入居者の専用庭や駐輪場を第三者に使われたとき、直接やめてと言えるのは対抗要件を備えた賃借人です|築古アパートのオーナーが読む民法605条の4
結論からお伝えすると、入居者の専用庭や駐輪場を第三者が使っているとき、入居者が自分の名前で「どけてください」「返してください」と求められるのは、賃借権の対抗要件を備えている場合です。民法605条の4が、そう決めています。対抗要件がなければ、この条文は使えません。そして駐車場や駐輪場のように、建物ではなく土地だけを借りている場合は、建物の引渡しでは対抗要件になりません。
仮の話です。1階の部屋に付いている専用庭に、近所の人が毎週のように自転車と植木鉢を置いている。入居者から「使えないので何とかしてほしい」と連絡が来る。大家さんは「入居者が自分で言えばいいのでは」と思う一方、入居者は「貸している人が対応するものだ」と思っている。この食い違いの出どころが、605条の4です。
民法605条の4は何を決めているか
条文の中身は次のとおりです(法務省「民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)新旧対照条文」で確認しました)。
- 対象:不動産の賃借人で、民法605条の2第1項に規定する対抗要件を備えた人
- 第三者が占有を妨害しているとき:その第三者に、妨害の停止を請求できる
- 第三者が不動産を占有しているとき:その第三者に、返還を請求できる
この条文は2020年4月1日施行の債権法改正で新設されました。それまでは、条文に書かれていなかったので、賃借人が第三者に直接どこまで言えるかは、判例と解釈に頼っていました。
では「対抗要件」とは何か。605条の2第1項は、民法605条(賃貸借の登記)、借地借家法10条または31条その他の法令の規定による対抗要件を挙げています。建物の賃貸借では、借地借家法31条の「建物の引渡し」が代表です。入居者が部屋の鍵を受け取って住んでいれば、建物の賃借権については対抗要件を備えた形になります。

専用庭と、駐輪場・駐車場とで見方が分かれます
ここが、築古アパートの大家さんが取り違えやすいところです。
- 専用庭:建物の賃貸借と一体で、庭も一緒に引き渡しているなら、建物の引渡しを根拠に考える余地があります。ただし、庭が建物の賃貸借の一部なのか、別の契約なのかで見方が変わります。条文だけでは決まりません
- 屋根のない駐輪場・駐車場:土地だけの賃貸借です。借地借家法10条は、建物を所有する目的の借地権を対象にしているので、駐車場のような使い方は入りません。残る対抗要件は、民法605条の賃貸借の登記です。賃貸借の登記は賃貸人の協力が要るため、一般には、駐車場や駐輪場でそこまで備えている例は多くありません
つまり、月5,000円の駐輪場を借りている入居者が、第三者に「どけてください」と自分の権利で求められるかというと、条文の上では対抗要件が壁になります。これは入居者にとって都合の悪い話ですが、契約書を作る側の大家さんが知っておく点です。
では、大家さんは何もしなくてよいのか
よくありません。民法601条は、賃貸借を「ある物の使用及び収益を相手方にさせることを約する契約」と定めています。入居者が借りたものを第三者が使い続けているなら、貸している側は、その状態を放っておいてよいのか、という問題が生じます。どこまで動く義務があるかは、契約の中身と事情で変わるため、断定はできません。
所有者である大家さんは、所有権にもとづいて、自分から第三者に求めることもできます。入居者の対抗要件が弱い場面ほど、貸主の側から動く意味があります。無断駐車や放置自転車への動き方は、アパートの無断駐車と放置自転車をどう止めるか|築古アパートのオーナーが自分で動かす前に踏む3つの段にまとめています。

契約書に足しておく一文は何か
- 専用庭・駐輪場が、建物の賃貸借に含まれるのか、別の契約なのかを書く
- 第三者が使っているのを見つけたとき、入居者が大家に連絡する決まりにする
- 大家が第三者に求めるのか、入居者が直接言ってよいのかを書く
- 第三者への対応にかかった費用を、誰が持つのかを書く
駐車場を家賃に含めるか、別の契約にするかで、解約の条件や期間も変わります。その整理は、駐車場代を家賃に含めるか別契約にするか|期間を書かないと解約は1年先ですに書いています。
都合の悪いことも書いておきます
この記事は、条文の読み方を整理したものです。庭や駐輪場が建物の賃貸借の一部と見られるか、第三者が実際に妨害しているといえるか、どの手続きで求めるかは、事情によって結論が変わります。実際に第三者と争いになりそうなときは、先に弁護士に相談してください。条文を知っていることと、使えることは別です。
今日できること
- 専用庭や駐輪場がある物件について、契約書で「建物と一体」か「別契約」かを確かめる
- 第三者が使っているのを、入居者から連絡を受けたときの動き方を、一言でも決めておく
- 次の契約更新のときに、上の4点を書き足す候補にする
出典
民法601条・605条・605条の2第1項・605条の4(法務省「民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)新旧対照条文」・2026年10月2日確認)。借地借家法10条・31条は、本文では条文の呼び名のみに触れています。


