結露とカビの相談が入居者から来たとき|築古アパートのオーナーが最初にやることと負担の分かれ目

「窓の下のクロスが黒くなってきました」。入居者からそう連絡が入ったとき、オーナーが最初に打つべき手は、業者への電話でも、原因の説明でもありません。連絡が来た日付を残すことです。

結論からお伝えすると、結露によるカビの負担が貸主・借主のどちらに寄るかは、「入居者から通知があったか」と「その後、手入れをしていたか」で分かれます。 国土交通省のガイドラインも、実際の裁判例も、この2点を見ています。そして通知の有無を証明できるのは、多くの場合オーナー側に残った記録だけです。

結露・カビの相談が来た日にやる3つのこと。日付と内容を文字で残す、写真を依頼する、拭き取りのお願いと確認予定を伝える

相談が来た日にやる3つのこと

結露の相談は、たいてい電話か、管理会社経由の口頭で来ます。だからこそ消えます。次の3つを、その日のうちにやります。

  1. 受けた日・部屋番号・話の内容を、文字で残す。管理会社に任せている場合も、報告のメールやメッセージを自分の側でも保存しておく
  2. 写真を依頼する。窓まわり、サッシの下、クロスの黒ずみ、家具の裏。「引いた1枚と寄った1枚」を頼むと、あとで範囲が分かる
  3. 拭き取りのお願いと、こちらが確認に動くことを伝える。伝えた事実も記録に残す

3つ目を、遠慮して言わないオーナーがいます。ただ、これは入居者を責める連絡ではなく、双方を守る連絡です。 理由は次の章のとおりで、拭いていた事実が入居者を守った裁判例が実際にあります。

結露によるカビの負担が分かれる条件の比較図。建物側の話として扱われる場合と、入居者側に寄る場合を左右に並べたもの

負担はどこで分かれるのか

国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」は、借主負担となりうる例のひとつとして「賃借人が結露を放置したことで拡大したカビ、シミ(賃貸人に責任がない場合)」を挙げています。

大事なのは、そこに添えられた考え方の部分です。ガイドラインはこう書いています。結露は建物の構造上の問題であることが多いが、賃借人が結露が発生しているにもかかわらず、賃貸人に通知もせず、かつ、拭き取るなどの手入れを怠り、壁等を腐食させた場合には、通常の使用による損耗を超えると判断されることが多い——という趣旨です。

読み方を整理します。

  • 出発点は「建物の構造上の問題であることが多い」。つまり原則は建物側の話として扱われている
  • 借主側に寄るのは、①通知していない ②拭き取るなどの手入れを怠った ③その結果、壁等を腐食させた——が揃った場合

「窓が結露する部屋だから入居者の負担」とはなりません。結露そのものではなく、放置して拡大させた分が問われているという構造です。

結露は入居者の使い方のせいではないのか

使い方が影響することは確かにあります。ただ、それを理由に負担を求めた側が退けられた裁判例が、ガイドラインの参考資料に載っています。

建物のカビは結露が主な原因であり、その結露の発生は建物の構造上の問題と認められた事例です。裁判所は、目に見えるところにカビが残っていないことから、入居者は結露に気づいたときにはその都度拭いていたと認め、カビの発生について入居者に過失があったとは認められないとしました。さらに、賃貸人には入居者が快適な生活を送れるように建物を維持すべき義務があり、それが履行されない以上は賃貸人の債務不履行と解すべきである、とも述べ、敷金の返還を命じています。

一方で、逆に振れた事例もあります。入居者の手入れにも問題があったとして、カビの汚れについて入居者にも2割程度の責任があるとされた事例です。

2つを並べると見えてきます。建物側に構造上の問題があっても、入居者の手入れ次第で結論は動く。逆に、手入れをしていた記録があれば入居者は守られる。 どちらの方向に転ぶにせよ、判断材料は「何をしていたか」の記録です。

通知は、入居者側の義務でもある

民法第615条は、賃借物が修繕を要するときは、賃借人は遅滞なくその旨を賃貸人に通知しなければならない(賃貸人が既に知っているときを除く)と定めています。設備が壊れた場合の修繕義務は貸主にありますが、その前提として、借主には知らせる義務があるということです。

だからこそ、入居のしおりや更新の案内に一行入れておくだけで後が変わります。「結露・水漏れ・カビに気づいたら、早めにご連絡ください」。責める文面にせず、連絡先を明記する。これで通知が来やすくなり、記録も残ります。

建物側で打てる手

築古アパートの結露は、原因がひとつではありません。窓の性能、断熱、換気、間取り、住まい方が重なって出ます。費用の幅も物件差が大きいため、ここでは総額の相場は書きません。 ただ、着手しやすい順番はあります。

  1. 換気が働いているかを確認する——24時間換気や浴室・キッチンの換気扇が止まっていないか、給気口が塞がれていないか。ここは費用がほとんどかからず、効果が出ることがあります
  2. 水が集まる場所を減らす——サッシのレール、結露受け、窓下の水はけ。清掃と部品交換で済む場合があります
  3. 窓そのものに手を入れる——内窓の追加やサッシの交換。効果は大きい一方で費用も上がるため、空室のタイミングに合わせて検討します

3つ目に進むときは、修理と交換を分ける判断ラインと同じ考え方で、残りの保有期間と入居付けへの効きを一緒に見ます。断熱や住宅性能の評価そのものは専門家の領域なので、建築士や施工者に現地で見てもらってください。

退去のときに揉めないために

結露とカビは、退去の精算で最ももめやすい項目のひとつです。入居中の記録が無いまま退去日を迎えると、「いつからあったのか」を誰も説明できなくなります。

負担区分の考え方そのものは、残置物と原状回復の負担区分で扱った枠組みと同じです。個別の事案でどちらの負担になるかの結論は、宅地建物取引業者や弁護士に確認してください。 ここに書いたのは、判断の材料になる一般的な考え方です。

今日やることを1つだけ選ぶなら

過去に結露やカビの相談が来ていた部屋を1つ思い出し、その連絡がいつだったかを探してみることです。日付が出てこなければ、次の相談からは残す。記録は、入居者を守る側にも、オーナーを守る側にも同じように効きます。

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