空室を物置として貸すのに、倉庫業の登録は要りません|築古アパートのオーナーが「預かる」と書かない理由
結論からお伝えすると、空室を「物置として使ってください」と部屋ごと貸すのは、倉庫業の登録なしでできます。倉庫業法2条2項の倉庫業は「寄託を受けた物品の倉庫における保管」を行う営業で、場所を貸すだけの賃貸借はこれに当たらないからです。ただし、「お預かりします」「保管します」と書いて荷物を預かる形にすると倉庫業になり、登録(3条)なしで営めば1年以下の拘禁刑か100万円以下の罰金(28条1号)の対象です。さらに、倉庫として貸した部屋の家賃は住宅の家賃ではないので、消費税の扱いが変わります。
1階の角部屋が1年半空いたままです。隣の部屋の入居者から「冬物とキャンプ道具を置く場所を探している。月5,000円なら借りたい」と言われました。家賃は下がりますが、ゼロよりはましです。収納サービスの広告では「お預かりします」という言葉をよく見かけますが、同じように書いてよいのかで迷います。

「預かる」と「場所を貸す」は、法律が違います
倉庫業法2条3項は、トランクルームを「寄託を受けた個人の物品の保管の用に供する倉庫」と定義しています。つまり法律上のトランクルームは、荷物を預かる(寄託)形のものです。国土交通省の関東運輸局も、倉庫業を「契約に基づいて会社や個人の方から預かった(寄託を受けた)物品を倉庫に保管する営業」と説明しています。
- 寄託(預かる)…荷物を管理する責任を負う。倉庫業の登録が要る
- 賃貸借(場所を貸す)…部屋を使わせるだけで、中の荷物の保管責任は負わない。倉庫業の登録は要らない
国土交通省の報道発表(2007年9月10日)も、トランクルームと呼ばれるサービスには、倉庫事業者が寄託契約で責任を持って保管するものと、倉庫事業者でない者が賃貸借契約で、保管責任を負わずに収納スペースを貸すものの2つがあると整理しています。大家が部屋を貸す場合は後者なので、募集の文言に「預かる」「保管する」を使わないのが基本です。
倉庫として貸しても、借地借家法はかかりますか?
かかると考えるのが一般的です。借地借家法は建物の賃貸借に適用され、使い道が住まいかどうかは問いません。物置として貸した部屋でも、大家から契約を終わらせるには正当の事由が要ることになります(28条)。「空室が埋まるまでのつなぎ」のつもりなら、期間の満了で終わる定期建物賃貸借(38条)にしておくのが確実です。書面と事前の説明の手続きは定期借家は築古アパートのどこで使えるかに書いています。
家賃の消費税と、土地の固定資産税
住宅の貸付けの家賃は消費税がかかりません(消費税法 別表第二13号)。物置として貸した部屋は住宅の貸付けではないので、その家賃は課税の売上になります。ほとんどの大家は課税売上高が1,000万円以下の免税事業者なので、すぐに納税が生じるわけではありませんが、2年前の課税売上高を数えるときの対象に入ります。住宅の家賃と消費税の関係はアパートの建物の消費税は、課税事業者になっても戻りませんを見てください。
土地の固定資産税の住宅用地の特例は、建物のうち人が住む部分の床面積の割合で決まります(地方税法施行令52条の11)。地上4階以下の建物なら、居住部分が2分の1以上あれば住宅用地の面積は全体のまま(率1.0)、4分の1以上2分の1未満なら半分(率0.5)です。6室のアパートで1室を物置にしても、居住部分は6分の5で2分の1を超えます。半分以上の部屋を倉庫にすると、土地の税が上がる側に入ります。判定は市町村の資産税の担当課に確かめてください。

建物の用途の変更は、面積と中身で分かれます
建築基準法では倉庫も特殊建築物で、共同住宅から倉庫へ用途を変える部分が200平方メートルを超えると確認の手続きが要ります(87条1項)。アパートの1室なら通常はこの面積に届きませんが、確認が要らないことと、基準に合っていなくてよいことは別です。事務所として貸すときの考え方はアパートの1室を事務所に使いたいと言われたらに同じ線で書いています。消防の扱いが変わるかどうかは、建物の規模によるので消防署に確かめるのが一般的です。
都合の悪いことも書いておきます
物置として貸すと、住まいとして募集できる部屋が1つ減ります。繁忙期に入居の申込が来ても、定期借家でなければすぐには戻せません。中に灯油やガスボンベ、塗料のような危険物を置かれると、建物全体の火災保険の条件に関わることがあるので、置いてよい物を契約書に書いておく必要があります。また、荷物の出し入れで共用廊下や階段に物が出やすくなります。空室を埋める他の方法と比べてから決めてください。駐車場の空きを収納に使う考え方はアパートの駐車場が空いたままのときにあります。
今日やることを1つだけ選ぶなら
物置として貸すと決めたら、募集文と契約書から「預かる」「保管する」「補償」の3語を消してください。代わりに「部屋を物置として使っていただく賃貸借です。中のお荷物の管理はご自身でお願いします」と書きます。
出典
- 倉庫業法2条・3条・28条、借地借家法28条・38条、消費税法 別表第二、地方税法施行令52条の11、建築基準法87条(e-Gov 法令API・2026年9月28日時点)
- 国土交通省 関東運輸局「倉庫業Q&A」、国土交通省 報道発表「トランクルームに関する重要事項説明の実施及び「標準トランクルームサービス約款」の一部改正について」(2007年9月10日)


