築古アパートをペット可にすると何が変わるか|オーナーが決める前に

結論からお伝えすると、築古物件をペット可にして最初に変わるのは、募集の反応ではなく「退去のときの決め事」です。問い合わせが増えることはありますが、それより先に、原状回復をどこまで求めるか、においと傷をどう扱うか、いま住んでいる方にどう伝えるかを決めておかないと、あとから戻せない話になります。

たとえば、こんな場面があります。3月の夕方、築38年のアパートの空室が7か月続いていて、仲介の担当者から電話が入ります。「2階の角部屋、小型犬1匹なら決めたいというお客様がいます。オーナーさんに聞いてもらえますか」。翌日「いいですよ」と返事をすれば、契約は翌週にまとまります。問題が出るのは2年後の退去立会いです。和室の敷居に爪の跡が縦に並んでいて、押し入れの中に前の入居者のときにはなかったにおいが残っている。定規を当てて傷の深さを見ながら、どこまで請求できるのかを立会いの場で考えることになります。

ペット可にする前にオーナーが決める6項目を並べた図。原状回復の範囲、においと傷、頭数と種類、既存入居者への説明、敷金と特約、入居前の写真。

ペット可にすると募集は本当に増えるのか

増えることはありますが、増えないこともあります。ペットを飼っている入居希望者は、探せる部屋が限られているぶん、条件が合えば動きが早い層です。一方で、その層が自分の物件のエリアにどれだけいるかは、物件ごとに違います。

  • 1階・専用庭あり・駐車場ありは、犬を飼う方の希望と重なりやすい
  • 2階以上でエレベーターがない場合、大型犬の希望者からは外れる
  • 猫の可否は犬とは別の話になる。まとめて「ペット可」と出すと、想定していない相談が来る

そして、ペット可にしても他の条件が弱いままなら、空室の理由がそこではなかった、ということもあります。募集が動かない理由の切り分けは、昭和築アパートの空室が埋まらない5つの原因家賃を下げる前に試す4つの手を先に見てから決めたほうが、順番を間違えません。

いちばん変わるのは退去時の原状回復の範囲

ペット可にするというのは、募集条件を1行足すことではなく、「この部屋は、どこまでの状態で返してもらうか」を書き換えることです。ここを決めずに募集を出すと、退去時に判断する材料がありません。

においと傷は「元に戻す」が効きにくい

クロスの張り替えで消える範囲と、消えない範囲があります。においは下地や木部に入ることがあり、その場合は表面をやり直しても残ります。柱・敷居・建具の爪跡は、深さによっては部分補修が難しく、交換の判断になることもあります。

  • クロス・クッションフロアは張り替えで対応しやすい
  • 木部の爪跡、においの染み込みは、表面のやり直しだけでは残ることがある
  • 畳は表替えで済むか、床から見るかで作業量が変わる

金額の目安は物件の状態で大きく変わるので、想像で置かず、数量の入った見積りで2〜3社を比べてください。

募集を出す前に決めること・伝えること

頭数と種類の制限をどう書くか

「ペット可」とだけ出すと、後から相談されたときに断る根拠がありません。募集を出す前に、次の点を文章にしておきます。

  1. 種類(犬のみか、猫も含むか)
  2. 頭数の上限
  3. 大きさの上限をどう表すか(体重か、体高か)
  4. 共用部での扱い(抱きかかえる、廊下で放さない、など)
  5. 途中で増える場合の届出

誰に貸す部屋にするかが決まっていないと、この5行も決まりません。築古アパートは誰に貸すか(入居者層の決め方)を先に整理しておくと、条件がぶれにくくなります。

既存入居者への説明を先に済ませる

途中からペット可に変える場合、いま住んでいる方は「ペット不可の建物」として入居しています。鳴き声やにおい、共用部の使い方について、あとから相談が入ることがあります。

「募集の紙が変わっていたので聞きたいのですが、うちの上の階もそうなるんですか」——こういう連絡が管理側に入ってから考えるより、切り替える前に、掲示や書面で先に伝えておくほうが手間は少なくて済みます。すでに飼っている方がいる場合の扱いも、同じタイミングで決めておきます。

敷金と特約の考え方

ペット可の部屋では、敷金を上乗せしたり、退去時の負担について特約を置いたりする形が使われます。ただし、特約が有効かどうかは書き方と説明の仕方によって変わり、一般的には、内容によって認められないこともあります。ここはオーナーの判断だけで決めず、契約書を作る宅建業者や弁護士に、文言そのものを見てもらってください。「他の物件でこう書いてあったから」で写すと、必要なときに使えないことがあります。

考え方として整理しておくと、判断しやすくなります。

  • 敷金を増やす=入居時のハードルが上がる。決まりやすさとの引き換えになる
  • 特約で退去時に寄せる=入居時は動きやすいが、退去時の話し合いが必要になる
  • どちらにしても、入居時に何を説明したかの記録が残っているかが効いてくる

入居時にいくら積むかは、敷金だけの問題ではありません。初期費用の中身も見直すなら、消毒料は必要か|オーナーが見直す初期費用の中身もあわせて確認してみてください。

ペット可への切り替えで、あとから戻しにくい部分と先に決めておく部分を左右に並べて比べた図。

戻せない部分がどこかを先に見ておく

ペット可は、一度出して入居が付くと、その方が住んでいる間は元に戻せません。次の募集で「やっぱり不可」に戻すことはできますが、そのときには室内の状態が変わっている可能性があります。

  • 決めてよい部屋と、そうでない部屋を分ける(1階だけ、この号室だけ、という形も取れる)
  • 入居前の室内を、日付の分かる形で写真に残す
  • 戻せない範囲(木部・下地・においの入りやすい場所)を、貸す前に把握しておく

まとめ

ペット可は、募集の間口を広げる手であると同時に、退去時の決め事を増やす手です。反応が出るかどうかはエリアと部屋次第で、決め事のほうは、出した瞬間から確実に増えます。埼玉・千葉県西部・栃木県南部の築古アパートでも、同じ築年数で判断が分かれるところです。

今日やることを1つだけ選ぶなら、募集条件を変える前に「種類・頭数・大きさ・共用部・届出」の5行を紙に書き出してください。ここが書けないうちは、まだ募集を出す段階ではありません。書き出したうえで、敷金と特約の文言については、契約書を作る宅建業者や弁護士に必ず確認してください。

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