和室を洋室に変えるか|築古アパートのオーナーが費用と埋まりやすさを判断する順番
結論からお伝えすると、和室の洋室化は「決まらない原因が和室にあると確かめてから」着手する工事です。順番を逆にすると、費用をかけたのに問い合わせが増えない、という結果になりやすいためです。
退去の連絡が入って、その3日後に見積が届く。A4が1枚だけで、項目は「和室洋室化工事 一式」の1行。右端に金額が入っている——築古アパートではよくある場面です。この1行のままでは、高いのか安いのかを判断する材料がありません。

一式の見積を、物量に分けて見る
和室を洋室にする工事は、ひとつの作業ではありません。少なくとも次の5つに分かれます。
- 畳の撤去と処分(6畳なら畳が6枚出ます)
- 床の下地づくり(畳の厚みぶんだけ床が下がるため、合板で高さを合わせます)
- 床の仕上げ(フローリングか、クッションフロアか)
- 壁と天井の仕上げ(砂壁・繊維壁が残っていれば、クロスを貼る前の下地処理が必要です)
- 建具まわり(襖・押入れ・鴨居・畳寄せをどこまで替えるか)
金額が妥当かどうかは、この5つに分かれた見積でしか判断できません。「一式」で届いたら、内訳を出してもらうところから始めてください。断られるような依頼ではありません。
6畳の和室は、何平方メートルぶんの工事になるのか
関東で多い江戸間の6畳は、床が約9.3平方メートルです。床だけを見ると小さく感じますが、壁と天井を合わせると25〜30平方メートル前後になります。つまり金額の大半は、床ではなく壁と天井で動きます。ここを知らずに「6畳だから安いはず」と考えると、見積を見たときに話が噛み合いません。
参考になる水準として、職人が受け取る手間の側から見ると、賃貸で使う量産クロスは1平方メートル500円が下限です。ネット上には「1平方メートル300〜450円」と書かれた記事が今も残っていますが、あれは10年ほど前の水準です。
ただしこれは業者どうしのやり取りの単価です。オーナーが直接発注する場合は、ここに材料費・諸経費・現場管理の手間が乗るため、これより高くなります。この数字は「見積が安すぎないか」を測るための下敷きとして使ってください。そのまま自分が払う金額として読むと、話が噛み合いません。
砂壁や繊維壁が残っている部屋は、下地処理の工程がもう1つ増えます。ここを省いた見積は安く見えますが、数年で表面が浮いてくることがあります。安い見積を選ぶときは、何を省いた結果安いのかを確認してください。
床の仕上げは、フローリングとクッションフロアで判断が分かれます。クッションフロアは費用が抑えられ、次の退去時の張り替えも軽くなります。一方で、内見した人が足で踏んだときの感触は、フローリングのほうが伝わります。単身向けの募集か、ファミリー向けかで選び方が変わる部分です。迷ったら、同じ建物の他の部屋と仕上げを揃えておくと、次の募集で反応を比べやすくなります。
洋室にしても決まらない部屋には、何が残っているのか
床をフローリングに替えたのに反応が変わらない部屋には、共通するものがあります。
- 押入れがそのまま残っている——中段と枕棚があると、内見した人には和室のままに見えます
- 襖と鴨居が和室仕様のまま——床だけが変わり、目線の高さが変わっていません
- 照明が電球色の丸い一灯だけ——写真が暗くなり、掲載写真の段階で候補から外れます
洋室化は「床の工事」ではなく「部屋の見え方を変える工事」です。押入れをクローゼットに替えるところまで含めるかどうかで、結果が分かれます。費用を抑えるために床だけにするなら、その判断で反応がどこまで変わるのかを、期待しすぎないほうが安全です。
洋室化より先に試す手はあるか
あります。そして多くの築古アパートでは、そちらが先です。空室が続いている理由を和室だと決めつける前に、空室の原因を切り分けてください。問い合わせがゼロなのか、内見までは来るのか、内見後に決まらないのかで、打つ手が変わります。
- 問い合わせがゼロ——写真の枚数と明るさ、募集条件、初期費用の総額を見直します
- 内見が入らない——鍵が現地で開けられるかを確認します(鍵が現地対応でないことの機会損失)
- 内見後に決まらない——ここで初めて、部屋そのものの見え方が疑わしくなります
畳の表替えと照明の交換だけで反応が戻る部屋もあります。洋室化は、費用の大きい打ち手のなかでは後ろのほうに置く工事です。
1室から試して、次の募集で比べる
同じ間取りが複数あるアパートなら、1室だけ洋室化して、次の募集で反応を比べるのがいちばん確実です。問い合わせ件数と内見数を残しておけば、2室目以降に同じ費用をかける根拠になります。埼玉県・千葉県西部・栃木県南部の築古アパートでも、同じ建物のなかで和室のままの部屋と洋室化した部屋の差は、募集を1回まわせば見えてきます。
入居中の部屋を先に工事する必要はありません。退去が出たタイミングで、原状回復と一緒に判断するのが、費用効率の良い進め方です(原状回復工事)。

判断の順番
- 空室の原因を切り分ける(問い合わせ/内見/内見後)
- 費用の小さい打ち手を先に試す(写真・照明・鍵・初期費用)
- それでも内見後に決まらないなら、洋室化を検討する
- 見積は「一式」ではなく、5項目の内訳で取る
- 押入れと建具まで含めるかを決める
- 1室で試して、次の募集で反応を比べる
和室が残る築古アパートで空室が続いている場合、原因が部屋にあるのか募集にあるのかは、外から見ただけでは分かりません。判断の材料を揃えるところからご相談いただけます。管理のお問い合わせからお気軽にどうぞ。


