二人入居とルームシェアを認めるか|築古アパートのオーナーが人数より先に決める3点

申込書の同居人欄に、2人目の名前が入っていました。年齢は22歳と23歳。続柄の欄は空白のままで、仲介会社の担当者から「ご友人同士なんですが、二人入居は大丈夫でしょうか」と電話が入ります。返事を待たせているあいだにも、その部屋は3か月空いたままです。

結論からお伝えすると、決めるのは「何人まで認めるか」ではありません。決めるのは契約の形です。①名義を1人にするか2人の連名にするか、②同居人が増えたときに通知でよいのか承諾を要るのか、③1人だけ出ていったときに誰へ請求するのか。この3点を先に決めておけば、人数は後からいくらでも動かせます。逆に、ここを決めないまま「二人入居は不可」とだけ言っていると、断った理由を自分でも説明できなくなります。

二人入居で先に決める4点の図。名義を1人か連名か、同居人の追加は通知か承諾か、退去時に誰へ請求するか、水道が定額かどうか。

ルームシェアは「又貸し」になるのですか?

いちばん多い誤解がここです。「ルームシェア=転貸(又貸し)だから禁止」と考えているオーナーは少なくありません。

民法612条は、こう定めています。

賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。
2 賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。
(民法第612条/出典:e-Gov法令検索「民法」)

条文が問題にしているのは、賃借人が自分では使わずに、第三者へ使わせている状態です。契約者本人がその部屋に住み続けていて、そこに同居人がいる——という形は、一般的にはこれに当たりません。契約者が引っ越したあと友人だけが住み、家賃を集めて契約者に渡している、という形になると転貸に近づきます。

つまり同じ「2人で住んでいる」でも、契約者がそこにいるかどうかで話がまったく変わります。申込の段階で見るべきなのは人数ではなく、誰が契約者として住み続けるのかです。個別の事案でどちらに当たるかは、契約書の書きぶりや実態で判断が分かれますので、揉めそうなときは弁護士や宅地建物取引士に確認してください。

国の標準契約書では、同居人を増やすのは「通知」で足ります

ここが今日いちばんお伝えしたいところです。国土交通省の「賃貸住宅標準契約書」(平成30年3月版・連帯保証人型)を開くと、同居人の追加は承諾事項ではなく通知事項として置かれています。

第8条は禁止・制限される行為を4段階に分けています。

  • 第1項:賃借権の譲渡・転貸 → 貸主の書面による承諾が必要
  • 第3項:別表第1の行為 → 禁止(大音量の演奏、猛獣の飼育など)
  • 第4項:別表第2の行為 → 貸主の書面による承諾が必要(共用部分に物を置く、犬猫の飼育など)
  • 第5項:別表第3の行為 → 貸主へ通知すればよい

そして別表第3の第一号が、これです。

一 頭書(5)に記載する同居人に新たな同居人を追加(出生を除く。)すること。
(賃貸住宅標準契約書 別表第3/出典:国土交通省「『賃貸住宅標準契約書』について」)

承諾ではなく、通知です。国の書式をそのまま使っている契約なら、入居後に同居人が1人増えても、借主は「増えました」と知らせれば足りることになります。「うちは二人入居は許可制です」と口で言っていても、契約書がその形になっていなければ、根拠がありません。

承諾制にしたいときは、契約書のどこを直すのか

国交省は《作成にあたっての注意点》で、直し方まで書いています。

・同居人に親族以外が加わる場合を承諾事項とするときには、別表第3第一号を「頭書(5)に記載する同居人に乙の親族の者を追加(出生を除く。)すること。」に変更し、別表第2に「頭書(5)に記載する同居人に乙の親族以外の者を追加すること。」を追加することとなる。
(同上)

やることは2つだけです。別表第3を「親族なら通知」に絞り、別表第2に「親族以外は承諾」を書き足す。これで、家族が増えるのは知らせるだけ、友人が入ってくるのは相談してから、という形になります。

別表第1から第3は、当事者の合意で変更・追加・削除ができると同契約書に明記されています(別表第1の第六号から第八号を除く)。次に更新や新規募集をかけるとき、この1か所を直しておくだけで済みます。

連名契約と1人契約+同居人を比べた図。連名は双方に全額請求でき片方が出ても契約が続く。1人契約は手続きが軽いが借主が出ると同居人に立場がない。

名義は1人か、連名か

ここが3点目です。二人入居を受けると決めたあと、実務で効いてくるのは名義の形でした。

連名にする(2人とも借主)

  • 滞納が出たとき、どちらにも全額を請求できる
  • 片方が出ていっても契約はもう一方との間で続く
  • 解約や更新の意思確認は2人分いる(手間は増える)
  • 保証会社の審査も2人分になることが多い

1人を借主にして、もう1人を同居人にする

  • 手続きは軽い。申込も審査も1人分
  • 滞納は借主にしか請求できない
  • 借主が出ていくと、残った同居人にはその部屋に住み続ける立場がない。ここがいちばん揉める
  • 同居人が家賃を払い続けていると、追い出したいのに追い出せない状態になりやすい

友人同士なら連名、家族なら1人+同居人。迷ったときの目安はこれで足ります。友人同士は解消の可能性が家族より高く、解消したときに残る側が誰なのかを最初に決めておく必要があるからです。入居審査そのものの考え方は入居審査でオーナーが見る点と、見てはいけない点にまとめています。

築古アパートで二人入居を受けると、何が増えるか

お金の話も先に見ておきます。築古のアパートには、人数が増えると持ち出しが増える仕組みが残っていることがあります。

  1. 水道が定額(1戸あたりいくら)の物件。2人で使えば水量は増えますが、入ってくる額は同じです。まずは検針が戸別か、料金が定額かを確認してください。負担の線引きは敷地内の水道管は誰が直すのかで整理しています
  2. ゴミの量。集積所が小さい物件では、1戸2人になると溢れます
  3. 生活時間のずれによる音。同居人の生活リズムが違うと、上下階からの相談が増えます
  4. 原状回復。標準契約書の別表第5は、経年変化と通常損耗は貸主負担、故意・過失や通常の使用を超える使い方による損耗は借主負担、という一般原則を採っています。人数が増えたこと自体は借主の責任になりません

どれも「だから断る」という話ではありません。受けるなら、水道が定額かどうかだけは先に見ておく。これだけで、後から効いてくる金額の大半は読めます。どんな層に貸すかを先に決める考え方は築古アパートは誰に貸すかで扱っています。

今日、契約書のどこを開くか

  1. 別表第3を見る。「同居人の追加」が入っているなら、いまの契約では通知で足ります
  2. 承諾制にしたいなら、別表第2へ移す。次の契約から直せば十分です
  3. 二人入居を受けるなら、連名か1人+同居人かを決めておく。申込が来てから考えると、返事が遅れて他の部屋に流れます
  4. 水道の料金が定額かを確認する。定額なら、募集条件のほうで調整する

入居者からの苦情が実際に来たときの進め方は、騒音の苦情が来たときの進め方もあわせてご覧ください。

空室が長い部屋ほど、申込を断る判断は重くなります。人数を理由に断る前に、契約書の別表を1枚めくってみてください。断らなくても済む形が、たいていそこに書いてあります。判断に迷う条項があれば、契約書の写しを持って宅地建物取引士や弁護士に相談されることをおすすめします。

出典

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