親の築古アパートを元気なうちに確認する5つのこと|住所変更登記の義務化が2026年4月に始まった

登記簿を取ってみたら、所有者の住所が「昭和のころに住んでいた実家」のままだった。親はその後2回引っ越していて、いまの住まいとは市まで違う。建物の名義は親の名前で合っているのに、住所だけが30年前で止まっている——築古のアパートや戸建では、これがまったく珍しくありません。

結論からお伝えすると、親が持っている築古物件で最初に確認するのは「登記簿の名義と住所」です。2026年(令和8年)4月1日から、住所や氏名が変わったときの変更登記が法律上の義務になりました。しかも施行日より前の引っ越しもさかのぼって対象になり、期限が決まっています。相続の話を切り出しにくくても、この話なら「国が期限を決めたから」という入口で聞けます。

親が元気なうちに確認する5つのこと。登記簿の名義と住所、賃貸借契約書と入居者の一覧、お金の流れ、建物の書類と鍵、管理の委託先と契約の中身。

2026年4月に何が変わったのか

法務省が公表している内容を、一次情報のまま並べます。

  • 施行日は令和8年4月1日。不動産の所有者(所有権の登記名義人)の氏名・名称または住所が変わったとき、変更日から2年以内に変更登記を申請することが義務づけられました
  • 施行日より前の変更もさかのぼって対象です。すでに引っ越し済みで登記が古いままなら、令和10年(2028年)3月31日までに変更登記をする必要があります
  • 正当な理由なく怠った場合、5万円以下の過料の対象になり得ます(不動産登記法第164条第2項)
  • 個人の氏名変更(結婚・離婚など)も、法人の名称変更・本店移転も対象です

あわせて「スマート変更登記」という仕組みが始まっています。氏名・住所・生年月日などの「検索用情報」を無料で申し出ておくと、その後の住所変更は法務局が職権で登記してくれるというものです。法人向けは令和8年5月15日から実施されています。法務省は「正当な理由」の例として、検索用情報の申出をしているのに職権の手続きがまだされていない場合、行政区画の変更で住所が変わった場合、本人が重病である場合、DV被害等で危害のおそれがある場合、経済的に登記費用を負担できない場合などを挙げています。

「相続登記さえしておけば大丈夫」ではありません

ここが誤解されやすいところです。相続登記の義務化(2024年4月開始)は広く知られましたが、今回の義務は「まだ相続が起きていない、親が元気なうち」にも発生します。名義が親のままで正しくても、親が引っ越していれば、その時点で変更登記の義務が生じている。相続の準備というより、いま所有している人の手続きです。

そして実務的には、ここを放っておくと相続のときに手間が増えます。登記簿の住所と、亡くなったときの住所がつながらないと、除票や戸籍の附票をさかのぼって集める作業が必要になるためです。一般的には、住所が何度も変わっているほど書類が増えます。

親が元気なうちに確認する5つのこと

  1. 登記簿の名義と住所/名義は誰か、共有になっていないか、住所は現住所か。抵当権が残ったままかどうかもここで分かります
  2. 賃貸借契約書と入居者の一覧/誰がいつから入っていて、家賃・更新・保証会社はどうなっているか。契約書の原本がどこにあるかまで確認します
  3. お金の流れ/家賃はどの口座に入っているか、借入は残っているか、火災保険はいつまで有効か。通帳の入出金を1年分見れば大半が分かります
  4. 建物の書類と鍵/建築時の図面、過去の修繕の記録、鍵の本数と保管場所。図面は建て替えや売却の判断でも効きます
  5. 管理の委託先と契約の中身/どこに何を頼んでいて、解約予告は何か月前か。口約束で続いている委託が残っていることもあります

親に切り出しにくいときは、どう聞けばいいですか?

相続の話として切り出すと、たいてい止まります。財産の話になった瞬間に、こちらの意図を疑われるからです。入口を「登記の期限」に変えると、話が事務手続きになります。「2026年4月から住所の変更登記が義務になって、前の引っ越しの分も2028年3月末までなんだって。登記簿、いまの住所になってる?」——これなら、感情の話になりません。

登記簿は法務局の窓口でも、オンラインの登記情報提供サービスでも取れます。所有者本人でなくても取得できるので、まず1通取って、住所欄を一緒に見るところから始めるのがいちばん早いです。

登記簿の住所が古いままだったときの動き方。登記簿を1通取る、住所欄を見る、古ければ変更登記を申請する(期限は令和10年3月31日)、検索用情報を申し出る、迷ったら司法書士に相談する。

断定できないところは、専門家に渡す

相続の分け方、贈与や名義変更にかかる税金、遺言の要否は、一般的な説明にとどめるべき領域です。家族の人数や他の財産で結論が変わりますし、登記そのものも、経緯によっては添付書類の判断が必要になります。登記の手続きは司法書士、税金は税理士、争いが見えているときは弁護士へ。ここで無理に自己判断をしないほうが、結果的に費用も時間も少なくて済みます。

建物の側では、私道・境界・越境の確認も、親が元気なうちにやっておくと後がラクになります。当時の経緯を覚えているのは親だけ、ということが多いためです。火災保険の内容や、管理会社から受け取っておく書類も同じで、聞ける人がいるうちに聞くのが確実です。実際に引き継いだ後の動き方は、相続した築古アパートの立て直しの進め方にまとめています。

埼玉・千葉県西部・栃木県南部でも、昭和築のアパートを親世代が持ち続けている物件は多く残っています。建物は動かせなくても、書類は今日から動かせます。

今日やることを1つだけ選ぶなら、親の物件の登記簿を1通取って、住所欄が現住所かどうかだけ見てください。そこが古ければ、期限は令和10年3月31日です。合っていれば、この件はそれで終わりです。

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