取壊しが決まっているアパートを貸すなら、「取壊しで終わる」特約は書面がなければ成り立ちません|築古アパートのオーナーが読む借地借家法39条

結論からお伝えすると、取壊しが決まっているアパートを貸すとき、「建物を取り壊す時に賃貸借が終わる」という特約は、取壊しの事由を書いた書面がなければ成り立ちません。普通の建物賃貸借では、貸主から更新を拒むにも解約を申し入れるにも「正当の事由」が必要で(借地借家法28条)、これに反する借主に不利な特約は無効です(30条)。この原則の例外として置かれているのが、39条です。

取壊し予定の建物の賃貸借に必要な3つの条件を示した図

39条が使えるのは「取り壊すべきことが明らか」な場合です

39条1項は、法令または契約により一定の期間を経過した後に建物を取り壊すべきことが明らかな場合に、建物を取り壊すこととなる時に賃貸借が終了する旨を定められると書いています。条文の言葉に入っているのは「法令又は契約により」「明らか」です。大家さんが「そろそろ建て替えたい」と考えているだけでは、条文の言葉に届きません。

たとえば、土地の契約や行政の事業で取壊しの期限が決まっているような場合は、条文の言葉に近づきます。ただし、個別の事情が条文に当たるかどうかは、最終的には裁判所が判断します。

書面に書くこと

39条2項は、この特約を「建物を取り壊すべき事由を記載した書面によってしなければならない」と定めています。3項により、その内容を記録した電磁的記録でも、書面とみなされます。

条文に書いてあるのは、取壊しの事由を書いた書面という点です。あわせて1項の「一定の期間を経過した後に」という言葉から、書面には、何を根拠に、いつごろ取り壊すのかが読み取れる形で書いておくのが自然です。

定期借家(38条)とは、終わる理由が違います

同じ借地借家法の中で、更新のない賃貸借には38条の定期借家もあります。38条1項は、期間の定めがある賃貸借で、公正証書による等書面によって契約するときに限り、更新がないと定められるとしています。賃貸人は、あらかじめ賃借人に対し、更新がなく期間満了で終了することを書面で説明しなければならず(3項)、説明をしなかったときは、更新がない旨の定めは無効です(5項)。期間が1年以上なら、満了の1年前から6か月前までの間に終了の通知をする必要もあります(6項)。

39条は、終わる時が期間の満了ではなく、取り壊すこととなる時です。39条の条文には、38条3項の説明書面や6項の終了通知に当たる定めは置かれていません。ただし、条文にないことは、入居者に事情を伝えずに結んでよいという意味ではありません。定期借家の使いどころは、定期借家は築古アパートのどこで使えるか|オーナーが外せない手続きと向く場面で書いています。

定期借家(38条)と取壊し予定の賃貸借(39条)の終わる理由を比べた図

書面がなかったら、どうなるのか

2項の書面がなければ、39条の特約は成り立たず、通常の賃貸借と同じく、更新の拒絶や解約の申入れに正当の事由が求められます。28条は、その判断で考慮するものとして、貸主と借主が建物を使う必要、これまでの経過、建物の利用状況と現況のほか、貸主が明渡しの条件として、または明渡しと引換えに財産上の給付(立退料)を申し出た場合のその申出を挙げています。更新拒絶の考え方は、賃貸の更新を大家が拒否できるのか|正当事由は立退料だけでは足りないに書いています。

都合の悪いことも書いておきます

39条は「建て替えたいときに、入居者に出てもらうための近道」ではありません。取壊しが「明らか」といえる根拠が、法令か契約として手元に残っているかが出発点になります。根拠が弱いまま書面だけ整えても、争いになれば特約が認められない可能性があります。この記事は条文の読み方を整理したもので、個別の事案への当てはめは、弁護士への確認が必要です。

今日できること

  1. 取壊しが決まっている根拠が、法令や契約の書類として手元にあるかを確かめる
  2. 取壊しの事由と、取り壊す時期が読み取れる書面の案を作る
  3. 入居者に、取壊しの事情を書面とは別に口頭でも伝える手順を決める

出典

借地借家法28条・30条・38条・39条(e-Gov法令検索・2026年9月30日時点)。

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