基礎のひび割れは0.3ミリか0.5ミリか|築古アパートのオーナーが幅より先に見る3つ
結論からお伝えすると、基礎のひび割れは、幅よりも先に「さび汁」「白華(はっか)」「鉄筋の露出」を見ます。この3つのどれかがあれば、幅が0.3ミリでも0.5ミリでも、そこから先はオーナーの判断ではなく建築士の仕事です。逆に、この3つがなくて幅も細いなら、その日のうちに工事を決める必要はありません。定規を当てて日付入りで写真を撮り、次に見る日を決める。まずはそれで足ります。
草を刈っていて、基礎の立ち上がりに細い線が1本見えた。スマホで撮って調べてみると、「0.3ミリを超えたら危険」と書いてある記事と、「0.5ミリ以上」と書いてある記事が、どちらも検索結果の上のほうに並んでいる。数字が2つあると、どちらを信じればいいのか決められません。ここで止まってしまうオーナーは多いです。

0.3ミリと0.5ミリは、どちらも正しい。目的が違うだけです
先に答えを言うと、0.5ミリは「国が調査で記録すると決めた線」、0.3ミリは「業界が補修を考え始める線」です。片方が間違っているのではなく、測っている目的が違います。
0.5ミリのほうは、国土交通省の既存住宅状況調査方法基準(平成29年2月3日国土交通省告示第82号)に書かれています。中古住宅を売り買いするときに建築士が行う、いわゆるインスペクションの調査方法を定めた告示です。木造の住宅について、基礎(立ち上がり部分を含む)で確認する劣化事象が、次の5つと決められています。
- 幅0.5ミリメートル以上のひび割れ(計測または目視)
- 深さ20ミリメートル以上の欠損(計測または目視)
- コンクリートの著しい劣化(打診または目視)
- さび汁を伴うひび割れまたは欠損(白華を含む)(目視)
- 鉄筋の露出(計測または目視)
この5つを並べて読むと、幅の話は5つのうちの1つでしかないことが分かります。さび汁と白華は、幅の数字がないまま並んでいます。幅が細くても、そこから茶色い汁や白い粉が出ていれば、それだけで記録される事象だということです。
なぜ「さび汁」と「白華」が幅と同じ重さで並んでいるのか
基礎はコンクリートの中に鉄筋が入っています。コンクリートはもともとアルカリ性で、その中にいる限り鉄筋はさびません。ところが、ひび割れから雨水と酸素が入ると、そこだけ環境が変わって鉄筋がさび始めます。さびた鉄筋はふくらむので、内側からコンクリートを押し広げ、ひび割れがさらに広がる。この繰り返しになります(出典:リショップナビ「基礎のひび割れの原因|建物への影響を解説」2025年12月16日更新)。
さび汁は「もう中で始まっています」という合図です。白華は、水がコンクリートの中を通り抜けて外に出てきた跡なので、「水の通り道ができています」という合図になります。幅を測るより先に、色を見てください。
0.3ミリという数字はどこから来ているのか
0.3ミリは、外壁のひび割れを分類するときによく使われる線です。表面の塗膜だけが割れた「ヘアークラック」と、内部まで届いた「構造クラック」を分けるとき、構造クラックの目安は幅0.3ミリを超えて深さ4〜5ミリ以上とされています。また、0.3ミリを超えると雨水が入りやすくなり、鉄筋が腐食するリスクが高くなる、とも説明されています(出典:リショップナビ「外壁のひび割れはすぐ補修すべき?クラックの原因や判断の目安を解説」2025年12月15日更新)。
つまり0.3ミリは「手を打ち始める目安」、0.5ミリは「第三者が調査したときに記録として残る線」です。オーナーとして先に動くなら0.3ミリのほうを持っておくと、判断が早くなります。

基礎だけを見ていても分かりません
同じ告示には、床と柱についても数字が置かれています。
- 床の傾き……3メートル程度離れた2点を結ぶ直線が、水平面に対して1000分の6以上傾いていること。3メートルで18ミリの高低差です
- 柱の傾き……2メートル程度以上の長さで、鉛直線に対して1000分の6以上傾いていること
基礎のひび割れが、乾燥による表面だけのものなのか、建物全体が不揃いに沈んでいるサインなのかは、基礎の前にしゃがんでいるだけでは分かりません。部屋の中で床の傾きを見て、はじめて両方がつながります。空室のあいだに、ビー玉ではなく水平器で床を測っておくと、次に基礎の線を見たときの判断材料になります。
誰に見てもらえばいいのですか?
告示に基づく既存住宅状況調査は、建築士(一級建築士・二級建築士・木造建築士)で、既存住宅状況調査技術者の講習を修了した人が行うと定められています。理由も告示の解説に書かれていて、「表面的な劣化事象等から構造・防水に関する劣化や不具合の存在を推定することが求められており、建築物の構造、材料等について十分な知識を有する必要があるため」とされています。
写真をSNSに上げて「これは大丈夫でしょうか」と聞いても、答えは出ません。推定するには、その建物の構造と材料を知っている必要があるからです。この記事も含めて、ひび割れの写真だけで建物の安全性を判定することはできません。耐震性そのものが心配なときは、建築士と、お住まいの自治体の耐震診断の窓口にご相談ください。
費用はどれくらいかかりますか?
基礎の補修は、先に条件を割らないと金額が出ません。同じ「ひび割れ」でも、次の4つでは工事の中身がまったく別のものになります。
- 表面の塗膜や仕上げだけが割れている(ヘアークラック)
- 幅0.5ミリ以上、または深さ20ミリ以上の欠損がある
- さび汁・白華・鉄筋の露出がある(中の鉄筋まで進んでいる)
- 床や柱が1000分の6以上傾いている(建物の沈み方を疑う段階)
1と2は、ひび割れを埋めて表面を保護する工事です。参考として、外壁のひび割れを部分的に修理する費用は1箇所につき1〜10万円前後、状態によっては30万円程度とされています(出典:リショップナビ・2025年12月15日更新)。3になると鉄筋の処理が入り、4になると原因が地盤の側にあるため、補修ではなく調査から始まります。見積の前に、自分の物件がこの4つのどこにいるかを決めておくと、話が早く進みます。
記録の残し方で、次の判断が変わります
ひび割れは、幅そのものより「広がっているかどうか」のほうが情報量があります。1回撮っただけでは、それが分かりません。
- ひび割れに定規(コンベックスでも可)を当てて撮る。幅が写真から読めるようにする
- 同じ場所・同じ高さ・同じ向きから撮る。次に比べるときに効きます
- 建物の全景を1枚、そのひび割れが基礎のどこにあるか分かる引きの写真を1枚、合わせて撮る
- 撮影日をファイル名に入れる。年1回、同じ月に見る
外まわりの点検は、ひび割れだけを単独で見るより、ブロック塀の点検や外階段のサビと手すりとまとめて回ったほうが手間が減ります。台風のあとに何をどの順で見るかは台風が来る前に見ておく5か所も参考になります。外壁と屋根の順番の決め方は外壁と屋根の修繕を後回しにすると何が起きるかにまとめています。
今日やることを1つだけ選ぶなら
スマホと、あれば定規を持って、基礎の前にしゃがんでください。やることは、幅を測ることではありません。線の周りに茶色い汁の跡がないか、白い粉が吹いていないか、鉄の棒が見えていないかを見ることです。3つとも無ければ、定規を当てて1枚撮って、今日はそれで終わりです。1つでもあれば、その写真を持って建築士に連絡してください。今日決めるのは、工事の内容ではなく、誰に電話するかだけです。
出典
- 既存住宅状況調査方法基準(平成29年2月3日国土交通省告示第82号、最終改正 令和6年3月)/国土交通省「既存住宅状況調査方法基準の解説」令和6年10月25日 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001840201.pdf
- リショップナビ「外壁のひび割れはすぐ補修すべき?クラックの原因や判断の目安を解説」2025年12月15日更新 https://rehome-navi.com/articles/3134
- リショップナビ「基礎のひび割れの原因|建物への影響を解説」2025年12月16日更新 https://rehome-navi.com/articles/3406


