更新料は残すか、やめるか|築古アパートのオーナーが金額より先に確かめる3点

更新月の2か月ほど前になると、管理会社から更新の案内が入居者に届きます。そこに「更新料 家賃1か月分」と1行だけ印字されている。数日後、入居者から「これは払わないといけないものですか」と問い合わせが入る——築古アパートで毎年のように起きるやり取りです。

結論からお伝えすると、更新料を残すか、やめるかを決める前に確かめることが3つあります。①契約書に更新料の定めが一義的かつ具体的に書かれているか、②その更新料が募集のときに重しになっていないか、③更新の通知を出しているか。この3つを飛ばして金額の話から入ると、取れるはずのものが取れず、やめる必要のないものをやめることになります。

更新料を決める前に確かめる3点をまとめた図。契約書に一義的かつ具体的に書いてあるか、募集の重しになっていないか、更新の通知を出しているか。

更新料には、法律の根拠がない

まず前提として、更新料は法律で決まっているお金ではありません。国土交通省の「民間賃貸住宅に関する相談対応事例集(再改訂版)」(令和4年3月・賃貸借トラブルに係る相談対応研究会)には、こう書かれています。

「『更新料』については、法令上根拠となる規定がなく、必ずしも全国的な慣習でもないことから、国土交通省の賃貸住宅標準契約書においては記載がありません。」

つまり、国が示している標準的な契約書のひな形には、更新料という項目そのものが存在しません。地域によっても差があり、「あって当たり前」でも「なくて当たり前」でもない、というのが出発点です。

更新料は請求できないということですか?

そうではありません。同じ事例集が、最高裁の判断をこう整理しています。

「平成23年7月15日に出された最高裁判所判決では、更新料条項は、更新料の額が賃料の額、賃貸借契約が更新される期間等に照らし高額に過ぎる等の特段の事情がない限り有効であるとの判断が示されました。」(最高裁第二小法廷判決 平成23年7月15日・民集65巻5号2269頁)

事例集の参考資料では、有効とされる条件がもう少し細かく書かれています。「賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載された更新料条項」であること。ここが実務でいちばん効きます。

  • 金額(または賃料の何か月分か)が書かれている
  • どのタイミングで発生するのかが書かれている(更新のたびか、初回だけか)
  • 読んだ人によって解釈が分かれない書き方になっている

逆に言えば、契約書に「更新の際は別途協議する」としか書いていない部屋で、更新月に1か月分を請求しても、根拠が薄いということになります。やめるかどうかを考える前に、いま使っている契約書の該当条項を1回読んでください。築古アパートは契約書の版が古いまま何十年も回っていることがあり、条項自体が入っていない部屋が混ざっていることがあります。

国の調査に「更新料」という欄はない

更新まわりの数字としてよく引かれるのが、国土交通省住宅局の「令和7年度 住宅市場動向調査」(2026年7月17日公表)です。ただし、この調査にあるのは「更新料」ではなく「更新手数料」の欄です。

  • 更新手数料がある世帯は44.4%(令和7年度)
  • 月数は「1か月ちょうど」が69.7%
  • 推移は令和3年度42.1%→令和5年度48.2%→令和7年度44.4%で、一方向に減り続けてはいない

数字の枠も押さえておきます。この調査の民間賃貸住宅の対象は三大都市圏で、配布600・回収590(うち首都圏346)。市区町村別でも築年数別でもありません。埼玉県の築40年のアパート1棟の話に、そのまま当てはめられる数字ではないということです。「全体の傾向はこう」と押さえたうえで、自分の条件は同じ駅・同じ間取りの募集中の部屋で確かめます。

それでも読み取れることが1つあります。「いまどき更新のお金を取る物件は少数派」というほど少数派ではないということです。感覚で「もう時代に合わない」と決める前に、数字を見ておく価値があります。

残す場合と、やめる場合で何が変わるか

更新料を残す・やめるは、収入の増減だけの話ではありません。動くところが4つあります。

  1. 募集条件としての見え方:入居希望者は初期費用と「住み続けたときの総額」で比べます。2年ごとに1か月分が乗るかどうかは、長く住む人ほど効きます
  2. 長く住んでもらえるかどうか:更新のたびに出ていく理由を1つ渡すことになります。築古で入替えのたびに原状回復費が出る物件では、ここが重い
  3. 1回あたりの手取り:更新料をやめても、更新事務手数料(管理会社に払う分)はなくなりません。やめるのはどちらなのかを混同しない
  4. 途中でやめられるか:いま入っている人の契約はそのままです。変えられるのは次に募集する部屋から、が基本です

初期費用そのものを緩める順番は礼金・敷金・フリーレントはどの順番で緩めるかで整理しています。更新料は「入り口の条件」ではなく「住み続ける条件」なので、先に動かすのは入り口のほうです。

更新料を残す場合とやめる場合の違いを並べた図。残すと手取りは増えるが退去の理由が出る、やめると長く住んでもらいやすいが変えられるのは次の募集から。

更新の通知を出していますか

更新料をやめるかどうかより先に、手続きのほうで抜けが起きていることがあります。借地借家法26条1項は、期間の定めがある建物賃貸借について、こう定めています。

「当事者が期間の満了の一年前から六月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。」

ここで押さえるのは「ただし、その期間は、定めがないものとする」のほうです。何もしないまま期間が過ぎると、期間の定めがない契約になります。そのあと更新料を請求できるかは争いになりやすいところで、裁判例も一様ではありません。個別の部屋で判断が必要なときは、弁護士や、契約を扱っている宅地建物取引業者に確認してください。

あわせて、オーナー側からの更新拒絶には正当の事由が必要です(借地借家法28条)。条文は、双方が建物の使用を必要とする事情、従前の経過、利用状況、建物の現況、立退料の申出などを考慮して判断すると書いています。「更新料を払わないなら出ていってもらう」は、この条文の前では通りません。

築古アパートでの決め方

築古の物件では、次の順で見ると迷いにくくなります。

  • 空室が続いている部屋:更新料は入り口の条件ではないので、ここを削っても募集は動きません。先に触るのは初期費用と設備です(→家賃を下げる前に試す4つの手
  • 満室で回っている棟:いまの入居者に長く住んでもらうほうが、原状回復費と空室期間を考えると得になることが多い。更新料をやめる判断が生きるのはここ
  • 周辺に更新料なしの募集が並んでいるエリア:残すなら、契約書の条項が一義的かつ具体的に書けているかを先に直す
  • 賃料そのものを上げられる状態か:更新料の1か月分より、月額を動かせるかどうかのほうが効きます(→築古アパートでも家賃を上げられるのはどんなときか

今日やることを1つだけ選ぶなら

いま使っている賃貸借契約書を1部開いて、更新料の条項に「いくら」と「いつ」が書かれているかだけ確かめてください。書かれていれば、残すか・やめるかを落ち着いて選べます。書かれていなければ、金額を検討する前にやることが決まります。順番はいつもここからです。

なお、税務・法務の個別の判断(更新料の収益計上の時期、法定更新後の請求可否など)は、税理士・弁護士など専門家にご確認ください。この記事は一般的な整理です。対応エリアは埼玉県、千葉県西部、栃木県南部です。

Follow me!