契約期間が過ぎても住み続ける入居者の保証人が「担保」に入るとは、民法619条に書かれていません|築古アパートのオーナーが読む619条
結論からお伝えすると、契約の期間が過ぎたあとも入居者が住み続けているとき、民法619条2項は、従前の契約で供されていた担保は期間の満了によって消滅する、と定めています。例外は敷金だけです。ただし、保証人がこの「担保」に入るのかは、条文には書かれていません。更新のあとに滞納が出てから「保証人に請求できるのか」と慌てないために、更新の時点で契約書と書類を確かめておく必要があります。
仮の話です。5年前に2年契約で貸した部屋。期間が切れたことは気づいていたが、入居者は変わらず住み、家賃も入っている。更新の書類は回さないまま、さらに3年が過ぎて、半年分の滞納が出る。そこで初めて契約書を開き、保証人欄の署名が5年前の日付のままだと気づく。こうした「更新の書類を出さないまま続いた契約」で、担保の扱いが問題になります。
期間が過ぎて住み続けると、契約はどうなるのか
民法619条1項は、賃貸借の期間が満了した後に賃借人が使用を続け、賃貸人がこれを知りながら異議を述べないときは、従前と同一の条件で更に賃貸借をしたものと推定すると定めています。この場合、各当事者は617条により解約の申入れができます。
建物の賃貸借には、借地借家法26条もあります。期間の満了の1年前から6か月前までに更新しない旨の通知がなければ、従前と同一の条件で更新したものとみなし、ただし期間は定めがないものとする、と定めています。2項は、通知をしていても、期間満了後に借りている人が使い続け、貸している人が遅滞なく異議を述べなかったときは同様とします。
つまり、何も出さずに期間が過ぎれば、同じ条件で貸し続けている状態になります。賃料や条件は変わりませんが、契約に「誰が何を差し入れているか」は、別に確かめる必要があります。
619条2項は、担保について何を定めているのか
619条2項は、従前の賃貸借について当事者が担保を供していたときは、その担保は、期間の満了によって消滅すると定めています。ただし、622条の2第1項に規定する敷金については、この限りでありません。
- 敷金:期間満了では消えません。賃貸借が終了し、かつ賃貸物の返還を受けたときに、未払いの賃料などを差し引いて返す対象です(622条の2第1項)
- それ以外の担保:条文の言い方では、期間の満了で消滅します
- 保証人:「担保」の中に保証人が入るかどうかは、619条の文言からは読み取れません。借地借家法26条にも、担保についての定めはありません
ここが、更新の場面で一番つまずきやすい点です。条文が書いていないことを、「消える」とも「続く」とも言い切れません。保証契約の書き方と、個別の事情で結論が変わり得るので、最終的な判断は弁護士に確認してください。

更新のあとの滞納で、保証人に請求できるのか
請求できるかどうかは、大きく3つで決まります。
- 保証契約書に、更新後も保証する趣旨の文言があるか(「本契約が更新された場合も同様とする」など)
- 保証人が、更新されたことを知っていたか。更新の書類に連署していたか
- 個人が保証人の場合は、極度額が定められているか
3つ目は2020年4月の民法改正で入った仕組みで、極度額のない個人の根保証は効力を持ちません。くわしくは、連帯保証人の保証が切れる3つの場面|極度額を書いていない契約は無効ですに書いています。
保証会社を使っている場合は、民法の条文より先に、保証委託契約の条項を見ます。更新のときに更新保証料を払うのか、更新の手続きをしなければ保証が続かないのか、といった取り決めは、保証会社ごとの契約に書かれています。
期間が過ぎる前に、何を確かめておくか
- 賃貸借契約書で、期間の満了日と、更新についての条項を確認する
- 保証人の保証契約書で、更新後も責任を負う旨の書き方になっているか確認する
- 保証会社の場合は、更新時の手続きと費用を、保証委託契約で確認する
- 更新する場合は、更新契約書を作り、保証人にも更新の事実を知らせて署名をもらう

都合の悪いことも書いておきます
更新の書類を新しく作れば、入居者の手間も、保証人への連絡の手間も発生します。保証人に連絡すれば、「更新後は保証を続けたくない」と言われる可能性もあります。それでも、滞納が出てから確かめるより、更新の前に確かめたほうが、大家さんの側に選べることが多く残ります。619条の「推定」が外れる場合や、保証の範囲は、個別の契約書の文言で変わるため、この記事だけでは判断できません。
更新が自動で続くと何が起きるかは、大家の契約は本当に「自動更新」なのか|法定更新すると期間の定めが消えますにまとめています。更新料を残すかどうかは、更新料は残すか、やめるか|築古アパートのオーナーが金額より先に確かめる3点に書いています。
今日できること
- 入居中の全室の契約書から、期間の満了日が過ぎているものを一覧にする
- その一覧の中で、更新の書類が残っていない部屋に印を付ける
- 印の付いた部屋の保証人の保証契約書を開き、更新後の責任についての文言を確認する
出典
民法617条・619条・622条の2(e-Gov法令検索・2026年10月1日時点)、借地借家法26条(同)。


