登記簿の乙区は、権利の種類と順位と数字の3つを順に読みます|築古アパートのオーナーが読む不動産登記法59条と83条
結論からお伝えすると、登記簿の乙区は、所有権以外の権利がいつ、誰のために付けられたかを並べた欄で、見るところは「権利の種類」「順位」「数字」の3つです。築古アパートの乙区には、昔の借入の抵当権が載っていることがあります。条文が登記事項として何を挙げているかを知っておくと、証明書の読み違いを防げます。
たとえば、親から築40年のアパートを相続して、法務局で登記事項証明書を取ったとします。甲区には自分の名前が載っていた。ところが乙区には「抵当権設定」の行が2つあり、片方には「根抵当権設定」と書かれている。これは借金が残っているということなのか、もう終わった話なのか。そこで迷う場面です。
乙区には、何が載っているのですか?
登記記録は、表題部と権利部に分けて作られます(不動産登記法12条)。権利部はさらに甲区と乙区に分かれ、甲区には所有権に関する登記、乙区には所有権以外の権利に関する登記が記録されます(不動産登記規則4条4項)。
登記できる所有権以外の権利は、法律で決まっています(不動産登記法3条)。
- 地上権・永小作権・地役権
- 先取特権・質権・抵当権
- 賃借権・配偶者居住権・採石権
築古アパートで見かけやすいのは、抵当権(銀行などの借入の担保)です。隣の土地を通る通路があれば隣の土地を通って出入りしているアパートは、地役権の登記があるかで売るときの話が変わります|築古アパートのオーナーが読む民法280条と283条のように、地役権が載ることもあります。

乙区の記載は、どう読めばよいですか?
1つの行は、ばらばらに読まず、次の3つを順に見ます。
- 登記の目的(何の権利か):「抵当権設定」「根抵当権設定」「地役権設定」などと書かれます。登記事項の最初に挙がっているのが登記の目的です(不動産登記法59条1号)
- 順位番号と受付の日(何番目か):同じ不動産に登記した権利の順位は、原則として登記の前後で決まります(不動産登記法4条1項)。登記官は、記録した順序を示す番号を順位番号として記録します(不動産登記規則147条1項)。受付の年月日と受付番号も登記事項です(不動産登記法59条2号)
- 権利者その他の事項(誰が、いくらで):権利者の氏名と住所、登記原因とその日付が載ります(不動産登記法59条3号・4号)。抵当権などの担保権では、さらに債権額と債務者の氏名・住所が登記事項です(不動産登記法83条1項1号・2号)
順位番号は、1番の抵当権より、2番の抵当権のほうが後という見方をします。あとから「付記1号」のような番号がついた登記は、主登記と一体のものとして、主登記と同じ順位になります(不動産登記法4条2項、不動産登記規則148条)。たとえば、債権者の住所変更や、権利の移転がこの形で載ります(不動産登記規則3条)。
抵当権の欄には、何の数字が載っていますか?
数字が載るのは、権利者その他の事項の欄です。抵当権(根抵当権を除く)の登記事項は、主なものは次のとおりです(不動産登記法59条・83条・88条1項)。
- 債権額と債務者の氏名・住所
- 利息に関する定めがあるときは、その定め
- 損害の賠償額の定めがあるときは、その定め(民法375条2項に規定する損害賠償額)
- 債権に付けた条件があるときは、その条件
ここで押さえておきたいのは、条文が登記事項として挙げているのは、債権額であって、いまの返済の残りではないということです。20年前に1,500万円を借りて設定した抵当権なら、乙区に載るのは設定のときの額です。残りの返済額は、登記簿を見ても分かりません。銀行に聞く必要があります。
根抵当権(極度額の範囲で、増減する借入をまとめて担保する権利)は、載る事項が違います。債権額の代わりに、担保すべき債権の範囲と極度額が載り、元本が確定する日の定めがあればその日も載ります(不動産登記法88条2項)。根抵当権が出てきたときは、根抵当権の付いたアパートを借り換えても、新しい銀行に根抵当権は移りません|築古アパートのオーナーが読む民法398条の7と398条の19で、返済が終わっても残る理由を書いています。
1つの抵当権が、土地と建物のように2つ以上の不動産を担保しているときは、その不動産が登記事項になります(不動産登記法83条1項4号)。登記官は、これを明らかにするために共同担保目録を作ることができ、その抵当権の登記の末尾に目録の記号と番号が記録されます(同条2項、不動産登記規則166条・167条)。目録の記号が付いていたら、複数の不動産が一緒に担保に入っている印です。
消えた権利は、どう見分けますか?
返済が終わった抵当権でも、抹消の登記がされるまでは乙区に残ります。登記官は、権利の登記を抹消するとき、抹消の登記をするとともに、抹消した登記に抹消を示す記号を記録します(不動産登記規則152条1項)。権利の変更の登記では、変更前の事項にも抹消を示す記号が付きます(不動産登記規則150条)。
つまり、乙区に「抵当権設定」の行があっても、その行に抹消の記号が付いていれば、現在効力のある権利ではありません。記号の付いていない行が、いま効力のある登記です。ただし変更の登記があるときは、記号が付いていない変更後の記載のほうを読みます。売買の決済前に、売主の抵当権が抹消されているかを見る方法は、買う不動産に契約の内容に適合しない抵当権の登記があるとき、買主は代金の支払を拒めます|築古アパートのオーナーが読む民法577条に書いています。
登記事項証明書は、誰でも取れますか?
はい。何人も、手数料を納めて登記事項証明書の交付を請求できます(不動産登記法119条1項)。自分の物件に限らず、隣の土地や買おうとしている物件のものも取れます。
- 手数料は、書面で請求するとき1通600円です。1通が50枚を超えると、50枚までごとに100円が加わります(登記手数料令2条1項)。オンラインで請求する場合の額は別に定められています
- 請求に係る不動産の所在地を管轄する登記所以外の登記所にも、請求できます(不動産登記法119条5項。法務省令で定める場合を除く)

都合の悪いことも書いておきます
- 乙区に載るのは、登記された権利だけです。口約束の通行や、登記していない賃借権は載りません。賃借権は登記できる権利ですが(不動産登記法3条8号)、登記がなければ乙区には出てこないため、乙区を見ても入居者の有無は分かりません。競売になったときの入居者の扱いは、抵当権より後に入った入居者でも、競売のあと6か月は明け渡さなくてよいとされています|築古アパートのオーナーが読む民法395条に書いています
- 登記の内容は、現在の借入の状況と一致するとは限りません。前に書いたとおり、載るのは債権額で、返済の残りではありません。残りは銀行に確認してください
- 行ごとに、「付記」の登記が重なっていると、読む順番が複雑になります。権利の変更や移転があったときは、司法書士に読み方を確認すると安全です。権利の有効・無効や、抹消できるかの判断は、司法書士や弁護士の領分です
今日やることを1つだけ選ぶなら
持っているアパートの登記事項証明書を1通取り、乙区の行のうち、抹消の記号が付いていないものだけに印を付けてください。そのうえで、各行の「登記の目的」と「債権額(根抵当権なら極度額)」を紙に書き出します。借入が残っているか分からない行は、銀行に残高と、抹消の予定を電話で聞くところから始めます。
出典
- 不動産登記法2条・3条・4条・12条・59条・83条・88条・119条(e-Gov 法令検索・2026年10月17日時点)
- 不動産登記規則3条・4条・147条・148条・150条・152条・166条・167条(同上)
- 登記手数料令2条1項(同上)


