入居審査でオーナーが見る点と、見てはいけない点|築古アパートで申込を減らさない基準

申込書が1枚、管理会社からFAXかメールで届きます。氏名、勤務先、年収、緊急連絡先。オーナーに回ってくるのはたいていこの1枚だけで、判断のために与えられる時間は長くありません。ここで「なんとなく不安だから見送り」を続けると、築古アパートは決まらなくなります。

結論からお伝えすると、入居審査でオーナーが見るのは2つだけです。①家賃を払い続けられるか、②部屋と近隣の使い方でトラブルにならないか。この2つに直接つながらない情報——年齢・国籍・生活保護の利用・家族構成そのもの——を理由に一律で落とすのは、法律の面でも、埋まりやすさの面でも損になります。

入居審査で見る点と見ない点を並べた図。見るのは収入の安定と部屋の使い方、見ないのは年齢や国籍、聞かないのは信条や病歴などの要配慮個人情報。

審査で本当に見ているのは2つ

「払えるか」は、収入の額そのものよりも安定して入っているかで見ます。年金・給与・事業所得のどれであっても、毎月同じ日に同じくらい入るなら、家賃の支払いは続きます。逆に、年収が高くても入りが不規則な人は滞納の入り口に近い。

「使い方」は、書類ではほぼ分かりません。分かるのは会って話したときの受け答えと、前の住まいをどう出るのかです。ここは仲介会社のほうが情報を持っているので、申込書を見て終わりにせず、案内した担当者に一言聞くほうが早い。

この2つに、次のような項目は含まれません。

  • 年齢が高い/若い
  • 日本国籍でない
  • 生活保護を利用している
  • 単身である/子どもがいる
  • 保証人になってくれる親族がいない

保証会社を通せば審査は終わりですか?

保証会社の審査と、オーナーの判断は別のものです。そのうえで、保証まわりの制度は近年はっきり動いています。ここを知らないまま「昔からの基準」で落としていると、取りこぼしが出ます。

まず、家賃債務保証業者の登録制度があります。国土交通省が公表している登録事業者数は123者(令和8年8月13日時点)です。登録は義務ではないため、登録していない業者もあります。どこの保証会社を使うかを決めるとき、この一覧は判断材料の1つになります。

さらに、2025年(令和7年)10月に施行された改正で、認定家賃債務保証業者という制度ができました。根拠は「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律」(住宅セーフティネット法)第72条です。国土交通大臣が認定する基準の中に、オーナーの実務に直接効く条文があります。

「認定住宅の賃貸借契約を締結しようとする住宅確保要配慮者から家賃債務の保証に係る申込みがあった場合には、正当な理由なくこれを拒まないものであること。」(同条1項1号)

「家賃債務保証業務において、家賃債務の保証に係る申込みをした住宅確保要配慮者に対し、その保証に係る契約の締結の条件として、当該住宅確保要配慮者の親族その他国土交通省令で定める関係者の連絡先に関する情報の提供を求めないものであること。」(同2号)

ここが通説とはっきり食い違うところです。現場では「保証人がいないと不可」「緊急連絡先は親族でないと不可」が長く当たり前でしたが、国が認定する保証会社の基準は逆で、親族の連絡先を条件にしないことが要件になっています。国土交通省の制度概要(認定家賃債務保証業者制度・Q&Aは令和8年6月19日時点)でも、緊急連絡先を親族などの個人に限定せず法人でも可とすること、保証人の設定を条件としないことが認定の基準として整理されています。

保証会社そのものの選び方は家賃保証会社は築古物件でも使えるのかにまとめています。

昔からの入居審査の運用と、国が認定する家賃債務保証業者の基準を比べた図。保証人や親族の連絡先を条件にしないことが認定の基準になっている。

見てはいけない点:申込書で集めてはいけない情報がある

もう一方の「見てはいけない点」は、気持ちの問題ではなく法律の話です。個人情報保護法2条3項は、要配慮個人情報をこう定義しています。

「本人の人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実その他本人に対する不当な差別、偏見その他の不利益が生じないようにその取扱いに特に配慮を要するものとして政令で定める記述等が含まれる個人情報をいう。」

そして同法20条2項は「個人情報取扱事業者は、次に掲げる場合を除くほか、あらかじめ本人の同意を得ないで、要配慮個人情報を取得してはならない」と定めています。さらに17条は利用目的をできる限り特定すること、18条はその範囲を超えて取り扱わないことを求めています。

実務に落とすと、こうなります。

  • 審査に使わない情報は、そもそも申込書で聞かない(信条、持病、出身にかかわること)
  • 聞いた情報を、審査以外に使わない(他の物件の営業に流用しない)
  • 断る理由を、属性で書き残さない。書くなら「支払いの継続性が確認できなかった」など、判断に使った事実で書く

属性で一律に落とすと、築古アパートは何を失うか

法律の話を抜きにしても、築古アパートで「一律で外す」は割に合いません。もともと母集団が小さいからです。駅から遠い、3点ユニット、和室が残っている——条件で絞られたうえに、さらにオーナー側から属性で切ると、候補はほとんど残りません。

国土交通省の相談対応事例集にも、高齢者・障害者・子育て世帯であることを理由に入居を断られたという相談が載っており、住宅確保要配慮者の入居を拒まない住宅(セーフティネット登録住宅)の登録制度が案内されています。断られる側の相談が制度として拾われている、というのが今の状況です。

個別の受け入れ方は、それぞれ別の記事で整理しています。

誰に貸すかを先に決めてから募集する順番は築古アパートは誰に貸すかに書いています。

不安が残る申込は、どう扱えばいいですか?

落とす/通すの二択にしないことです。属性ではなく条件で調整する手があります。

  1. 保証会社のプランを上げる(保証料の負担をどちらが持つかもここで決める)
  2. 緊急連絡先を法人(居住支援法人など)にする。親族でなければ不可、という運用をやめる
  3. 入居後の連絡手段を先に決めておく。電話が通じない相手ほど、初動が遅れて損害が大きくなる
  4. それでも判断に迷うなら、仲介会社に一次情報を追加で取ってもらう。書類を見返しても新しい事実は増えません

今日やることを1つだけ選ぶなら

いま使っている入居申込書を1枚出して、「審査に使っていない欄」に線を引いてください。使っていないのに集めている項目は、リスクを増やすだけで判断の役に立っていません。欄を減らすと、審査で見るべき2つ——払えるか、使い方——が自然に前に出ます。

なお、個別の申込に対する可否の判断や、差別的取扱いに当たるかどうかの法的評価は、弁護士など専門家にご確認ください。この記事は一般的な整理です。対応エリアは埼玉県、千葉県西部、栃木県南部です。

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