公道に出られない敷地のアパートでも、隣の土地を通る権利は民法210条にあります|築古アパートのオーナーが読む210条から213条

結論からお伝えすると、他人の土地に囲まれて公道に出られない敷地に建つアパートでも、オーナーには、その敷地を囲んでいる土地を通る権利が民法210条で認められています。承諾をもらって通る「お願い」ではなく、法律上の権利です。ただし、通る場所は「他の土地のために損害が最も少ない」ところに限られ(211条1項)、通る側は償金を払います(212条)。そして、通行できることと、建物を建て替えられることは別の話です。

仮の話です。築45年の木造アパート。敷地の周りは他人の土地で、公道へは細い通路を通って出ています。その通路は、隣の家の敷地の一部でした。ある日、隣の土地の所有者が代わり、新しい所有者から「ここは通らせない。通るなら通行料を払え」と言われました。入居者の出入りも、ごみ出しも、その通路を使っています。条文は何と言っているのか、順に見ます。

民法210条は、何を認めているか?

  • 1項:他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行することができる
  • 2項:池沼、河川、水路もしくは海を通らなければ公道に至ることができないとき、または崖があって土地と公道とに著しい高低差があるときも、1項と同様とする

通行できるのは、敷地の所有者です。条文が書いているのは「公道に通じない」土地で、すでに別の道で公道に出られる敷地は、この条文の前提から外れます。また、条文は「公道」と書いています。私道にしか面していない敷地をどう読むかは、条文からは分かりません。個別の事情で変わるので、専門家に確かめてください。

袋地で確かめる4点を整理した図

通る場所と幅は、どう決まるのか?

211条は、通行の場所と方法の決め方を定めています。

  1. 1項:通行の場所と方法は、通行権を持つ人のために必要であり、かつ、他の土地のために損害が最も少ないものを選ばなければならない
  2. 2項:通行権を持つ人は、必要があるときは、通路を開設することができる

条文には、通路の幅や、自動車が通れるかどうかの数字は書かれていません。「必要であること」と「損害が最も少ないこと」の2つの条件の釣り合いで決まる、という読み方になります。ここは条文だけでは決まらず、現地の状況と話し合いで決める部分です。

通行料は払わなくてよいのか?

無償ではありません。212条は、通行権を持つ人は、通行する他の土地の損害に対して償金を支払わなければならない、と定めています。ただし書きがあり、通路を開設したことによる損害に対する分を除いて、償金は1年ごとに支払うことができます。

例外もあります。213条1項は、土地を分けたことで公道に通じない土地が生じたときは、その土地の所有者は、他の分割者の土地だけを通行でき、この場合は償金を払わなくてよい、と定めています。土地の一部を譲ったときも同じ扱いです(213条2項)。つまり、もともと袋地だったのか、分けた結果で袋地になったのかで、通れる範囲と償金が変わります。

もともと袋地の場合と分けた結果で袋地になった場合の違いを比べた図

通行権があれば、建て替えもできるのか?

できるとは限りません。民法の通行権と、建築基準法の接道は、別のルールだからです。建築基準法43条1項は、建築物の敷地は、道路に2メートル以上接しなければならないと定めています(自動車専用道路などは道路から除かれます)。民法で隣地を通れても、その通路が建築基準法の道路に2メートル以上つながっていなければ、建て替えの確認は通らない可能性があります。43条2項には、特定行政庁の許可による例外もありますが、許可が出るかは個別に判断されます。

再建築そのものの考え方は再建築不可の物件をどう扱うか|オーナーが貸す・売る・持ち続けるを決める順番に、貸す場合の建築確認の話は再建築不可の家は貸せるのか|2025年4月から大規模リフォームに建築確認が要るにまとめています。水道やガスの管を他人の土地に通す権利は、通行とは別の条文です。私道の掘削承諾書がもらえなくても、水道を引く権利は民法にあります|築古アパートのオーナーが読む213条の2をご覧ください。

都合の悪いことも書いておきます

  • 通行権があっても、隣の所有者が通行を妨げると、実際に通れるようにするまでに時間と費用がかかります。話し合いがまとまらないときは、弁護士に相談してください
  • 通れる幅や、自動車を通せるかは、条文だけでは決まりません。入居者の駐車場や工事車両の出入りを前提にしている物件は、先に確かめておく必要があります
  • 袋地かどうかは、現地の通路の所有者、登記、公図を見ないと判断できません。購入前なら、売主と仲介会社に通行の根拠を書面で出してもらってください

今日できること

  1. 敷地が公道に直接接しているかを、登記簿、公図、現地で確かめる
  2. 入居者が通っている通路の所有者が誰かを、通路の登記簿で調べる
  3. 通路の通行について、書面(覚書や承諾書)が残っているかを探し、なければ作る話を持ちかける日を決める

出典

民法210条・211条・212条・213条、建築基準法43条(e-Gov 法令検索・2026年10月3日時点)。

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