受水槽のあるアパートには毎年2つの義務がある|築古アパートのオーナーが掃除と検査を分けて考える
3階建て9戸のアパートで、敷地の隅に置かれたFRPの受水槽のマンホールを開けたら、内側の水面に細かい黒い粒が浮いていました。オーバーフロー管の先を見ると、防虫網が破れて片側だけ垂れ下がっています。前のオーナーから引き継いだ書類のなかに、清掃業者の請求書は毎年ありました。ないのは検査の結果書でした。
結論からお伝えすると、受水槽のあるアパートには、毎年やることが2つあります。掃除と、検査です。そしてこの2つは別の条文で決まっていて、罰則が付いているのは検査のほうです。掃除を毎年きちんと頼んでいても、検査を受けていなければ、水道法違反の状態になります。
まず、自分の受水槽がどちらに入るかを数える
水道法3条7項は「簡易専用水道」を、水道事業の水道から供給を受ける水のみを水源とするものと定義したうえで、「その用に供する施設の規模が政令で定める基準以下のものを除く」としています。その政令が水道法施行令2条で、基準は水槽の有効容量の合計が10立方メートルです。
- 有効容量の合計が10立方メートルを超えるものが簡易専用水道。水道法の規制がかかります
- 10立方メートル以下のものは小規模貯水槽水道。水道法の外で、市の給水条例などが関与します
「合計」なので、受水槽と高置水槽の両方がある建物は足して数えます。受水槽が8立方メートル、屋上の高置水槽が3立方メートルなら合計11立方メートルで、簡易専用水道です。受水槽だけを見て「10以下だから関係ない」と判断すると外れます。容量は水槽の側面にある銘板か、竣工図の給水設備図に書いてあります。

掃除と検査は、別の条文で決まっている
水道法34条の2は、1項と2項で違うことを求めています。
- 1項「簡易専用水道の設置者は、国土交通省令で定める基準に従い、その水道を管理しなければならない。」→ 中身は水道法施行規則55条(管理基準)
- 2項「簡易専用水道の設置者は、当該簡易専用水道の管理について、国土交通省令(中略)の定めるところにより、定期に、地方公共団体の機関又は国土交通大臣及び環境大臣の登録を受けた者の検査を受けなければならない。」→ 頻度は施行規則56条で毎年1回以上
施行規則55条の管理基準は4つです。①水槽の掃除を毎年1回以上定期に行うこと ②水槽の点検等、有害物・汚水等によって水が汚染されるのを防止するために必要な措置を講ずること ③給水栓における水の色、濁り、臭い、味その他の状態により異常を認めたときは水質検査を行うこと ④供給する水が人の健康を害するおそれがあることを知ったときは、直ちに給水を停止し、その水を使用することが危険である旨を関係者に周知させる措置を講ずること。
掃除を頼めば、検査を受けたことになるのですか?
なりません。掃除は清掃業者の仕事、検査は登録検査機関の仕事で、資格が違います。さいたま市水道局も、清掃業者は「建築物衛生法に基づく登録営業所一覧」の5号(建築物飲料水貯水槽清掃業)から、検査機関は「国土交通大臣及び環境大臣の登録を受けた検査機関」からと、案内を分けています。
そして、罰則の付き方が非対称です。水道法54条は「百万円以下の罰金に処する」対象を列挙していて、その8号が「第三十四条の二第二項の規定に違反した者」です。つまり検査を受けなかったことに罰則が付いていて、1項の管理基準(掃除を含む)には罰則の条文がありません。実務の感覚と逆転しています。掃除は目に見えて費用も大きいので毎年やる。検査は書類が1枚届くだけなので忘れる。忘れたほうに罰金が付いています。
法人が設置者の場合は、水道法56条の両罰規定により、行為者だけでなく法人にも罰金刑が科されます。
2024年4月から、所管する省庁が変わりました
ここは検索して出てくる情報がまだ追いついていない部分です。2024年3月31日まで、34条の2は「厚生労働省令で定める基準」「厚生労働大臣の登録を受けた者の検査」でした。2024年4月1日から「国土交通省令」「国土交通大臣及び環境大臣の登録を受けた者」に変わっています。根拠は令和5年法律第36号(生活衛生等関係行政の機能強化のための関係法律の整備に関する法律)です。
e-Gov法令検索で改正の前日と当日の条文を突き合わせると、この差がそのまま出てきます。「厚生労働大臣の登録を受けた検査機関に依頼してください」と書いてある解説は、2024年3月以前の記述です。登録検査機関の一覧も、いまは環境省のページにあります。
10立方メートル以下なら、何もしなくていいのか
水道法の規制はかかりません。ただし、平成13年7月の水道法改正で、地方自治体が条例・要綱等により小規模貯水槽水道の管理に関して指導・助言・勧告をすることができるようになりました。さいたま市は「さいたま市水道局小規模貯水槽水道の管理指導要領」を作っていて、簡易専用水道より細かい頻度を求めている項目があります。
- 水槽の掃除は毎年1回以上定期に(要領5条関係)
- 給水栓における水の遊離残留塩素は0.1ミリグラム毎リットル以上を保持すること(要領6条関係)
- 施設の点検は月1回実施するものとする(同)
- 管理の状況に関する検査は毎年1回以上定期に(要領7条関係)
さらにさいたま市水道局は、小規模貯水槽水道を4年で1巡するよう計画的に無料の訪問点検を行っています。平成21年度に始まり、令和8年度から5巡目に入りました。点検項目は、水質検査(臭気・味・色・濁り・残留塩素)、受水槽の設置状況・構造・内部の状態の確認、清掃記録や配管図面など書類の保管状況の確認の3つです。清掃と故障箇所の修繕は行いません。費用の請求もありません。「点検に来たので有料で清掃を」と言われたら、それは市の訪問点検ではありません。
訪問点検の日に見られる場所を、先に自分で見る
さいたま市水道局の「小規模貯水槽水道管理マニュアル」には、点検事項と管理基準が表で並んでいます。簡易専用水道の設置者にも、そのまま自主点検の項目として使えます。
- 周囲の状態:水槽周辺は清潔であり、ごみ、汚物等が置かれていないこと
- 本体の状態:亀裂し、または漏水している箇所がないこと。水位電極部、給水管等の接合部が固定され、防水密閉されていること
- 内部の状態:清掃が定期的におこなわれていること
- マンホールの状態:ふたが防水密閉され、衛生上有害なものが入らないこと。点検等を行う者以外の者が容易に開閉できないこと
- オーバーフロー管の状態:管端部の防虫網が確認でき、正常であること
- 通気管の状態:管端部からほこり等、衛生上有害なものが入らないこと。管端部の防虫網が確認でき、正常であること
同マニュアルは、地震・大雨などがあった後にも点検をおこなうよう求めています。マンホールの施錠は「点検等を行う者以外の者が容易に開閉できないこと」という管理基準そのものです。南京錠が錆びて開かないまま何年も放置されている受水槽は、施錠されているのではなく、点検できない状態です。
建物側の基準もあります。建築基準法施行令129条の2の4第2項5号は「給水タンク及び貯水タンクは、ほこりその他衛生上有害なものが入らない構造とし、金属性のものにあつては、衛生上支障のないように有効なさび止めのための措置を講ずること」と定めています。鋼板製の受水槽で、外面の塗装が浮いて赤錆が出ている状態は、この基準の側から見ても直す対象です。

残しておく書類は4種類
マニュアルが挙げている保管書類は、水槽の清掃記録、水質検査の記録、水槽の点検記録、給水設備の配管系統図面の4つです。このうち配管系統図面は、失うと二度と作れません。受水槽から各戸へどう分岐しているかが分からないと、漏水したときに止める場所が決まらず、全戸断水して探すことになります。
管理会社を替えるときに受け取る書類の一覧は管理会社を変更するときの引き継ぎ書類にまとめています。受水槽のある物件では、この4つを必ずリストに足してください。
給水ポンプの電気代と、受水槽をやめるという選択肢
受水槽方式のアパートでは、加圧給水ポンプが共用部の電気を使い続けます。共用部の電気代が上がったときに何から確かめるかは築古アパートの共用部の電気代が上がったとき、オーナーが確かめる順番に書きました。ポンプは動き続けている限り電気を使うので、共用部の負担としては照明より大きくなることがあります。
もう1つの方向が、受水槽をやめて直結給水方式に切り替えることです。さいたま市水道局は、貯水槽水道を撤去して直結給水方式への切替えを検討する場合に「直結工事見積りサービス」の情報提供をしています。切り替えられれば、掃除も検査もポンプの電気代も要らなくなります。ただし建物の高さ・戸数・前面道路の水圧で可否が変わるため、水道局と指定給水装置工事事業者に相談する話になります。
なお、受水槽より手前、敷地内の水道管が誰の持ち物で誰が直すのかは敷地内の水道管は誰が直すのかで、古い建物に鉛の給水管が残っていないかの確かめ方はアパートに鉛の給水管が残っていないかで扱っています。
今日やることを1つだけ選ぶなら
去年の「検査」の結果書があるかを探してください。清掃の請求書ではなく、検査機関が出した管理状況の検査結果です。見つからなければ、まず水槽の銘板か竣工図で有効容量の合計を確認し、10立方メートルを超えていれば登録検査機関に、超えていなければ市の水道局に連絡します。
1年に1回の話なので、次に忘れないよう、清掃の予定と同じ月に検査も入れてしまうのが確実です。
出典
- 水道法(昭和32年法律第177号)3条、16条、34条の2、54条、56条/水道法施行令(昭和32年政令第336号)2条、6条/水道法施行規則(昭和32年厚生省令第45号)55条、56条/建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)129条の2の4:e-Gov法令検索の現行条文(2026年8月30日確認)。2024年3月31日時点との比較はe-Gov法令検索の時点指定による
- さいたま市「貯水槽水道の管理」および「さいたま市水道局小規模貯水槽水道管理マニュアル」(PDF・2026年8月30日確認)


