都市計画道路の線が敷地にかかっていても、建て替えはできます|築古アパートのオーナーが読む都市計画法53条と54条
結論からお伝えすると、都市計画道路の線が敷地にかかっていても、建て替えができなくなるわけではありません。都市計画法53条で許可が必要になるだけで、54条は「階数が2以下で地階がなく、木造・鉄骨造・コンクリートブロック造などで、容易に移転・除却できる建物」なら、許可をしなければならないと書いています。築古の2階建て木造アパートを同じような形で建て替えるなら、条文は許可の側にあります。ただし、道路の事業が近づいて「事業予定地」になると、話が変わります。
建て替えの相談で設計事務所に行くと、役所で都市計画図を確かめてきた担当者が言う。「敷地の南側、幅4メートルほどに計画線がかかっています」。計画が決まったのは何十年も前で、目の前の道は昔と同じ幅のまま。その線が、いま何を止めていて、何を止めていないのかを、条文で分けておきます。

53条は「禁止」ではなく「許可が要る」という条文です
都市計画法53条1項は、都市計画施設の区域または市街地開発事業の施行区域の中で建築物を建築しようとする者は、都道府県知事等の許可を受けなければならないと定めています。都市計画道路は、同法11条1項1号の「道路」として都市計画に定められた都市施設です。
ここまで読むと「建てられない」と受け取りがちですが、54条は許可の基準を書いています。申請が次のどれかに当てはまるときは、「その許可をしなければならない」という書き方です。
- 1号…その建築が、都市計画のうち建築物について定めるものに適合していること
- 2号…立体的な範囲が定められている都市施設で、その範囲の外で行われ、整備に著しい支障がないこと
- 3号…階数が2以下で、かつ、地階を有しないこと。主要構造部が木造、鉄骨造、コンクリートブロック造その他これらに類する構造であること。そして容易に移転し、または除却できると認められること
築古アパートのオーナーに効くのは3号です。木造2階建てを木造2階建てに建て替える計画は、この基準の中に入ります。反対に、3階建てにしたい・鉄筋コンクリート造にしたい・地下を掘りたいとなると、3号の基準から外れます。自治体によっては運用の基準を別に設けていることがあるので、設計を固める前に、都市計画課の窓口で「54条のどの号で見るか」を聞いてください。
計画線がかかっている部分だけ、建てなければよいのですか?
53条1項が対象にしているのは「都市計画施設の区域内において」行う建築です。建物が区域にかからないよう配置すれば、そもそも53条の許可の対象から外れる形になります。敷地の広さに余裕があるなら、配置を振る案も比べる価値があります。ただし、建物のどこまでが区域にかかるかは、図面と現地の測量で確かめてからの話です。
事業予定地になると、許可されないことがあります
55条1項は、都道府県知事等が都市計画施設の区域内の土地で指定したもの(57条までで「事業予定地」と呼ばれます)について、54条の規定にかかわらず、53条1項の許可をしないことができると定めています。54条の「しなければならない」が外れる場所です。
その代わり、56条1項があります。事業予定地の土地の所有者から、建築が許可されないとその土地の利用に著しい支障を来すことを理由に、買い取るべき旨の申出があったときは、特別の事情がない限り、その土地を時価で買い取るものとする。申出を受けた側は、買い取るか買い取らないかを遅滞なく通知しなければなりません(同条2項)。
さらに57条では、事業予定地の土地を有償で譲り渡そうとする者に、予定対価の額と相手方などを書面で届け出る義務がかかります(2項。土地と建物をあわせて譲り渡す場合は除かれています)。届出から30日以内に買い取る旨の通知があれば、届出書の予定対価の額で売買が成立したものとみなされます(3項)。その期間は譲り渡してはいけません(4項)。
そして事業そのものが認可・告示されると、53条3項により53条1項は適用されなくなり、65条の別の制限に移ります。「計画決定」「事業予定地」「事業の告示」の3段で、効く条文が入れ替わると覚えておくと整理がつきます。

線は、動くことがあります
都市計画道路は、決めたら永遠にそのまま、というものではありません。さいたま市は「さいたま市道路網計画」に基づいて見直しを進めており、変更手続きが完了した路線を一覧で公表しています。
- 3・5・92号 中川中央通線…全線廃止(平成25年3月1日告示)
- 3・6・28号 大谷場領家線…全線廃止(平成26年5月1日告示)
- 3・4・105号 堀崎蓮沼線…全線廃止(平成27年9月2日告示)
- 3・4・39号 辻中央通り線…外環状道路〜朝霞蕨線の区間を廃止(令和5年9月1日告示)
(出典:さいたま市「手続き路線一覧」)
いま敷地にかかっている線が、見直しの対象になっているかどうかは、市の公表資料で確かめられます。建て替えの時期を決める前に、その路線が「存続」なのか「廃止候補」なのかを一度見ておくと、設計のやり直しを減らせます。埼玉県も県の都市計画道路の見直しを公表しています。
売るときは、重要事項説明に載ります
宅地建物取引業法施行令3条1項は、重要事項として説明すべき法令上の制限を列挙しており、都市計画法53条1項・57条2項と4項・65条1項がそこに入っています。計画線がかかっていることは、買主に必ず伝わる情報です。
買う側の金融機関や買主は、この線を見て価格や融資を考えます。建て替えの許可が下りる条件(54条3号)を、売る側が先に整理しておくと、「何も建てられない土地」という誤解で値を下げられるのを防げます。売り方の順番そのものは築古アパートを売るなら満室にしてからか空室のままかで書いています。
都合の悪いことも書いておきます
54条3号で許可が下りても、それは「いつか道路になる前提の建物」という許可です。事業が始まれば、建物は移転か除却の対象になります。補償の手続きはありますが、建てたばかりのアパートの入居者に立ち退きをお願いする場面が来るかもしれません。計画線の上に長く使う建物を建てるかどうかは、許可の可否とは別に考えてください。
また、敷地の一部が道路になると、残った敷地で建ぺい率・容積率を満たせるかが問題になります。建て替えるかリフォームで持たせるかの判断は築40年のアパートはリフォームか建て替えかの5つの基準とあわせてご覧ください。
今日やることを1つだけ選ぶなら
市の都市計画図で、敷地にかかっている路線の番号(3・4・◯号のような番号)を1つ書き写してください。その番号で「手続き路線一覧」や見直しの資料を引けば、存続か廃止候補か、事業予定地の指定があるかが分かります。そのうえで、建て替えの計画があるなら都市計画課の窓口で54条の基準を確認する。許可の見込みや補償の扱いは、自治体の窓口と建築士にご確認ください。
出典
- 都市計画法4条・11条・53条・54条・55条・56条・57条(e-Gov 法令検索・2026年9月24日時点)
- 宅地建物取引業法施行令3条(e-Gov 法令検索・2026年9月24日時点)
- さいたま市「手続き路線一覧」「都市計画道路の見直し(さいたま市道路網計画の策定)」


