数字だけを見ると、売るしかない気がしてきます。

社人研の推計は、2020年の国勢調査から5年ごとに出した人口です
社人研の「日本の地域別将来推計人口(令和5(2023)年推計)」は、2023年12月22日の公表です。令和2(2020)年の国勢調査をもとに、2050年まで5年ごと30年間の人口を、男女・5歳階級別に市区町村ごとに推計したものです。当社の対応エリアで2050年の指数(2020年=100)を並べると、次のように開いています。
- 埼玉県…さいたま市101.2、戸田市107.0、熊谷市77.1、杉戸町69.1、幸手市67.1、行田市63.6
- 栃木県南部…小山市90.0、佐野市75.6、野木町73.7、栃木市72.6
- 千葉県西部…流山市120.9、柏市102.1、野田市86.2
ここで注意したいのは、この推計は人口であって、世帯の数ではないことです。アパートの1室を借りるのは1世帯です。一人暮らしが増えれば、人口が減っても世帯は増えます。
2025年の分は、もう答え合わせができます
社人研の推計には2025年の値があり、その年の国勢調査の速報が2026年5月に出ました。埼玉県の63市町村で比べると、速報が推計を上回ったのが25、下回ったのが38でした。
- 行田市…推計7万4,480人、速報7万6,179人(推計より2.3%多い)。世帯は5年で3万1,876→3万2,873と997増
- 杉戸町…推計4万2,121人、速報4万2,582人。世帯は607増
- 熊谷市…推計18万8,920人、速報18万8,262人。世帯は1,757増
- 戸田市…推計14万5,357人、速報13万9,164人(推計より4.3%少ない)。世帯は2,471増
推計で最も減るとされた行田市が、最初の5年では推計より多く残り、世帯も増えていました。推計は「このままの傾向が続けば」という計算で、外れる方向も町ごとに違います。
世帯まで減ったのは、どんな町ですか?
2020年から2025年に世帯数が減った14市町村は、秩父市・毛呂山町・越生町・小川町・川島町・鳩山町・ときがわ町・横瀬町・皆野町・長瀞町・小鹿野町・東秩父村・美里町・神川町です。14のうち13は社人研の2050年の指数が70以下で、残る美里町も77.3でした。秩父市は2025年の人口が推計5万5,148人に対して速報5万4,646人と推計を下回り、世帯も560減りました。人口は5年で8.43%の減少です。
逆に、指数が60台の行田市や幸手市は、世帯がまだ増えています。人口の推計が低いことと、いま世帯が減っていることは、同じではありません。アパートの判断に効くのは後者です。

人口が減る町の物件で、見る順番
- 自分の市町村の世帯数を、前回と今回の国勢調査で比べる…増えていれば、単身・少人数の世帯が入ってきている
- 推計と速報の差を見る…推計より多く残っているなら、転入か転出の傾向が推計の前提と違う
- 自分の物件の間取りと、増えている世帯の形を合わせる…誰に貸すかの決め方は築古アパートは誰に貸すかに書いています
世帯まで減り始めた町の物件は、募集の工夫より出口の検討が先になることがあります。貸す以外の回し方は空き家を貸す以外で回す方法、再建築不可を含めた判断の順番は再建築不可の物件をどう扱うかを見てください。
都合の悪いことも書いておきます
国勢調査の速報は確定値ではなく、今後の確報で数字が動くことがあります。世帯が増えていても、増えているのが高齢の単身世帯なら、賃貸の需要にそのままつながるとは限りません。また、市町村の数字は町全体の平均で、駅からの距離や学校・工場の有無で、同じ市の中でも需要は大きく違います。社人研の推計は政策の前提として使われる数字ですが、将来の人口を約束するものではありません。
今日やることを1つだけ選ぶなら
物件のある市町村の「令和7年国勢調査 速報」を開き、世帯数の増減の欄だけを見てください。プラスなら、人口の推計だけで売却を急ぐ理由はまだありません。マイナスなら、次の募集の前に出口の選択肢を並べておきます。
出典
- 国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5(2023)年推計)」結果表1(2023年12月22日公表)
- 埼玉県「令和7年国勢調査 速報結果 埼玉県人口及び世帯数」(2026年5月20日公表)


