ガスこんろは都市ガス用とLPガス用で法律から別物です|築古アパートのオーナーがIHと迷う前に見る3つ
結論からお伝えすると、築古アパートのこんろを選ぶときに最初に決めるのは「IHかガスか」ではありません。その部屋に来ているのが都市ガスかLPガスか、そして分電盤に200ボルトの回路を足せるかです。ガスこんろは、見た目が同じでも都市ガス用とLPガス用で根拠になる法律そのものが分かれていて、部品を替えて行き来することはできません。

同じ形のこんろが、2つの法律に分かれて載っている
ガス事業法137条1項は「ガス用品」を政令で定めるとしていて、その政令であるガス事業法施行令14条が別表第一を指しています。別表第一の五号には、こんろがこう書かれています。
「ガスこんろ(ガスの消費量の総和が一四キロワット(ガスオーブンを有するものにあつては、二一キロワット)以下のものであつて、こんろバーナー一個当たりのガスの消費量が五・八キロワット以下のものに限り、液化石油ガス用のものを除く。)」
かっこの最後を読み飛ばさないでください。LPガス用のこんろは、この法律の対象から外されています。では、どこに載っているのか。液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律(以下、液化石油ガス法)2条7項が「液化石油ガス器具等」を政令で定めるとしていて、その施行令の別表第一の二号ロに、消費量の総和14キロワット以下・バーナー1個あたり5.8キロワット以下という、ガス事業法とまったく同じ数字のこんろが置かれています。
つまり、同じ大きさ・同じ口数のこんろが、都市ガス用は経済産業省のガス事業法の側に、LPガス用は液化石油ガス法の側に、別々に書かれているということです。ノズルの径も供給される圧力も違うため、都市ガス用のこんろをLPガスの部屋に置くことはできません。据置きのテーブルこんろでも、ビルトインでも同じです。
築古アパートでは、同じ棟でも入居者が持ち込んだこんろが前の部屋から持ってきたものだった、という場面が起きます。オーナー側でやれることは1つで、募集図面と入居のしおりに「都市ガス」か「プロパンガス」かを大きく書いておくことです。
「特に危ない」とされているのは、こんろではありません
ガス事業法137条2項は、ガス用品のうち「特にガスによる災害の発生のおそれが多いと認められるもの」を特定ガス用品として別に定めています。中身は施行令15条が指す別表第二で、並んでいるのは次の4つだけです。
- ガス瞬間湯沸器
- ガスストーブ
- ガスバーナー付ふろがま
- ガスふろバーナー
こんろは入っていません。この違いは手続きに出ます。特定ガス用品は、販売するときまでに国の登録を受けた第三者機関の検査(適合性検査)を受けて証明書の交付を受けなければならない、とガス事業法146条1項が定めています。こんろにはこの第三者検査がなく、製造・輸入する事業者が145条1項の技術基準に適合させ、147条1項の表示を付ける、という形です。
LPガス側も同じ構造で、液化石油ガス法施行令の別表第二に挙がっているこんろは「液化石油ガスを充てんした容器が部品又は附属品として取り付けられる構造のもの」、つまりカセット式のものに限られています。
では、IHはどうか。電気用品安全法施行令の別表第二第七号(三一)に「電磁誘導加熱式調理器その他の調理用電熱器具」があり、こちらは特定電気用品ではないほうの電気用品です。ちなみに同じ法律の別表第一(特定電気用品)に入っているのは、電気便座と電気温水器のほうです。
整理すると、国が「特に災害のおそれが多い」と線を引いたのは、湯を沸かす側と風呂まわりであって、調理の火口ではありません。築古アパートの設備を直す順番を考えるとき、この線引きは参考になります。給湯器の交換を後回しにしてこんろを新しくする、という順番は、法律の見立てとは逆を向いています。

IHにするなら、こんろより先に分電盤を開ける
ビルトインのIHは、ほとんどの機種が単相200ボルトの専用回路を必要とします。築古アパートで詰まるのはここです。
- 分電盤にブレーカーを足す空きがあるか(空きがなければ分電盤ごと交換になる)
- 盤まで来ている幹線の容量が足りるか(単相三線式でなければ、引込みからやり直しになることがある)
- キッチンまで新しい回路を引ける経路があるか(壁の中を通せないと露出配線になる)
この工事は電気工事士の資格が要る作業です。分電盤そのものの見方は昭和のアパートで分電盤と漏電をいつ点検するか|オーナーが見る場所と呼ぶ相手にまとめています。電気の工事が後から付いてくる設備という点では、温水洗浄便座を付けるかどうか|築古アパートのオーナーに金額のあとから付いてくる3つの義務と同じ形です。
費用はどのくらいか
工事費を含んだ総額で公表されている数字を挙げます。ビルトインガスコンロの交換は、基本的な機能だけのベーシックグレードで工事費込み65,459円〜113,234円(税込)、オートメニューなどが付くミドルグレードで111,668円〜153,319円(税込)です。同じページに「都市ガス(12A・13A)とプロパンガス(LPG)用のガスコンロで価格差はありません」とも書かれています(出典:交換できるくん「ガスコンロ交換の費用相場」)。
ビルトインIHクッキングヒーターは、ベーシックグレードで工事費込み83,270円(税込)からです(出典:交換できるくん「IHクッキングヒーター交換」、2026年8月度の掲載価格)。ただしこの金額は本体と交換工事のもので、200ボルトの回路が来ていない部屋では電気工事が別に乗ります。築古アパートでIHが高くつくのは、本体ではなく回路の側です。
どちらを選ぶと決まりやすいのか
入居付けの面では、単身向けの築古であれば「こんろがあること」自体が効きます。口数が2口あるか、こんろ台がぐらついていないか、のほうが、IHかガスかより先に見られます。キッチンまわりを替えずに印象を動かす手は築古アパートのキッチンは替えずに印象を変えられるか|オーナーが1階と最上階で分けて決めるに書きました。
設備が壊れてから慌てて決めると、選択肢が減ります。入居中に壊れたときの動き方は入居中に設備が壊れたとき、どこまで急ぐのか|築古アパートのオーナーが連絡の日から数える3つの期限、修理と交換の分け方は設備が壊れた連絡が入ったら|賃貸オーナーが修理と交換を分ける判断ラインを参照してください。
なお、ガス機器の設置や接続はガス事業者・LPガス販売事業者の側に決まりがあり、物件の条件によって扱いが変わります。具体の判断は、供給しているガス会社と、施工する電気工事店に確認してください。
今日やることを1つだけ選ぶなら
所有している築古アパートの1部屋の分電盤を開けて、写真を撮ってください。空きブレーカーが1つもなければ、その物件でIHを選ぶ話は、こんろの見積もりを取る前に分電盤の話になります。埼玉・千葉県西部・栃木県南部の築古アパートでは、単相二線式のまま残っている盤もまだあります。1枚の写真が、3社に見積もりを頼むときの前提を揃えてくれます。


