LPガスの会社に付けてもらった設備の費用は、入居者のガス代に乗せられません|築古アパートのオーナーが読む液石法施行規則16条
結論からお伝えすると、LPガスの会社に給湯器や配管を無償で付けてもらったアパートでも、その費用を入居者のガス代に乗せて請求することは、2025年4月2日から原則としてできなくなっています。根拠は「液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律施行規則」16条15号の9です。あわせて、LPガスの請求は「基本料金」「従量料金」「設備料金」の3つに分けて通知することになりました(同15号の7)。大家にとっては、次に設備を入れ替えるとき、誰がいくら払うかを自分で決め直す話になります。
築35年のアパートで、LPガスの検針票を入居者から見せられたとします。基本料金と従量料金の下に、見慣れない「設備料金」の行があり、毎月数百円が載っている。入居者は「これは大家さんが払うものでは?」と聞いてきます。ガス会社からは何も聞いていない。この行は、2025年4月の規則改正で現れた行です。

規則16条は、ガス会社に4つのことを禁じています
液石法16条2項は、販売事業者が経済産業省令で定める基準に従って販売しなければならないとしています。その省令が施行規則16条で、賃貸住宅に関係する号が並んでいます。e-Gov の時点指定で確かめると、15号の3から15号の6は2024年7月2日、15号の7から15号の9は2025年4月2日から効力を持っています。
- 15号の3…入居者とガスの契約を取るために、建物の所有者等に「正常な商慣習を超えた利益」を供与しない
- 15号の5…入居者がガス会社を変えることを制限するような条件を付けた貸与契約等を、所有者等と結ばない
- 15号の8…配管とガス器具等の設置に係る費用以外を、設備の費用として請求しない(エアコンや通信機器の代金を載せない)
- 15号の9…入居者に、建物の所有者が本来負担すべき設備の費用を請求しない。ただし、ガス会社と入居者の間で負担の方法に合意がある場合は除く
つまり、ガス会社が大家に設備を無償で出し、その分を入居者のガス代で回収する、という形が条文の上で閉じられました。消費者庁も「賃貸住宅のLPガス料金 賃貸借契約の前に確認しましょう」で、設備料金に金額があったら要確認と入居者に呼びかけています。

「設備料金」が載っていたら、大家は何を確かめればよいですか?
消費者庁のページは、事前の合意がない場合は原則として入居者の費用負担はないとし、その対象を2025年4月2日以降に締結する販売契約と書いています。そのため、まず次の順に確かめます。
- その入居者のガスの契約日…2025年4月2日より前か後か
- ガス会社と大家の間の書類…給湯器・こんろ・配管の貸与契約や覚書があるか。ガス会社を変えると違約金がかかるような条件が入っていないか
- 入居者との合意の有無…15号の9のただし書に当たる合意を、ガス会社と入居者が交わしているか
大家が入居者へ「払わなくてよい」と言い切るのは避けます。ガスの契約の当事者はガス会社と入居者で、大家は当事者ではないからです。大家がするのは、ガス会社に「この設備料金の中身は何か」を書面で聞くところまでです。
メーターとボンベは、だれの物ですか?
LPガスでは、ボンベ(容器)やメーターなどの供給設備はガス会社の所有であることが一般的です。規則16条16号は、ガスの契約者(入居者など)から契約解除の申し出があり、要求があれば、ガス会社は自分の供給設備を遅滞なく撤去するとしています。17号は、ガス会社が所有する消費設備の配管について、適正な対価で所有権を移すとしています。ガス会社を変えたいときに「配管はうちの物だから」と止められる場面は、条文の上では想定されていません。都市ガス用とLPガス用の器具の違いはガスこんろは都市ガス用とLPガス用で法律から別物ですに書いています。
次の入れ替えのとき、費用をどう決めるか
給湯器の更新がこれから来るなら、大家が自分で買って付けるか、ガス会社から借りて大家が毎月払うかを、見積もりで比べることになります。入居者のガス代に乗せる選択肢は、合意がない限り使えません。埼玉や栃木南部の築古アパートはLPガスの棟が多く、無償貸与で入れた給湯器がちょうど更新の時期に来ている物件もあります。電気温水器との比較は電気温水器のままでいいのかも参考になります。
都合の悪いことも書いておきます
2025年4月2日より前に結ばれたガスの契約や、それ以前からの貸与契約がどう扱われるかは、契約ごとに書類を読まないと決まりません。また「正常な商慣習を超えた利益」の線引きは条文に金額が書かれておらず、個別に判断されます。違約金の条項がある貸与契約の解消は、専門家に条項を見てもらってから動いてください。
今日やることを1つだけ選ぶなら
入居者の検針票か請求書を1枚見せてもらい、「設備料金」の行に金額があるかを確かめてください。金額があれば、ガス会社にその内訳と、大家との間の貸与契約の写しを求めます。
出典
- 液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律16条、同施行規則16条15号の3〜15号の9・16号・17号(e-Gov 法令API・2026年10月8日時点。施行日は時点指定で確認)
- 消費者庁「賃貸住宅のLPガス料金 賃貸借契約の前に確認しましょう」


