売買契約に関する費用は、条文では売主と買主が等しい割合で負担します|築古アパートのオーナーが読む民法558条
結論からお伝えすると、築古アパートの売買契約に関する費用は、別の定めがなければ、売主と買主が等しい割合で負担します。民法558条が定めています。ただし、この条文は、当事者が別に定めればそちらが先に働く性格のものです。実際の費用の分け方は、契約書の条項で決まります。
仮の話です。個人どうしで築古アパートを売買することになり、買主から「売買契約の費用は、折半でいいですよね」と言われました。売主の側は、何が折半の対象なのか、分かりません。条文を順に並べます。
558条の「売買契約に関する費用」には、何が入るのか?
条文は、「売買契約に関する費用」としか書いておらず、項目を並べていません。どの費用がこれに当たるのかは、条文だけでは読み切れません。そのうえで、売買のときに出てくる費用は、別々のルールにまたがっています。
- 売買契約に関する費用:別段の定めがなければ、当事者双方が等しい割合で負担する(民法558条)
- 弁済の費用:別段の意思表示がなければ、債務者の負担。ただし、債権者が住所の移転などで費用を増やしたときは、増えた分は債権者の負担(民法485条)
- 契約書の印紙:課税文書の作成者が納める義務があり、一の課税文書を二以上の者が共同して作成したときは、連帯して納める義務がある(印紙税法3条1項・2項)
- 登記の税:登記等を受ける者が納める義務があり、二人以上あるときは連帯して納付する義務を負う(登録免許税法3条)。所有権の移転の登記なら、登記を受けるのは通常、買主です
仲介会社に払う報酬は、これらとは別で、仲介を頼んだ側と不動産会社との契約で決まります。上限は国の告示で決まっています。詳しくは、アパートを売るときの仲介手数料は、国の告示で上限が決まっています|築古アパートのオーナーが諸費用を4つに分けて読むに書きました。

折半が原則なのに、買主が多く払う形になるのはなぜか?
558条は、別の定めがあれば譲る性格の条文だからです。売買契約書に費用の負担の条項があれば、それが先に働きます。たとえば、登記の費用は買主が負担すると契約書に書かれることが多いようですが、これは契約の定めや慣行であり、558条から出てくる結論ではありません。
弁済の費用(485条)に当たるか、契約に関する費用(558条)に当たるかで、原則が「債務者の負担」と「折半」に分かれます。どちらに当たるのかが条文だけでは読み切れない費用ほど、契約書に項目を書いておく意味があります。
都合の悪いことも書いておきます
- 558条が折半を定めるのは、「売買契約に関する費用」だけです。税金や仲介の報酬は、別のルールで決まります
- 印紙税や登録免許税は、納税義務者が法律で決まっています。当事者どうしで負担を分ける約束をしても、納める義務を負う人が変わるわけではありません。税の扱いは、税理士や税務署にご確認ください
- どの費用が558条に当たるのかは、事案によって見方が分かれます。金額の大きい取引では、司法書士や弁護士へご相談ください

今日できること
- 契約書案の費用負担の条項を探し、印紙、登記、仲介、そのほかの費用が、項目ごとに書かれているかを見る
- 書かれていない項目は、売主、買主、仲介会社のだれが払うかを、メールでも書面でも残す
- 税に関わる項目は、納税義務者がだれかを確かめたうえで、負担の分け方を決める
引渡しの前に生じた家賃の精算は、売買の引渡しの前に生じた家賃は、売主のものです|築古アパートのオーナーが読む民法575条に、代金の支払日の読み方は、売買契約書に代金の支払日が書かれていないとき、引渡しの期限と同じ期限が付いたものと推定されます|築古アパートのオーナーが読む民法573条・574条に書きました。買った年の経費にできる費用は、アパートを買った年に経費になるのは、登記の費用と不動産取得税です|仲介手数料は建物と土地の取得価額へで整理しています。
出典
民法485条・558条、印紙税法3条、登録免許税法3条(e-Gov 法令検索・2026年10月6日時点)。


