アパートの1室を事務所に使いたいと言われたら|用途変更の確認申請より先に見るのは用途地域です

「1室を事務所として使いたい」「週2回だけ、子ども向けの教室に使わせてほしい」。空室が続いている築古アパートでは、こういう相談が仲介会社から回ってくることがあります。埋まるならありがたい。けれど、あとから役所に指摘されたら困る。判断に迷って、その場で返事を保留したまま数日が過ぎる、というのがよくある形です。

結論からお伝えすると、用途変更で建築確認が要るのは、変更後に「建築基準法6条1項1号の特殊建築物」になる場合だけです。事務所も学習塾も特殊建築物ではないので、この入口はほとんどの場合かかりません。実際に効くのは、確認申請が要らなくても準用される用途地域の制限(法87条2項)のほうです。「確認が要らない=自由に使わせてよい」ではありません。

用途変更で見る順番を6点並べた図。確認が要るのは特殊建築物になるときだけ、数えるのは用途ごとの床面積、用途地域の制限は面積を問わず効くこと、類似の用途に共同住宅がないこと、既存不適格の遡及、完了検査ではなく届出になること。

用途変更の確認申請が要るのは、1つの場合だけです

建築基準法87条1項の書き出しを、そのまま読みます。

建築物の用途を変更して第六条第一項第一号の特殊建築物のいずれかとする場合(当該用途の変更が政令で指定する類似の用途相互間におけるものである場合を除く。)においては、同条(中略)の規定を準用する。

準用されるのは6条、つまり建築確認です。条件は2つあります。①変更後の用途が別表第一(い)欄に並ぶ用途であること、②その用途に供する部分の床面積の合計が200平方メートルを超えること。(い)欄に並んでいるのは、劇場・映画館・病院・ホテル・共同住宅・学校・百貨店・倉庫・自動車車庫などです。

事務所は、別表第一(い)欄にも、法2条2号の特殊建築物の列挙にもありません。学習塾も同じです。法2条2号の「学校」には専修学校と各種学校が含まれますが、認可を受けていない塾はここに入りません。(い)欄(三)項に類するものを定めた施行令115条の3第2号を見ても、並んでいるのは博物館・美術館・図書館・ボーリング場・スキー場・スケート場・水泳場・スポーツの練習場で、塾はありません。

したがって、アパートの1室を事務所や学習塾として使わせる場合、87条1項の確認申請は原則としてかかりません。

数えるのは建物全体ではなく「その用途に供する部分」です

もう1つ、読み間違えやすいところがあります。200平方メートルは建物の延べ面積ではなく、「その用途に供する部分の床面積の合計」です。

たとえば延べ240平方メートルのアパートの1室(25平方メートル)を別の用途に変えたとき、変更後のその用途の部分は25平方メートルです。残りは共同住宅のままです。ここで200平方メートルを超えているのは共同住宅の側であって、新しい用途の側ではありません。用途ごとに数える、というのが条文の書き方です。

ただし複数の部屋を同じ用途に変えていくと、その用途の合計が育ちます。1室ずつ許していった結果、あるとき線を越える。この形は、その都度の判断では気づけません。用途を変えた部屋の面積は、1枚の表にして残しておいてください。

用途変更のとき、完了検査はありません

確認が要る規模になった場合の話です。87条1項の後段に、こういう読み替えが書かれています。

第七条第一項中「建築主事等の検査(中略)を申請しなければならない」とあるのは、「建築主事等(中略)に届け出なければならない」と読み替えるものとする。

通常の工事なら、完了したときは完了検査を申請し、検査済証の交付を受けます。ところが用途変更では、工事完了後にするのは届出です。検査に来て、済証をくれる制度ではありません。

ここは実務に効きます。用途変更をした部分について、あとから「適法だった」と示す紙が検査済証の形では残らないということです。届出の控えと、確認済証と、設計図書を一式にして保管しておかないと、売却や融資のときに説明できなくなります。書類が手元にないときの探し方はアパートの図面と確認済証が手元にないとき|築古アパートのオーナーが役所と設計事務所を当たる順番にまとめてあります。

「類似の用途」に共同住宅は入っていません

87条1項のかっこ書きにある「政令で指定する類似の用途相互間」は、施行令137条の18が定めています。11の号に分かれていて、それぞれの中では行き来しても確認が要りません。

  • 一 劇場、映画館、演芸場
  • 二 公会堂、集会場
  • 三 診療所(患者の収容施設があるものに限る。)、児童福祉施設等
  • 四 ホテル、旅館
  • 五 下宿、寄宿舎
  • 六 博物館、美術館、図書館
  • 七 体育館、ボーリング場、スケート場、水泳場、スキー場、ゴルフ練習場、バッティング練習場
  • 八 百貨店、マーケット、その他の物品販売業を営む店舗
  • 九 キャバレー、カフェー、ナイトクラブ、バー
  • 十 待合、料理店
  • 十一 映画スタジオ、テレビスタジオ

この11号のどこにも、共同住宅はありません。5号は「下宿、寄宿舎」で止まっています。つまり共同住宅から寄宿舎へ、寄宿舎から共同住宅へという変更は、類似の用途による除外を使えません。空室をシェアハウスや社員寮のような形に振り替えたいとき、規模によってはここで確認申請が出てきます。

用途を変えずに、貸し方だけを変える形もあります。空室を短期の宿泊に回す場合は、建築基準法ではなく住宅宿泊事業法の側の手続きが先に来ます。そちらの整理は空室を民泊に回す前に見る4つのこと|家主が留守なら管理の委託は法律上の義務ですにあります。

紛らわしいのは、同じ「類似の用途」という言葉が、87条3項では別の政令を指していることです。3項2号の類似の用途は施行令137条の19第1項が定めていて、その3号は「ホテル、旅館、下宿、共同住宅、寄宿舎」。こちらには共同住宅が入っています。言葉が同じでも中身が違うので、条文を引くときは「87条の何項の話か」を先に決めてください。

同じ「類似の用途」という言葉が87条1項と3項で別の政令を指すことを比べた図。1項は施行令137条の18の11の号で共同住宅が入っておらず、3項は施行令137条の19第1項の4つの号で共同住宅が入っている。

確認が要らなくても、用途地域の制限は準用されます

ここがこの記事のいちばん大事なところです。87条2項を読みます。

建築物(次項の建築物を除く。)の用途を変更する場合においては、第四十八条第一項から第十四項まで、第五十一条(中略)の規定(中略)を準用する。

48条は用途地域の制限です。この準用に面積の下限はありません。確認申請が要らない規模であっても、用途地域で建てられない用途にすることはできない、という意味です。

別表第二(い)項は、第一種低層住居専用地域に建築できるものを列挙しています。1号が住宅、3号が共同住宅・寄宿舎・下宿、4号が学校ですが、この4号は「大学、高等専門学校、専修学校及び各種学校を除く」と書かれています。そして事務所は単独では並んでいません。並んでいるのは2号の「住宅で事務所、店舗その他これらに類する用途を兼ねるもののうち政令で定めるもの」、つまり兼用住宅だけです。

兼用住宅の条件は施行令130条の3にあり、延べ面積の2分の1以上を居住の用に供し、かつ事務所や学習塾などに使う部分の床面積の合計が50平方メートルを超えないこと、とされています。この枠と、在宅ワークをどこまで認めるかの線引きは楽器と在宅ワークをどこまで認めるか|築古アパートのオーナーが引く3本の線で扱いました。本記事は、その先にある「建物の用途を変える」側の話です。

既存不適格の建物は、用途変更で条文が戻ってきます

87条3項は、法3条2項によって27条・28条1項3項・29条・30条・35条から35条の3まで・48条などの適用を受けていない建築物、つまり既存不適格の建物について、用途を変更する場合はこれらを準用すると定めています。例外は3つで、①増築・改築・大規模の修繕・大規模の模様替をする場合、②政令指定の類似の用途相互間で、修繕・模様替をしないか大規模でない場合、③48条について用途の変更が政令で定める範囲内である場合、です。

③の「政令で定める範囲」は施行令137条の19第2項にあり、用途変更後の面積の合計が基準時の1.2倍を超えないことなどが並びます。1.2倍という数字が、拡張できる幅の目安になります。

今日やることを1つだけ選ぶなら

自分のアパートの用途地域を1つ調べて、メモに書いておくことです。市町村の都市計画図で確認できます。埼玉・千葉県西部・栃木県南部のいずれも、市のウェブサイトに都市計画情報の閲覧図が置かれています。第一種低層住居専用地域なのか、住居地域なのか、近隣商業地域なのかで、答えられる範囲がまるで変わります。相談が来てから調べると、返事までに1週間かかります。用途地域が分かっていれば、その場で「持ち帰って役所に確認します」と言える段階まで進めます。

出典

実際にその使い方が認められるか、確認申請や届出が要るかは、用途地域・規模・建物の状況で結論が変わります。この記事では判定をしません。建築士または自治体の建築指導課にご確認ください。消防法令の扱いも用途で変わるため、消防署への照会もあわせて必要になります。

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