災害で壊れたアパートの固定資産税の減免は、条文に「できる」としか書いてありません|築古アパートのオーナーが納期限の前に確かめる4つ

結論からお伝えすると、災害でアパートが壊れたとき、固定資産税を軽くする条文は地方税法367条の「減免」ですが、そこには「減免することができる」としか書かれていません。どんな被害でどれだけ減らすかは市町村の条例に任されていて、さいたま市では申請書を納期限までに出さなければ、自動では減りません。市の災害時の案内では、対象になるのは所有者だけで、管理者と使用者(入居者)は対象外です。

たとえば、台風のあと、築古アパートの1階が床上まで水に浸かった場面です。入居者への連絡、修繕の見積、保険会社への電話に追われるなかで、郵便受けには固定資産税の納付書が残っている。「これは払うのか、軽くなるのか」と迷ったとき、確かめる条文がこれです。

災害の減免は、法律のどこに書いてありますか?

地方税法367条(e-Gov法令検索・2026年10月時点)の本文は、次のとおりです。

「市町村長は、天災その他特別の事情がある場合において固定資産税の減免を必要とすると認める者、貧困に因り生活のため公私の扶助を受ける者その他特別の事情がある者に限り、当該市町村の条例の定めるところにより、固定資産税を減免することができる。」

読むところは3つです。

  • 「減免することができる」。減免しなければならない、とは書いていません。市町村長が判断する形です
  • 「条例の定めるところにより」。国の法律に被害の割合や減免の率は書かれていません。住んでいる市町村の条例と、その運用で決まります
  • 「認める者に限り」。災害に遭った人が全員、自動で対象になるわけではありません

もう1つ、同じ法律の359条は、固定資産税の賦課期日をその年度の初日の属する年の1月1日と定めています。秋に建物が壊れても、課税の基準日は年初のままです。そのうえで税額を軽くする仕組みとして、まず確かめるのが上の367条の減免です。

納税通知書そのものの読み方は、固定資産税の課税明細書の見方は6つの欄から|築古アパートのオーナーが4月と3か月で動くにまとめています。

さいたま市では、どう申請しますか?

さいたま市が公開している「固定資産税・都市計画税減免申請書」(様式第67号)には、「さいたま市市税条例第80条第2項の規定により、次のとおり申請します」と印刷されています。備考には、次の2点が書かれています。

  • この申請書は、納期限までに提出してください
  • 減免を受けようとする事由を証明する書類を必ず添付してください

総務省の関東管区行政評価局がまとめた、さいたま市向けの災害時の窓口案内(令和8年3月版)も同じ流れです。固定資産税・都市計画税の減免では、「発災日以降に納期限が到来するもの」が対象とされ、必要書類は次の3つです。

  1. 申請書
  2. 罹災証明書またはり災証明書(被災届出受理証でも可)
  3. 本人確認書類(本人または法人の代表者が署名しない場合は認印が必要)

「発災日以降に納期限が来るもの」を言い換えると、被害の前にすでに納期限が過ぎた分は、この書き方では入っていません。窓口は区ごとに分かれていて、家屋については北部市税事務所と南部市税事務所の資産課税課の家屋係です。アパートの設備を償却資産として申告している場合は、窓口が別(南部市税事務所 資産課税課 償却資産係)になります。

罹災証明書のための調査は、地震のあとに貼られる赤い紙(応急危険度判定)とは別のものです。赤い紙が貼られた場合の動き方は、地震のあとに貼られる赤い紙は、取り壊しの決定ではありません|築古アパートのオーナーが動く順番にあります。

税の減免を使う前に確かめる4つ(条文は「できる」だけ・申請が要る・対象は所有者だけ・被害の程度で分かれる)を並べた図

貸している大家は、対象になりますか?

先ほどの窓口案内には、誰が、どの程度の被害で、制度を使えるかの表が載っています。市は、この表の印は「目安として掲載をしたもの」で、「個々の状況により適用条件等が異なる場合があります」と注記しています。家屋の表から、賃貸に関わるところだけを読みます。

  • 居住を伴わない所有者(貸している大家)は「○」。居住者も「○」ですが、注記で「所有者のみが制度の対象」とされています
  • 管理者と使用者は「×」。管理会社と、借りて住んでいる入居者は、基本的に制度を使えない扱いです
  • 被害の程度では、全壊・大規模半壊・床上浸水・全焼・半焼が「○」です
  • 床下浸水は「×」です
  • 中規模半壊・半壊・準半壊・準半壊に至らない一部損壊・部分焼・ぼやは「△」で、市は「被害の程度のみでは制度利用の可否が決まらないもの」としています

つまり、「半壊だったから出せる」「床下だけだったから見送る」と、自分で決める前に窓口で聞く価値があるのは△の側です。条文は「できる」で止まっていて、線を引いているのは市のほうだからです。

災害で建物が壊れたときの公的なお金が、住んでいる人に付く制度であることは、台風でアパートが壊れても、大家に出る公的なお金はありません|制度は住んでいる人に付いていますに書いています。固定資産税の減免は、所有者が対象になる側の制度です。

建物がなくなった土地は、別の条文で見ます

減免とは別に、地方税法349条の3の3には被災住宅用地の課税標準の特例があります。壊れた家屋の敷地だった土地について、次の形で住宅用地の特例を続ける仕組みです。

  • 対象は、被災した年の1月1日を賦課期日とする年度分で、住宅用地の特例を受けていた土地です。
  • 原則として、被災した年度の翌年度と翌々年度分が対象です。避難の指示が出た場合などは、期間が延びる定めが同じ条文にあります
  • 家屋や構築物の敷地になっていない土地を、「住宅用地として使用することができないと市町村長が認める場合に限り」住宅用地とみなします

減免は納期が来る税額を減らす手続きで、特例は建物がなくなったあとの土地の評価の話です。条文が別です。更地にしたあとの課税が心配なときは、減免の申請と一緒に、市に特例の扱いも聞いてください。

建物があるときの減免(367条)と、建物がなくなった土地の被災住宅用地の特例(349条の3の3)を左右に比べた図

貸している所有者が、先に揃えるものは何ですか?

  1. 納税通知書の納期限を、日付で書き出す。申請の期限は納期限までです。被害のあとで最初に来る納期限が、いつなのかを先に知ります
  2. 罹災証明書の申請を出す。市の案内で、減免の必要書類に入っています(被災届出受理証でも可)
  3. 本人確認書類を用意する。本人または法人の代表者が署名しない場合は、認印も要ります
  4. 共有名義かどうかを確かめる。申請書には「対象資産が共有名義の場合、他の納税義務者の合意を得ているものとみなします」と書かれています
  5. 区の担当の市税事務所へ電話して、被害の程度が△に当たるかを聞く。表は目安で、個々の状況により変わると市が書いています

都合の悪いことも書いておきます

  • この記事は、e-Govの地方税法367条・359条・349条の3の3、さいたま市の減免申請書(様式第67号)、総務省関東管区行政評価局のさいたま市向けの窓口案内(令和8年3月版)の記載を並べたものです。さいたま市市税条例80条そのものと、別表の中身は開いて確かめていません
  • 被害の程度ごとに、固定資産税が何割減るかは確かめていません。窓口案内の表にも割合は載っていません
  • 管理会社や代理人が、所有者に代わって申請できるかどうかは確かめていません。表の「管理者」が×であることだけを読んでいます
  • 被災住宅用地の特例について、さいたま市が実際にどう運用しているか、政令で定める者の範囲、避難の指示などで期間が延びる場合の細かい日付は確かめていません。
  • 各年度の納期の日付は、納税通知書で確かめてください。個別の判断は、市税事務所か税理士に聞いてください

今日やることを1つだけ選ぶなら

手元の納税通知書で、いちばん近い納期限の日付を、スマートフォンのカレンダーに入れてください。被害に遭ってから探すと、「納期限までに申請書を出す」という期限が、修繕の連絡に埋もれます。日付が分かっていれば、罹災証明書の申請と同じ日に、市税事務所へ電話できます。

出典

  • 地方税法359条・367条・349条の3の3(e-Gov法令検索・2026年10月時点の現行条文)
  • さいたま市「固定資産税・都市計画税減免申請書」様式第67号(別表第1関係)
  • 総務省 関東管区行政評価局「埼玉 災害時の生活支援 窓口案内(ガイドブック)さいたま市」令和8年3月版

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