換気扇が止まったままの部屋をどうするか|築古アパートのオーナーが交換の前に測る窓の面積

退去したばかりの1Kで、キッチンの換気扇のスイッチを入れたら、羽根が半周だけ回って止まりました。油で固まった羽根に指をかけると、ぬるりとしたまま動きます。前の入居者は3年住んでいて、途中で「換気扇が回らない」という連絡は一度も来ていません。つまり、この3年、この部屋の換気扇は使われていなかったことになります。

結論からお伝えすると、換気扇を直すかどうかは「使うか使わないか」ではなく、その部屋の窓の面積で決まります。建築基準法は、キッチンに一定以上の窓があれば換気設備を求めていません。逆に、窓がなければ換気設備は必須です。同じ「換気扇が止まっている部屋」でも、片方は設備の好みの話、もう片方は法令の話になります。

換気の義務が分かれる線を5つ並べた図。居室は開口部20分の1、調理室は床面積の10分の1で0.8平方メートルが下限、窓が足りなければ換気設備が必要、火を使わない室は対象外、シックハウス対策は2003年7月から。

まず、法律が求めているものは2つある

建築基準法28条は、居室の採光と換気について定めています。換気に関わるのは2項と3項で、この2つは対象も中身も違います。

  • 28条2項「居室には換気のための窓その他の開口部を設け、その換気に有効な部分の面積は、その居室の床面積に対して、二十分の一以上としなければならない。ただし、政令で定める技術的基準に従つて換気設備を設けた場合においては、この限りでない。」
  • 28条3項「別表第一(い)欄(一)項に掲げる用途に供する特殊建築物の居室又は建築物の調理室、浴室その他の室でかまど、こんろその他火を使用する設備若しくは器具を設けたもの(政令で定めるものを除く。)には、政令で定める技術的基準に従つて、換気設備を設けなければならない。」

2項は居室の話です。6畳(約9.7平方メートル)なら、換気に有効な開口部が約0.49平方メートル以上。ふつうの掃き出し窓が1つあれば足ります。

3項は火を使う部屋の話です。そして「政令で定めるものを除く」というかっこ書きが付いています。この除外に当たるかどうかが、キッチンの換気扇を法令上の必須設備にするかどうかを決めています。

キッチンの換気扇が要らない条件は、政令に数字で書いてある

建築基準法施行令20条の3第1項は、28条3項の適用から外れる室を3つ挙げています。アパートの住戸に関係するのは1号と2号です。

  • 1号:密閉式燃焼器具等以外の「火を使用する設備又は器具」を設けていない室
  • 2号:床面積の合計が100平方メートル以内の住宅または住戸に設けられた調理室で、発熱量の合計が12キロワット以下の火を使用する設備・器具を設けたものに限り、その調理室の床面積の10分の1(0.8平方メートル未満のときは0.8平方メートル)以上の有効開口面積を有する窓その他の開口部を換気上有効に設けたもの

数字を自分の部屋に当てはめます。1Kのキッチンが4.5平方メートルなら、10分の1は0.45平方メートル。0.8平方メートルに満たないので、下限の0.8平方メートルが基準になります。幅60センチ・高さ90センチの窓で0.54平方メートル。これだけでは足りません。

つまり、「キッチンに小窓があるから大丈夫」とは限りません。0.8平方メートルは、幅90センチ・高さ90センチのサッシ1枚ぶんに相当します。築古の1Kで、キッチンの窓がこの大きさある部屋は多くありません。

窓がないキッチンの換気扇は、直すかどうかを選べません

2号の条件を満たさない調理室は、施行令20条の3第2項の「換気設備を設けるべき調理室等」になります。換気設備を設けること自体が求められている部屋なので、換気扇が回らない状態は、設備の劣化ではなく、法令が求める設備が機能していない状態です。次の入居者を入れる前に直す、という判断以外に選択肢がありません。

なお、火を使う器具をまったく置かない部屋は1号で外れます。ガスコンロを撤去して電気の調理器具だけにした住戸をどう扱うかは、コンロの置き方や建物全体の状況で変わりますので、建築士か特定行政庁(市の建築指導課)に確認してください。

換気設備の中身も、政令が場所まで決めている

施行令20条の3第2項1号イは、換気設備の構造を具体的に書いています。よく知られていないのは、給気口と排気口の高さが決められていることです。

  • 給気口は、その室の天井の高さの2分の1以下の高さの位置に設けること(煙突や換気扇等を設ける場合は適当な位置)
  • 排気口は、天井、または天井から下方80センチメートル以内の高さの位置に設けること(煙突・排気フードを有する排気筒を設ける場合は適当な位置)

現場でこれが効いてくるのは、入居者が給気口を塞いでいるときです。冬に寒いからとテープで目張りされた給気口は、築古アパートでよく見ます。排気側だけ回しても、入ってくる空気がなければ量は出ません。退去立会いで給気口の状態を見る理由はここにあります。

浴室やトイレの換気扇は、どちらの話なのか?

浴室に給湯器の追い焚き用のバーナーがない、いわゆる電気給湯・外置き給湯器の浴室は、火を使う器具を置いていないので28条3項の対象外です。トイレも同じです。これらの換気扇が止まっていても、法令違反にはなりません。

ただし、法令の話と、部屋が売れるかどうかの話は別です。浴室の換気扇が止まっている部屋はカビが出ます。においの出どころと打ち手は内見のときのにおいはどこから来るのかに、結露とカビが入居者から相談として上がってきたときの初動と負担の分かれ目は結露とカビの相談が入居者から来たときに分けて置いています。

窓の面積で調理室の扱いが変わることを左右で比べた図。窓が足りる調理室は換気設備の設置義務がなく、窓が足りない調理室は換気設備を設けるべき調理室等になり、給気口と排気口の位置まで決まる。

2003年より前の建物に、24時間換気を後付けする義務はあるのか

ありません。24時間換気(換気回数0.5回/時)は建築基準法28条の2第3号と施行令20条の8によるもので、国土交通省は「シックハウス対策に係る法令等は、平成15年(2003年)7月1日に施行されました」と公表しています。それより前に建てられた部屋には、この義務はかかっていません。内見のときのにおいはどこから来るのかで、空室のにおいと結びつけて詳しく書いています。

ただし、建築基準法3条2項の「適用しない」(いわゆる既存不適格)は、同条3項3号によって増築・改築・移転・大規模の修繕・大規模の模様替に着手した建築物には適用されません。大規模の修繕・模様替とは、主要構造部(壁、柱、床、はり、屋根、階段)の一種以上について行う過半の修繕・模様替をいいます(同法2条5号・14号・15号)。クロスと床の張り替えは主要構造部を触っていないので該当しませんが、屋根の葺き替えや外壁の張り替えを過半でやると話が変わります。この線引きは再建築不可の家は貸せるのか|2025年4月から大規模リフォームに建築確認が要るにまとめてあります。

交換の費用と、頼む先

換気扇の交換は、原状回復の工事としては小さい部類です。大家さんの内装屋が公表している設備工事の料金表では、換気扇交換の水準はこうなっています。

  • プロペラ式(15〜25センチ・非金属製) 24,800円〜(税込27,280円〜)
  • 金属製(キッチンフード内) 21,000円〜(税別)
  • 天井埋込式 34,800円〜(税込38,280円〜)

(出典:大家さんの内装屋「設備工事」の料金表・2026年8月30日時点。いずれも設備の撤去・処分・材料込み)

この水準は、継続して工事を発注する事業者向けの業者価格です。大家さんが個別に1か所だけ工事会社へ頼む場合は、ここから2〜3割ほど上を見ておいてください。

注意したいのは、コンセントがない場所に換気扇を新設する場合や、天井を開けてダクトを通す場合は、電気工事士の資格が要る作業が混ざることです。どこから資格が要るのかは大家が自分で直してよい範囲はどこまでかに整理しました。

今日やることを1つだけ選ぶなら

空室のキッチンで、窓の大きさを測ってください。幅と高さを掛けて、0.8平方メートル(調理室が8平方メートルを超えるならその10分の1)に届いているかどうか。届いていない部屋のキッチンの換気扇は、法令が求めている設備です。届いている部屋なら、直すかどうかはオーナーの判断で決められます。

測った数字は、間取り図の余白に書き込んで残しておくと、次に工事を頼むときにそのまま使えます。

出典

  • 建築基準法(昭和25年法律第201号)2条、3条、28条、28条の2/建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)20条の3、20条の8:e-Gov法令検索の現行条文(2026年8月30日確認)
  • 国土交通省「建築基準法に基づくシックハウス対策について」(2026年8月30日確認)

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