築古アパートを家具家電付きにする効果と、あとから出る費用
結論からお伝えすると、家具家電付きにして効くのは家賃ではなく、入居者から見た「引っ越しの初期費用」です。そのぶん決まりやすくなることはありますが、置いた日から故障対応と処分の責任がオーナー側に移ります。付けるかどうかは、買う費用よりも、この2つを引き受けられるかで決めたほうが後悔が少なくなります。
たとえば、こんな場面があります。5月の連休が明けて、繁忙期の波が引いたあとの1K。3月に1件あった内見から、2か月間なにも動いていません。仲介の担当者に電話をすると、「このエリア、いま動いているのは短期の方が多いです。冷蔵庫と洗濯機が付いていれば、すぐ入れる人に出せます」と言われます。翌週に中古の冷蔵庫と洗濯機を入れ、募集図面を差し替えると、その月のうちに申し込みが入ります。次に電話が鳴るのは1年後の日曜日です。「洗濯機が回らないんですが、どうすればいいですか」——この一本から、家具家電付きの本当の運用が始まります。

家具家電付きにすると入居は決まりやすくなるのか
決まりやすくなる場合はあります。ただし理由は「便利だから」ではなく、入居者が引っ越しの日に用意するお金が減るからです。冷蔵庫・洗濯機・電子レンジ・カーテン・照明をゼロから買うのと、初日からそこにあるのとでは、動き出すまでのハードルが違います。
逆に、次のような部屋では効きにくくなります。
- ファミリー向けで、入居者が自分の家財を持っている
- もともと家電を持っている社会人が中心のエリア
- そもそも内見が入っていない(募集条件より前の段階で止まっている)
内見が入らない状態で家電だけ入れても、見てもらえないものは効きません。順番としては、昭和築アパートの空室が埋まらない5つの原因と家賃を下げる前に試す4つの手を先に確認して、止まっている場所を特定してからのほうが無駄がありません。
貸し出したあとに出てくる3つの負担
1. 故障対応が貸主に回ってくる
部屋に備え付けたものは、入居者の持ち物ではありません。動かなくなったときの連絡先はオーナーか管理会社になります。日曜の夕方に「洗濯機が回らない」と連絡が入れば、修理を手配するか、買い替えるかを決めることになります。
- 連絡が入る→業者や販売店に確認→数日後に訪問、と時間がかかる
- その間、入居者はコインランドリーを使うことになる
- 修理と買い替えのどちらが安いかは、その都度の判断になる
エアコンや給湯器と同じ考え方が必要になる、ということです。設備の入れ替え時期の考え方は給湯器とエアコンはいつ交換するかにまとめてあります。
2. 寿命が来る。しかも入れ替えの時期が重なる
同じタイミングで一式そろえると、傷むタイミングも近くなります。1部屋なら影響は限られますが、複数の部屋で同じことをすると、数年後に同じ月へ支出が集まることがあります。
3. 退去時に処分費が出る
使えなくなった家電は、そのまま捨てられません。冷蔵庫・洗濯機・エアコン・テレビは家電リサイクル法の対象で、収集運搬とリサイクルの費用がかかります。家具も粗大ごみの扱いになります。自治体や品目によって扱いが違うため、金額と手順は自治体の窓口か回収業者に確認してください。
回収できるかは「上乗せ額 × 何か月住むか」で見る
家具家電付きの是非を、感覚で決めないための単純な計算があります。
- 家電と家具をそろえるのに実際にかかった額を出す(中古か新品かで大きく変わります)
- 家具家電付きにすることで、家賃をいくら上乗せできるかを仲介に確認する
- 「上乗せ額 × 12か月」で、何年住んでもらえれば元に戻るかを出す
- そこに、途中の故障対応と、最後の処分費を足す
たとえば月3,000円上乗せできるなら年36,000円です。この金額に対して、そろえた額と、故障1回分と、処分費が何年ぶんにあたるのか。ここが出せないうちは、家具家電付きは「決まりそうな気がする施策」のままです。数字は物件ごとに違うので、ご自身の見積りと仲介から聞いた上乗せ額で計算してください。
お金が残らない構造そのものについては、満室なのにお金が残らない築古アパートもあわせてご覧ください。
入居者層が短くなる方向に寄る
家具家電付きが刺さるのは、身軽に動きたい方です。単身赴任、短期の勤務、学生、家財を持たずに引っ越してくる方。つまり、次に出ていくときも身軽だということです。
- 入居は決まりやすいが、在室期間が短くなる方向に寄ることがある
- 入れ替わりが増えれば、募集と原状回復の回数も増える
- 短期でも回る家賃設定になっているか、先に確かめておく
誰に貸す部屋にするのかが決まっていれば、この判断はぶれません。築古アパートは誰に貸すか(入居者層の決め方)で入居者層を先に決めてから、付ける・付けないを選んでください。

付けるなら、どこまで付けるか
全部そろえる必要はありません。負担の重さと効き目は、品目ごとに違います。
- カーテンレール・照明・カーテンは、壊れにくく処分も軽い
- 冷蔵庫・洗濯機は効き目が大きいぶん、故障と処分の負担も大きい
- ベッド・ソファなどの大型家具は、好みが合わないと逆に断る理由になる
- 付ける場合は、募集図面に「設備」なのか「残置物」なのかをはっきり書いておく
最後の1行は地味ですが重要です。設備として貸すなら故障対応の義務が伴い、残置物として渡すなら扱いが変わります。どちらにするか、契約書にどう書くかは、一般的な整理では判断しきれない部分があるので、契約書を作る宅建業者に確認してください。
まとめ
家具家電付きは、初期費用のハードルを下げて入居を動かす手です。同時に、故障対応・寿命・処分費という3つの宿題を引き受ける決定でもあります。埼玉・千葉県西部・栃木県南部の築古アパートでも、同じ間取りで判断が分かれます。
今日やることを1つだけ選ぶなら、仲介の担当者に「この部屋、家具家電付きにしたら家賃はいくら上乗せできますか」と1本だけ電話で聞いてください。その数字がないと、そろえるかどうかは決められません。そのうえで、設備として貸すか残置物として渡すかの書き方は、契約書を作る宅建業者に確認してください。


