再建築不可の物件をどう扱うか|オーナーが貸す・売る・持ち続けるを決める順番

結論からお伝えすると、再建築不可は「使えない物件」ではなく「今の建物を建て替えられない物件」です。判断の順番は、①今の建物が何年使えるか ②道路の状況が変わる見込みがあるか ③最後に誰へ渡すか——この3つです。先に売却額を調べても、順番が逆なので迷いが増えます。

相続した戸建の書類を、テーブルに並べる。登記事項証明書、固定資産税の納税通知書、古い測量図が1枚。前面の道は、車がすれ違えない幅しかない。市区町村の窓口で図面を出すと、担当者が定規を当てて言う。「この道は、建築基準法の道路として扱われていません」。そこで初めて、建て替えができない物件だと分かる。入居者は住んでいて、家賃は毎月入っている。この状態から、何をどの順番で決めるか、という話です。

再建築不可の物件で先に確かめる6点の図。前面道路の種別、接している幅は2mあるか、修繕はどこまでできるか、修繕を現金で払えるか、建物を失ったときどうなるか、隣地や私道で解決できないか。

再建築不可とは、何が起きている状態か

建物を新しく建てるには、敷地が道路に接していることが求められます。一般に、建築基準法では幅4m以上の道路に2m以上接することが原則とされています。この条件を満たさない敷地では、今建っている建物を取り壊すと、次の建物が建てられません。

よくあるのは次の状態です。

  • 前面が私道で、建築基準法の道路として扱われていない
  • 接している幅が2mに足りない(旗竿地の細い通路の部分)
  • 道路の幅が4mに足りず、後退(セットバック)が必要になる
  • 他人の土地を通らないと公道に出られない

どれに当たるかは、役所で調べれば分かります。市区町村の建築指導課(自治体によって名称が違います)で、前面道路の種別を確認してください。電話ではなく、窓口で図面を見ながら聞いたほうが確実です。ただし、個別の敷地でどう扱われるかの最終的な判断は、建築士や役所の担当窓口にご確認ください。法令の適用は敷地ごとに違い、ここは断定できない領域です。

再建築不可でも、リフォームはできるのか

一般には、建築確認が必要にならない範囲の修繕や模様替えであれば行えるとされています。内装の張り替え、設備の交換、屋根や外壁の補修は、この範囲に入ることが多いです。一方で、柱や梁を大きく入れ替える工事、床面積が増える工事、建物の主要な構造に及ぶ工事は扱いが変わります。

ここは自己判断がいちばん危ない場所です。「大規模な修繕に当たるかどうか」の線引きは、工事の内容と自治体の運用で変わります。見積りを取る前でいいので、建築士か役所に確認してから話を進めてください。

貸し続ける場合、何に気をつけるか

家賃が入っているなら、貸し続けるのは十分な選択です。ただし、ふつうの物件と違う点が3つあります。

  1. 修繕の資金は自分で用意する前提で考える:再建築不可の物件は担保としての評価が低く、一般に融資がつきにくいとされています。給湯器の故障のような突然の出費に、現金で対応できるかを先に確かめます
  2. 建物の寿命を延ばす工事を優先する:見た目より、雨と水です。屋根・外壁・雨樋・配管。建て替えられないのだから、今の建物を長く使うことがそのまま資産を守ることになります
  3. 火災などで建物を失ったときにどうなるかを考えておく:同じ規模で建て直せない可能性があります。火災保険の内容と、万一のときにどうするかは、加入している保険会社に必ずご確認ください。保険が使えるかどうかを判断するのは保険会社です

雨と水を止める順番は 外壁と屋根の修繕を後回しにすると何が起きるか に、設備の交換時期は 給湯器とエアコンはいつ交換するか にまとめています。床下と配管の点検は シロアリと給排水管はいつ点検するか の順番が使えます。

売る場合、誰が買うのか

再建築不可の物件は、買う人の種類が限られます。そして、そのことが価格と時間の両方に出ます。

  • 隣地の所有者:買い足すと接道を満たせる、駐車場として使える、といった理由がある。いちばん条件が良くなる可能性のある相手です
  • 現金で買う投資家:融資を使わないため、価格が折り合えば決まります。利回りで見られます
  • 買取業者:早く終わります。ただし価格は市場より低くなります

時間がかかることは、先に受け入れておいたほうがいい部分です。融資を使えない買主に絞られるため、一般の物件と同じ期間で決まる前提は置けません。

満室にしてから売るか、空室のまま売るか

収益物件として投資家に売るなら、稼働している状態のほうが評価されやすいです。一方で、隣地の所有者に売る場合や、買主が建物を解体して土地として使う場合は、入居者がいることがかえって進めにくい要素になります。先に誰へ売るかを決めて、そのあとに入居の状態を整える。順番はこちらです。

貸し続けるか売るかの比較図。貸し続けると家賃は入り続けるが修繕は現金で用意する前提で建物の寿命が上限になる。売る場合は買う人の種類が限られ隣地の所有者が最有力で、決まるまで時間がかかる。

持ち続ける・貸す・売るをどう決めるか

  1. 建物が何年使えるか:屋根・外壁・配管・シロアリ。ここが5年もたない状態なら、貸し続ける前提そのものが崩れます
  2. 道路の状況が変わる見込みがあるか:後退で解決する場合、隣地を買える場合、私道の持分を取得できる場合があります。解決できるなら、物件の性格が変わります
  3. 最後に誰へ渡すか:相続で次の世代に渡すのか、自分の代で現金化するのか。ここが決まると、修繕にどこまでお金を入れるかも決まります

順番が大事です。3番目を決めないまま1番目のお金を使うと、直したあとで売ることになり、かけた費用が戻ってきません。

建て替えを含めた判断材料は 築40年のアパートはリフォームか建て替えか、耐震の扱いは 旧耐震のアパートを持ち続けるリスクと選択肢、空き家のまま置いている場合は 空き家になった実家を賃貸に出すまでの流れ が材料になります。

まとめ

再建築不可の物件は、建て替えられないという一点を除けば、貸すこともできるし売ることもできます。困るのは、その一点を知らないまま大きな費用を入れてしまうことです。埼玉・千葉県西部・栃木県南部の昭和築の物件では、道が狭いまま家が建っている地域が今も残っています。

今日やることを1つだけ選ぶなら、市区町村の窓口で、前面道路の種別を確認してください。私道なのか、幅が足りていないのか、後退で解決するのか。ここが分かるだけで、選べる道は減るのではなく増えます。接道と建築の可否、火災保険の条件、税務の扱いについては、建築士・保険会社・税理士などの専門家に必ずご確認ください。

Follow me!