解約の通知期限が日曜や祝日に当たっても、翌日に延びるのは「慣習がある場合に限り」です|築古アパートのオーナーが読む民法142条
結論からお伝えすると、解約の通知期限の末日が日曜日や祝日に当たっても、期限が自動で翌日に延びるとは限りません。民法142条は、期間の末日が日曜日・祝日などの休日に当たるときに期間が翌日に満了するのは「その日に取引をしない慣習がある場合に限り」と定めています。この条文が賃貸借の解約通知に使えるのか、また、数えているのが「期間」なのか「通知が届く期限」なのかは、契約書の書き方と、通知が相手に届いた日で変わります。
仮の話です。契約書にある解約通知の期限の日が、日曜日に当たりました。入居者は翌日の月曜日に通知を出し、「日曜日は休みなので、翌日でよいはずです」と言っています。大家さんは、期限に遅れたと言えるのか。条文の読み方を整理します。
期間の数え方は、民法のどこに書いてあるか?
- 138条:期間の計算方法は、法令に特別の定めがある場合や、法律行為に別段の定めがある場合を除き、この章の規定に従う(契約書の定めが先に来る)
- 140条:日・週・月・年で期間を定めたときは、初日は算入しない(午前零時から始まるときは別)
- 141条:期間は、末日の終了をもって満了する
- 143条:週・月・年の期間は、暦に従って計算する。最後の月に応当する日がないときは、その月の末日に満了する
- 142条:期間の末日が休日に当たるときは、その日に取引をしない慣習がある場合に限り、期間は翌日に満了する
140条・141条・143条の使い方は、滞納家賃の時効は5年ですが、入居者が援用するまで請求は消えません|築古アパートのオーナーが読む民法166条・145条・152条で、時効を例に書いています。

142条の「慣習がある場合に限り」は、何を求めているか?
条文の言葉をそのまま読みます。「期間の末日が日曜日、国民の祝日に関する法律に規定する休日その他の休日に当たるときは、その日に取引をしない慣習がある場合に限り、期間は、その翌日に満了する」です。
ここで求められているのは、2つのことです。末日が休日に当たっていること。そして、その日に取引をしない慣習があることです。休日に当たっただけでは足りません。
賃貸借の解約通知や退去日に、この慣習があるといえるのかは、条文からは読めません。銀行や役所のように休日は取引をしない相手と、管理会社や入居者のあいだの通知とを、同じに扱えるとは限らないからです。この点は、実際に争いになったときに、事情を見て判断される部分です。
通知は「出した日」ではなく「届いた日」で見る
解約の通知は、出した日ではなく、相手に届いた日から効力が生じます。民法97条1項は、意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる、と定めています。
期間の定めがない建物の賃貸借では、解約の申入れの日から3か月を経過することによって終了します(617条1項2号)。この「申入れの日」も、通知が届いた日で見ます。契約書に「解約は退去の何日前までに通知する」とあるときも、書面を出した日なのか、管理会社に届いた日なのかで、期限の日の扱いが変わります。契約書の文言を、一度、通知を出した日か、届いた日かの目で読み直してください。中途解約の予告期間の考え方は、退去の予告は何か月前か|大家が見る中途解約の条項と、30日分の賃料にあります。

契約書に書いておけば、休日の揉めごとは減らせる
138条は、法律行為に別段の定めがあれば、期間の計算はその定めが先だと書いています。期限の日が休日に当たったときの扱いを、契約書に書いておけば、142条の慣習があるかどうかで争う必要がなくなります。
- 期限の日が休日のときは、その前の営業日までに届くこと、と書く
- または、期限の日が休日のときは、その翌営業日までに届けばよい、と書く
- 通知の方法(書面・メール・LINE)と、受け付ける曜日を書く
どちらにするかは、大家さんの判断です。管理会社に委託しているなら、管理会社の休業日と、通知の受付時間に合わせます。退去日の連絡から引渡しまでの日付の決め方は、退去の連絡が来てから引渡しまでの段取り|築古アパートのオーナーが最初に決める3つの日付にまとめています。
都合の悪いことも書いておきます
- 142条は、休日の扱いを決める条文ですが、通知が届いたかどうかの争いを解決してくれるわけではありません
- 休日の扱いで争いになったとき、どちらが認められるかを断言できる条文は、142条にはありません。慣習の有無は、取引の種類と事情で判断されます
- 契約書に書いても、入居者に一方的に不利な定めは、別の条文で効力が争われることがあります。書き方に迷うときは、弁護士や宅地建物取引士に確かめてください
今日できること
- 手元の賃貸借契約書で、解約通知の条項を開き、「何日前までに」「どの方法で」と書いてあるかを確かめる
- 期限の日が休日に当たったときの扱いが書かれているかを見る。書かれていなければ、次の更新か新規契約のときに1行足す
- 管理会社の休業日と、通知の受付時間を、入居者向けの案内にそろえておく
出典
民法97条・138条・140条から143条・617条(e-Gov 法令検索・2026年10月4日時点)。


