納税通知書が来ない市町村にも、名義の土地が残っていることがあります|築古アパートのオーナーが名寄帳で物件を洗い出す地方税法387条

結論からお伝えすると、自分の物件を市町村ごとに全部洗い出すなら「名寄帳(なよせちょう)」を取るのがいちばん確実です。市町村は、固定資産課税台帳をもとに、土地名寄帳と家屋名寄帳を備えなければならないと決められています(地方税法387条1項)。ただし名寄帳は市町村ごとの帳簿です。そして、税額がかからない市町村からは、納税通知書も課税明細書も届きません。「届いた通知書の分だけが自分の物件」と思っていると、取りこぼしが出ます。

たとえば、父親から築古アパートを相続して、遺品の中から固定資産税の納税通知書を探したとします。見つかったのはさいたま市の1通だけ。ところが、昔アパートを建てたときに買った隣の市の私道の持分が、評価が低いまま父親の名義で残っている——ということが起こりえます。通知が来ないのは、持っていないからではなく、税金がかからないからです。

名寄帳で物件を洗い出すときの3つ(市町村ごと・税金ゼロの土地・登記のない建物)

なぜ、持っているのに通知が来ないのですか?

地方税法351条は、同じ人がその市町村の中で持つ土地の課税標準額の合計が30万円、家屋が20万円に満たないときは、固定資産税を課することができないと定めています(免税点。条例で別に定める例外あり)。

一方で、課税明細書は「土地又は家屋に対して課する固定資産税を徴収しようとする場合」に交付するものです(364条3項)。課税されなければ、徴収もなく、明細書も届かない。ところが台帳への登録は別の話で、381条1項は登記簿に登記されている土地を土地課税台帳に登録すると定めています。税額はゼロでも、台帳には名前が載っているというわけです。課税明細書の読み方そのものは固定資産税の課税明細書の見方は6つの欄からに書いています。

名寄帳と、課税明細書・評価証明書は何が違いますか?

  • 課税明細書:課税するときに、納税通知書と一緒に送られてくるもの(364条3項)
  • 名寄帳:その市町村の中の土地・家屋を、所有者ごとにまとめた帳簿(387条1項)。納税義務者が閲覧を求めると、台帳の代わりに名寄帳やその写しを見せることができる(387条3項・382条の2第1項)
  • 評価証明書などの証明書:台帳に載っている事項を証明する書面(382条の3)

洗い出しに向いているのは名寄帳です。登記されていない家屋も、固定資産税を課することができるものは家屋補充課税台帳に登録されます(381条4項)。物置や増築部分のように、登記を見ても出てこない建物に気づくきっかけになります。未登記の部分を見つけたときの考え方は増築した部分の登記は、変更から1か月以内ですにまとめています。

誰が名寄帳を見られますか?

閲覧できる人は、地方税法施行令52条の14の表で決まっています。

  • 固定資産税の納税義務者(その納税義務に係る固定資産)
  • 土地を対価を払って借りている人(その土地)
  • 家屋を対価を払って借りている人(その家屋と、その敷地の土地)
  • 固定資産の処分をする権利を持つ人として総務省令で定める人

3つ目は見落とされがちですが、家賃を払っている入居者も、自分が借りている家屋と敷地については台帳を閲覧できるということです。ただし見られるのはその物件だけで、大家が持つほかの物件までは出てきません。

相続の場面では、地方税法9条により、相続人が被相続人の納税義務を承継します。窓口では相続人であることを示す書類を求められるのが一般的なので、何を持っていけばよいかは、取りに行く前に市町村の税務の窓口で確かめてください。手数料も市町村の条例で決まっています。

名寄帳と法務局の所有不動産記録証明書の比較

市町村をまたいで、全国分をまとめて調べる方法はありますか?

あります。2026年2月2日から、法務局で「所有不動産記録証明書」を請求できるようになりました(不動産登記法119条の2・同日施行)。自分が所有権の登記名義人として記録されている不動産を証明するもので、相続人は亡くなった人の分も請求できます(同条2項)。

名寄帳と違うのは、見ている帳簿です。こちらは登記記録なので、登記されていない家屋は出てきません。逆に名寄帳は市町村ごとなので、どの市町村に物件があるかが分かっていないと取れません。まず法務局の証明書で市町村の当たりを付け、その市町村ごとに名寄帳を取るという順番にすると、両方の弱いところを補えます。相続を控えた親の物件の確認は親の築古アパートを元気なうちに確認する5つのこともあわせてどうぞ。

都合の悪いことも書いておきます

名寄帳の様式、写しの取り方、手数料、郵送や電子申請に対応しているかは、市町村ごとに違います。この記事で確かめたのは法律と政令の条文までで、埼玉・千葉西部・栃木南部の個々の窓口の運用までは調べていません。また、所有不動産記録証明書は登記名義で探すため、住所や氏名の変更登記をしていない古い名義は、探し方によっては拾えないことがあります。

今日やることを1つだけ選ぶなら

手元の納税通知書を市町村ごとに並べ、「物件はあるはずなのに通知が来ていない市町村」がないかを書き出してください。1つでも思い当たれば、その市町村の名寄帳を取る。それが、相続のときに慌てないためのいちばん安い準備です。

出典

  • 地方税法9条・351条・364条・381条・382条の2・382条の3・387条(e-Gov 法令検索・2026年10月12日時点)
  • 地方税法施行令52条の14・52条の15(同上)
  • 不動産登記法119条の2(同上。令和8年2月2日施行)

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