隣り合う2筆の土地は、6つの場合には合筆できません|築古アパートのオーナーが読む不動産登記法41条
結論からお伝えすると、隣り合う2筆の土地を登記上1筆にする「合筆」は、不動産登記法41条の6つの場合には登記できません。築古アパートのオーナーがいちばん引っかかりやすいのは、土地に抵当権(借入の担保)が付いているときです。申請の前に、両方の土地の登記事項証明書を並べて、6つを1つずつ確かめるのが近道です。
たとえば、アパートの敷地が2筆にまたがっていて、売却や建て替えの前に「1筆にまとめておきましょう」と言われた場面です。ところが、片方の土地の乙区には抵当権の行があり、もう片方には何も載っていない。この状態では、登記官は合筆の登記をすることができません。そこで止まる場面です。
合筆とは、どんな登記ですか?
土地は、登記の上では「筆」という単位で数えます。登記所は、一筆の土地ごとに地番を付けます(不動産登記法35条)。合筆は、2つ以上の筆を1つの筆にする登記で、分筆の反対です。
- 申請できるのは、表題部所有者か所有権の登記名義人だけです(不動産登記法39条1項)。賃借人や管理会社は、申請人になれません
- 地目の変更は変更から1か月以内(37条)、土地が滅失したときは滅失から1か月以内(42条)に申請する義務があります。一方、合筆の条文(39条から41条)には、申請の期限の定めがありません
- 筆の数と、建築基準法でいう「敷地」は別の考え方です。敷地は、1つの建築物(または用途上不可分の建築物)がある一団の土地を指します(建築基準法施行令1条1号)。敷地の一部だけを売る場面は、敷地の一部だけを売ると、残ったアパートが建蔽率を超えることがあります|築古アパートのオーナーが読む分筆の登記と建築基準法に書いています

合筆ができない6つの場合は、何ですか?
不動産登記法41条は、次の6つの合筆の登記を「することができない」と定めています。
- 相互に接続していない土地(1号):間に別の土地をはさんでいる2筆は、合筆できません
- 地目または地番区域が違う土地(2号):たとえば宅地と畑です。実際は宅地になっているのに登記の地目が古いままなら、先に地目の変更登記が要ります(37条)
- 表題部所有者または所有権の登記名義人が違う土地(3号):名義人が別なら、売買や相続などで名義をそろえてからです
- 名義人は同じでも持分が違う土地(4号):2人の共有でも、片方が2分の1ずつ、もう片方が3分の2と3分の1なら、合筆できません
- 所有権の登記がない土地と、ある土地(5号):甲区に所有権の登記がない土地は、相手にできません
- 所有権以外の権利に関する登記がある土地(6号):乙区に抵当権や地上権、賃借権などの登記がある土地です。ただし法務省令が定める例外があります(次の見出し)
築古アパートの敷地で出やすいのは、3号と4号(親から相続した持分がそろっていない)、6号(昔の借入の抵当権が残っている)です。登記簿の乙区の読み方は、登記簿の乙区は、権利の種類と順位と数字の3つを順に読みます|築古アパートのオーナーが読む不動産登記法59条と83条で書いています。
借入が残るアパートの敷地は、合筆できませんか?
抵当権があるだけで、いつも合筆できないわけではありません。6号のかっこ書きを受けて、不動産登記規則105条が、合筆後の土地の登記記録に登記できる権利を4つ挙げています。
- 承役地についてする地役権の登記(1号)
- 担保権の登記のうち、登記の目的、申請の受付の年月日、受付番号、登記原因、その日付の5つがすべて同じもの(2号)
- 信託の登記で、法97条1項各号の登記事項が同じもの(3号)
- 鉱害賠償登録に関する登記で、登録番号が同じもの(4号)
築古アパートで関係しやすいのは、2号です。受付番号は申請ごとに付く番号なので、同じ申請で2筆の両方に付けた共同担保は、一般的にはこの例外に当たります。この場合、合筆後は、登記官がその抵当権が合筆後の土地の全部に関するものである旨を付記登記で記録します(不動産登記規則107条6項)。
逆に、片方の土地にしか抵当権がない場合や、あとから追加で付けた担保で受付の年月日・番号が違う場合は、5つがそろわないため、この例外に当たらないと読めます。分筆には、権利者の承諾で権利を一方の土地にだけ残す仕組みがあります(不動産登記法40条)が、合筆の条文(41条)には承諾で例外を認める定めがありません。返済が終わっているなら、抵当権の抹消の登記を先に済ませるのが筋です。地役権が付いた土地の読み方は、隣の土地を通って出入りしているアパートは、地役権の登記があるかで売るときの話が変わります|築古アパートのオーナーが読む民法280条と283条に書いています。
申請までは、どんな順番で進めればよいですか?
- 両方の土地の登記事項証明書を取る。誰でも手数料を納めて請求できます(不動産登記法119条1項)。地番ごとに1通ずつ取ります
- 6つの場合に、1つずつ当てはめる。甲区(所有者と持分)と乙区(抵当権など)、表題部(地目と地番区域)を見ます
- 足りない登記を先に済ませる。地目の変更、所有権の移転、抵当権の抹消などです。権利の登記は司法書士、表示の登記は土地家屋調査士の領分です
- 所有者が申請する。所有権の登記がある土地の合筆では、登記識別情報の提供が要ります(不動産登記法22条、不動産登記令8条1項1号)。合筆に係る土地のうち、いずれか一筆の所有権の登記名義人の登記識別情報で足ります(不動産登記令8条2項1号)。提供できない正当な理由があるときは、登記所から事前通知が届きます(不動産登記法23条1項)。表示に関する登記の申請手続の代理は、土地家屋調査士の業務です(土地家屋調査士法3条1項2号)
- 登記が終わったら、登記事項証明書を取り直す。合筆される側の土地の登記記録は閉鎖され、残る側の土地の登記記録に合筆後の表示がまとめて記録されます(不動産登記規則106条)
申請の前に、登記簿の所有者の住所が今の住所のままかも確かめておきましょう。所有権の登記名義人は、住所が変わったら2年以内に変更の登記を申請する義務があります(不動産登記法76条の5)。詳しくは、大家さんの住所変更登記が2026年4月から義務に|登記簿の住所が古いままの人がやることに書かれています。

都合の悪いことも書いておきます
- この記事は、条文の6つの場合を並べたものです。個別の土地が合筆できるかは、登記簿の記載ひとつで結論が変わります。土地家屋調査士か、法務局の窓口で確認してください。条文だけでは分からない扱い(通達や先例)もあります
- 合筆したあと、一部だけを売りたくなったら、改めて分筆が要ります。分筆の申請も所有者がします(不動産登記法39条1項)。売る予定があるなら、合筆しない選択もあります
- この記事は、手数料や費用を扱っていません。条文で確かめられていないため、土地家屋調査士と司法書士にそれぞれ見積りを取ってください
今日やることを1つだけ選ぶなら
敷地になっている土地の地番ごとに登記事項証明書を1通ずつ取り、「接続・地目・名義人・持分・所有権の登記・乙区」の6つを紙に書いて、○と×を付けてください。×が付いた項目が、先に片づけることのリストになります。乙区に抵当権の行が残っているなら、銀行に残高を聞くところから始めます。
出典
- 不動産登記法22条・23条・35条・37条・39条・40条・41条・42条・76条の5・119条(e-Gov 法令検索・2026年10月18日時点)
- 不動産登記規則105条・106条・107条(同上)
- 不動産登記令8条(同上)
- 建築基準法施行令1条1号、土地家屋調査士法3条(同上)


