雨漏りの連絡が入ったときオーナーが最初にやること|初動の順番と費用の切り分け
結論からお伝えすると、雨漏りの連絡が入って最初にやるのは工事業者への手配ではなく、「記録を取ること」と「入居者の生活と安全を止めないこと」です。原因を特定しないまま塞ぐと、同じ場所で2回目が来ます。そして雨漏りは、雨が降っているあいだしか見えません。
台風が抜けた翌朝7時、携帯が鳴る。「天井から水が落ちてきています」。1階の和室の照明の脇から、ぽつ、ぽつ、と落ちている。畳の縁が黒く湿っている。バケツを置いてもらって、業者に電話をする。来られるのは明日の午後。その日の昼にはもう雨が上がり、水は止まっていた。翌日に来た業者が屋根に上がり、「今は漏れていないので原因は分かりません」と言って帰る——雨漏りの対応が長引くのは、たいていこの形です。

電話を受けた時点でやること(順番あり)
1. 電話口で5つだけ聞く
現場に行く前に、この5つを聞いておくと調査が一度で済みます。
- どこから落ちているか(天井の中央/壁ぎわ/窓の上/照明の脇)
- いつからか(今日の雨からか、前からシミがあったか)
- 今も落ちているか(止まっているなら、次の雨まで再現しません)
- 風の向きと雨の強さ(横殴りのときだけ入る漏れがあります)
- 電気設備にかかっていないか(照明器具・コンセント・分電盤)
2. 降っているあいだに、写真と動画を撮ってもらう
ここが最重要です。入居者に「落ちている様子を動画で撮って送ってください」とお願いしてください。落ちている位置、量、時刻が分かるだけで、調査の精度がまるで変わります。雨が止まったあとの天井のシミからは、どこから入ったかは分かりません。
3. 電気の危険を先に消す
照明器具の中や分電盤の近くに水が回っている場合は、その回路のブレーカーを落としてもらってください。暗くなる不便より、通電したまま濡れている状態のほうが危険です。判断に迷う濡れ方なら、電気工事業者に確認します。
4. 応急処置と、家財の移動
バケツと養生、そして濡れると困るものを動かしてもらうこと。ここまでを最初の連絡で伝えきると、入居者の不安がかなり下がります。「業者が来るのが明日になります」だけを伝えると、待たされている時間が全部不満になります。いつ・誰が・何をするかを一緒に伝えてください。
5. 原因調査を手配する
雨が続いているうちに来られる人がいれば、それがいちばんです。上がってしまったら、散水で再現する調査を頼むことになります。「とりあえずコーキングを打つ」を先にやると、入口を1か所塞いだだけで、本当の入口が分からなくなります。
費用は誰が負担するのか
ここは判断が分かれるところなので、一般的な整理としてお読みください。
- 建物の不具合による漏水の修繕:一般的には、貸主が修繕する義務を負う範囲とされています
- 使い方に原因がある場合:ベランダの排水口が塞がっていた、窓を開けたままだった、といったケースは切り分けが必要になります
- 入居者の家財が濡れた場合:入居者ご自身の家財保険と、貸主側の賠償責任保険のどちらが使えるかを、それぞれの保険会社に確認します
- 使用できない部分が生じた場合の賃料:一般的には、使用できなくなった部分の割合に応じて賃料が減額されるという定めが民法にあります(2020年4月の改正で明文化)。実際の割合や期間の考え方は事案によって変わるため、減額に応じる・応じないを判断する前に弁護士にご相談ください
そして、費用の切り分けよりも先に手を打ってほしいことがあります。連絡の初動が遅いと、原因が貸主側でなくても関係が悪くなります。雨漏りは、修繕の問題である前に、対応の速さの問題です。
保険は使えるのか
火災保険には風災・雹災などの補償が付いている契約があります。一般的には、台風や強風で屋根材が飛んだ・破損したことが原因で雨漏りが生じた場合は対象になりうる一方、経年劣化そのものは対象外とされています。
判断するのは保険会社です。工事業者が「保険で出ます」と言っても、それは確定ではありません。着工前に必ずご自身で保険会社に連絡し、必要な書類(発生日時・被害箇所の写真・修理見積り)を確認してください。降っているあいだに撮った写真と動画が、ここでも効きます。

2回目を出さないために残す記録
雨漏りは、同じ物件で何年か越しに再発します。そのとき前回の記録が残っているかどうかで、調査の時間と費用が変わります。部屋ごとに、この5つを1枚にまとめて残してください。
- 発生した日と、そのときの天候(風向き・雨の強さ)
- 漏れた位置の写真(できれば降っているあいだの動画)
- 調査の結果(どこから入っていたか)
- やった工事の内容と、施工した会社
- 保険を使ったか、使わなかったか
外まわりの傷みを放置するとどこから壊れていくかは 外壁と屋根の修繕を後回しにすると何が起きるか|築古アパートのオーナーが順番を決める基準 にまとめています。建物が古く、直す範囲が大きくなりそうな場合は 築40年のアパートはリフォームか建て替えか も合わせてご覧ください。
まとめ
雨漏りの初動は、聞く → 撮ってもらう → 電気の危険を消す → 応急と家財の移動 → 原因調査の順です。工事の手配は5番目でかまいません。
今日やることを1つだけ選ぶなら、次の大雨のときに入居者へ何をお願いするかを、あらかじめ決めておいてください。「落ちている様子を動画で撮って送ってください」の一言を先に伝えておけるかどうかで、原因が分かるまでの時間が変わります。責任の切り分けと賃料の扱いは、動く前に専門家にご確認ください。


