木造2階建てのアパートは面積を問わず建築確認の対象です|築古オーナーが大規模修繕の前に見る号の分け方
屋根の雨漏りが続いたので、部分補修ではなく全面の葺き替えにしよう、という話になったとします。見積は1棟分。工期は3週間。工務店に「確認申請は要りますか」と聞くと、「木造2階建てのアパートなので要りません」と返ってくることがあります。この答えは、いまは正しくありません。
結論からお伝えすると、木造2階建てのアパートは、面積がいくら小さくても、2025年4月1日以後に着手する大規模の修繕・模様替に建築確認が要ります。そして用途に供する部分の床面積の合計が200平方メートルを超えるアパートは、2025年の改正よりずっと前、2019年6月25日から確認の対象でした。「4号特例がなくなって新しく対象になった」という説明は、200平方メートル以下の小さなアパートにだけ当てはまる話です。

アパートは、面積で号が分かれます
建築基準法6条1項は、建築確認が要る建築物を3つの号に分けています。現在の条文はこうです。
一 別表第一(い)欄に掲げる用途に供する特殊建築物で、その用途に供する部分の床面積の合計が二百平方メートルを超えるもの
二 前号に掲げる建築物を除くほか、二以上の階数を有し、又は延べ面積が二百平方メートルを超える建築物
三 前二号に掲げる建築物を除くほか、都市計画区域若しくは準都市計画区域(中略)内又は都道府県知事が関係市町村の意見を聴いてその区域の全部若しくは一部について指定する区域内における建築物
そして本文は、1号または2号の建築物については「建築」だけでなく「大規模の修繕若しくは大規模の模様替」にも確認を受けなければならないと定めています。3号は「建築」だけです。ここが分かれ目です。
共同住宅は別表第一(い)欄(二)項に入っています。アパートが特殊建築物であることと、その枠がどこまで効くかは木造アパートは200平方メートルから内装制限がかかりますで扱っています。
200平方メートル超のアパートは、2019年から対象でした
1号の「200平方メートルを超えるもの」は、いまの条文にそう書いてあります。では前はどうだったか。e-Gov 法令検索で日付を指定して条文を出すと、こうなります。
- 2019年6月24日時点……「床面積の合計が百平方メートルを超えるもの」
- 2019年6月25日時点……「床面積の合計が二百平方メートルを超えるもの」
つまり1号の線は、2019年6月25日に100平方メートルから200平方メートルへ引き上げられています。緩んだ方向です。それでも200平方メートルという数字は、築古アパートでは普通に届きます。1戸25平方メートルの1Kが8戸あれば200平方メートル。9戸あれば超えます。
200平方メートルを超えるアパートは、2025年の改正を待たずに、ずっと前から大規模の修繕・模様替に確認が要っていました。「去年までは要らなかった」という前提で工期を組んでいたなら、その前提のほうが誤りだったことになります。
2025年4月に変わったのは、200平方メートル以下の側です
2025年3月31日までの6条1項は、号の切り方が違いました。
- 旧2号……木造で3以上の階数を有し、又は延べ面積が500平方メートル、高さが13メートル若しくは軒の高さが9メートルを超えるもの
- 旧3号……木造以外で2以上の階数を有し、又は延べ面積が200平方メートルを超えるもの
- 旧4号……前3号を除く、都市計画区域内などの建築物
木造2階建てで延べ200平方メートル以下のアパートは、旧1号にも旧2号にも旧3号にも入りません。旧4号でした。旧4号は「建築」だけが確認の対象で、大規模の修繕・模様替は対象外です。だから中身をすべてやり直す工事が、確認なしで行われてきました。
2025年4月1日施行の新2号は「二以上の階数を有し、又は延べ面積が二百平方メートルを超える建築物」です。「又は」でつながっているので、階数が2以上あれば、面積は関係ありません。木造2階建てのアパートは、4戸でも6戸でも新2号です。この日から、屋根の葺き替えや外壁の全面やり直しが確認の対象に入りました。
「大規模の修繕」はどこからか
建築基準法2条14号は大規模の修繕を「建築物の主要構造部の一種以上について行う過半の修繕」、15号は大規模の模様替を同じ形で定義しています。主要構造部は同条5号で「壁、柱、床、はり、屋根又は階段」とされ、構造上重要でない間仕切壁・最下階の床などは除かれます。
この線引きの詳細と、どの工事が該当してどの工事が該当しないかは、再建築不可の家は貸せるのか|2025年4月から大規模リフォームに建築確認が要るにまとめてあります。そちらは戸建てを前提にした解説で、この記事は共同住宅の側です。「過半かどうか」の判定は同じ条文で動くので、重ねて読んでいただくのが早いはずです。
10平方メートルの例外は、修繕には効きません
見落とされやすいのが6条2項です。
前項の規定は、防火地域及び準防火地域外において建築物を増築し、改築し、又は移転しようとする場合で、その増築、改築又は移転に係る部分の床面積の合計が十平方メートル以内であるときについては、適用しない。
ここに書かれているのは増築・改築・移転の3つだけです。大規模の修繕と大規模の模様替は入っていません。「10平方メートルまでは確認が要らない」という覚え方をしていると、屋根の葺き替えでそのまま外します。面積の大小で外れる規定ではありません。

確認が要る工事は、着工が最短でも35日ずれます
工期に直接効くのが6条4項です。建築主事等は、1号・2号に係るものは受理した日から35日以内、3号に係るものは7日以内に審査して確認済証を交付しなければならない、とあります。6条6項では、合理的な理由があれば35日の範囲内でさらに延長できます。
そして6条8項。
第一項の確認済証の交付を受けた後でなければ、同項の建築物の建築、大規模の修繕又は大規模の模様替の工事は、することができない。
設計と申請書の準備にかかる時間は、この35日の外側です。「来月から工事」と入居者に告知したあとで確認が要ると分かると、告知をやり直すことになります。工事の内容を決める段階で、設計者に「これは6条1項の何号で、大規模の修繕に当たりますか」と1問だけ聞いておくと、この事故は起きません。
確認が要らない工事でも、条文は守る義務があります
6条は手続の規定です。確認申請が不要でも、建築基準法令の実体規定にまで免除がかかるわけではありません。違反していれば、法9条に基づいて特定行政庁が工事の停止や是正を命じることができます。
築古アパートで特に絡みやすいのが2つあります。1つは施行令114条1項で、長屋または共同住宅の各戸の界壁は準耐火構造とし、小屋裏または天井裏に達せしめなければならない、という定めです。音の話と火の話が別の条文で動くことは民間賃貸の断熱と遮音|国が20%と置いた線を築古アパートのオーナーはどう受けるかで扱いました。
もう1つが法3条2項の既存不適格です。同条3項3号によって、大規模の修繕・模様替に着手した建築物には「適用しない」が効かなくなります。いまの基準に合わせる話が、工事をきっかけに出てくるということです。この点は換気扇が止まったままの部屋をどうするか|築古アパートのオーナーが交換の前に測る窓の面積で触れています。
なお、確認申請には確認済証の副本や図面が要ります。手元にない場合の探し方はアパートの図面と確認済証が手元にないとき|築古アパートのオーナーが役所と設計事務所を当たる順番にまとめてあります。埼玉・千葉県西部・栃木県南部のいずれも、起点は市町村の建築指導課です。
今日やることを1つだけ選ぶなら
自分のアパートが6条1項の何号に当たるかを1行でメモしておくことです。木造で2階建てなら、面積を問わず2号。共同住宅の用途に供する部分の床面積の合計が200平方メートルを超えていれば1号。平屋で200平方メートル以下なら3号です。この1行があるだけで、次に屋根や外壁の見積が出てきたときに「確認が要るかもしれない工事」と「そうでない工事」を、その場で分けられます。工務店に聞かれてから調べると、たいてい着工が1か月遅れます。
出典
- e-Gov 法令検索「建築基準法」6条・2条5号・2条14号・2条15号・9条・3条2項3項、別表第一(2026年9月8日時点、および2019年6月24日・2019年6月25日・2025年3月31日・2025年4月1日の各時点を法令APIの時点指定で確認)https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000201
- e-Gov 法令検索「建築基準法施行令」114条1項(2026年9月8日時点)https://laws.e-gov.go.jp/law/325CO0000000338
号の判定、過半に当たるかどうか、既存不適格の扱いは、建物ごとに結論が変わります。この記事では判定をしません。建築士または自治体の建築指導課にご確認ください。


