外国籍の入居希望者を受け入れるときの実務|築古アパートのオーナーが用意する3つ

結論からお伝えすると、外国籍の入居希望者を受け入れるときに用意するのは、特別なルールではありません。日本語の書類を読み上げるだけで終わらせない形を、契約日の前に作っておくことです。用意するものは3つで足ります。

10月の土曜、勤務先が車で10分という方の内見が入る、という場面があります。日本語はあいさつと簡単なやり取りができる程度で、職場の同僚の方が一緒に来られます。2週間後の契約日、宅建業者が重要事項説明書を読み上げていきます。ご本人は「はい、はい」とうなずきます。質問は出ません。入居から1か月ほどして、ごみ集積所のことで町内会から連絡が入る。分別の袋が違う、という話です。伺って一緒に確認すると、渡していた案内は日本語のA4が1枚だけ。伝わっていなかったのはご本人の問題ではなく、渡し方の問題です。

契約日の前に用意すること6項目。説明のための資料、通訳を頼める相手、連絡の経路、在留カードの確認、ごみの収集日カレンダー、騒音を数字で伝えること。

契約日の前に用意する3つ

  1. 説明のための資料。母語のもの、または「やさしい日本語」で短く書いたもの。文章より、間取り図やカレンダーに書き込んだ図のほうが伝わります
  2. 通訳できる相手。保証会社の多言語窓口、自治体の相談窓口、勤務先のご担当者など。誰に頼めるかを先に決めておきます
  3. 連絡の経路。設備の不具合、家賃、近隣のこと。それぞれ誰に、どの手段(電話かメッセージアプリか)で伝えるかを決めておきます

勤務先が近いことを理由に部屋を探される方は、仕事の前後に内見されることがあります。鍵の受け渡しに時間がかかると、その分だけ機会を落とします。築古物件で「鍵が現地対応でない」ことがどれだけ機会損失になるか もあわせてご覧ください。

在留カードは何を確認するのか

本人確認としてお願いするのは、次の3点です。

  • 氏名と生年月日が、申込書の記載と合っているか
  • 在留期間の満了日
  • コピーをいただき、満了日を控えておく(更新の時期にご連絡できるようにするため)

ここから先、在留資格の種類ごとの扱いや入管の手続きについては、オーナーが判断する話ではありません。疑問が出たら行政書士や自治体の窓口にご相談ください。契約の期間と在留期間の関係をどう書くかも、宅建業者に確認してください。

契約の説明は、どこまでやれば伝わったことになるのか

読み上げて、うなずいていただいて終わり、では伝わったことになりません。これは日本語が母語の方でも同じです。分量が多い書面を一度聞いただけで頭に残る人は、そういません。

やり方は、項目を絞ることです。全部を伝えようとせず、先に伝わっていないと困る5つに絞って、別紙にします。

  1. 家賃を、いつまでに、どの方法で払うか
  2. 契約の期間と、更新のときにすること
  3. 退去するときは、いつまでに連絡するか
  4. してはいけないこと(又貸し、届け出のない同居、ペットなど、その部屋で決めていること)
  5. 困ったときの連絡先(誰に、どの手段で)

そのうえで、「では、水が止まったときは誰に連絡しますか」と聞き返していただきます。答えが返ってくれば伝わっています。

ここには、オーナー側で抱えきれない部分もあります。翻訳した資料の正確さは、こちらでは保証できません。契約の効力がどの書面にあるのか、翻訳文をどう位置づけるのかは、宅建業者や弁護士に確認したうえで進めてください。良かれと思って自分で訳した文を差し替えるのは避けてください。

ごみ出しと騒音は、文化の違いではなく説明不足として扱う

ごみの分別と収集日は市区町村ごとに決まりが違います。日本国内で引っ越しただけでも間違えます。ここを出身や性格の話にすると、直す手が出てきません。

  • 自治体の多言語の案内を取り寄せる。ごみの分別表を複数の言語で用意している市区町村があります。窓口に問い合わせてください
  • 収集日のカレンダーを、冷蔵庫に貼れる形で渡す。曜日と絵で分かる形にします
  • 集積所の場所を、地図ではなく現地で一緒に見る。入居の日に3分で終わります
  • 騒音は数字で伝える。「静かに」では伝わりません。「夜10時から朝7時までは、洗濯機と掃除機を使わない」のように、時間と対象を書きます

実際にご連絡が入ったときも、順番は同じです。まず、こちらの伝え方に足りないところがなかったかを見てから、伝え直します。1回で直らなければ、書き方を変えてもう一度です。

母語で対応できる相手を、先に見つけておく

困ったときに間に入ってくれる相手が決まっていれば、その日のうちに片づく用件が増えます。

  • 保証会社。多言語の窓口を持つ会社があります。取り扱いは会社によって違うので、加入前に確認してください。判断の順番は 家賃保証会社は築古物件でも使えるのか|オーナーが加入前に決める6つのこと にまとめました
  • 自治体の外国人相談窓口・国際交流協会。通訳や生活の相談に応じているところがあります
  • 勤務先のご担当者。ただし、勤務先が変わると使えなくなります。ここだけに頼らないでください
伝わらない渡し方と伝わる渡し方の比較図。左は日本語のA4を1枚渡して読み上げ、うなずいたので伝わったと考える。右は5つに絞って別紙にし、聞き返してもらい、時間を数字で書き、自治体の多言語の分別表を渡す。

まとめ

受け入れの準備は、資料・通訳・連絡経路の3つです。どれも、部屋を工事するより先に用意できます。埼玉・千葉県西部・栃木県南部のように、工場や物流の拠点が近い場所では、勤務先までの距離を理由に部屋を選ぶ方がいます。駅からの距離で負けている築古の部屋にとっては、正面から向き合える条件です。

どんな方に貸すかを先に決めてから募集する順番は 築古アパートは誰に貸すか|オーナーが入居者層を決めてから募集する順番 を、部屋そのものの見え方が原因になっているときは 昭和築アパートの空室が埋まらない5つの原因 をご覧ください。

今日やることを1つだけ選ぶなら、物件のある市区町村のホームページで、ごみの分別案内が何語で出ているかを調べて、印刷できるページを控えておいてください。次の入居のときに、渡すものが1枚増えます。

契約書や重要事項説明の書き方、翻訳文の扱い、在留期間と契約期間の関係については、宅建業者・弁護士・行政書士など、それぞれの専門家にご確認ください。

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