屋根の古いアンテナは、契約書の設備欄を見てから外します|築古アパートのオーナーが撤去の前に確かめる3つ

結論からお伝えすると、屋根の上の古いアンテナを外す前に見るのは、屋根ではなく賃貸借契約書の「設備」の欄です。国の賃貸住宅標準契約書は頭書の設備欄に「地デジ対応・CATV対応 有・無」の行を置いており、ここが「有」の部屋にとって、テレビが映ることは貸している設備の一部です。1部屋でもアンテナから映している入居者がいれば、撤去は民法606条の修繕義務と正面からぶつかります。一方で、アンテナを外してもNHKの受信契約の当事者が大家さんに移ることはありません。放送法64条が契約を求めているのは、受信設備を設置した人だからです。

台風の翌日、隣の家から電話が入ります。「お宅のアパートの屋根のアンテナが、うちのほうに傾いていますよ」。見上げると、錆びた支柱の先で八木アンテナが斜めになり、支線が1本外れて垂れている。管理会社に聞くと、「たぶん今は誰も使っていないと思います。光回線のテレビの人が多いので」。「たぶん」のまま外すと、翌週に「テレビが映らない」という連絡が1本来ます。

屋根の古いアンテナを外す前に確かめることの図。落下を先に止める、設備欄の地デジ対応、有なら修繕するのは大家、受信契約は住居ごと。

先にやるのは、落ちないようにすることです

使っているかどうかの確認より先に、落下を止めてください。民法717条1項は、土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があって他人に損害を生じたとき、まず占有者が、占有者が必要な注意をしていたときは所有者が損害を賠償すると定めています。所有者の責任には、注意をしていたから免れるという逃げ道がありません。屋根の上のアンテナと支柱は建物に取り付けた工作物の一部と考えるのが自然で、隣の家の屋根や車に落ちれば、この条文の話になります。

台風の前後に見る場所の全体は台風が来る前と後、オーナーが動く順番にまとめています。

撤去してよいかは、設備欄で決まります

国土交通省の賃貸住宅標準契約書(平成30年3月版)は、頭書(2)の「設備等」に「地デジ対応・CATV対応」の行を置き、作成時の注意点で「該当する方法に○をつけ、その他注意書きがある場合は記入してください」としています。同じ契約書の9条1項は「甲は、乙が本物件を使用するために必要な修繕を行わなければならない」です。

ここが「有」で契約しているなら、その部屋でテレビが見られることは、賃貸人が約束した使用収益の中身です。

  • 民法601条…賃貸借は、賃貸人が物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、賃借人が賃料を払うことを約して成立する
  • 民法606条1項…賃貸人は、使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う
  • 民法611条1項…賃借物の一部が使用収益できなくなった場合に、賃借人の責めに帰することができない事由によるものなら、賃料はその割合に応じて減額される

アンテナを外すことは、修繕の反対側にある行為です。代わりの受信方法(ケーブルテレビや光回線のテレビサービスへの切替え)を用意しないまま外すと、その部屋の設備を大家さんの側から使えなくすることになります。

アンテナを外せば、NHKとの契約は大家の側に来なくなるのですか?

もともと来ていません。放送法64条1項は、協会と受信契約を締結しなければならない者を「特定受信設備を設置した者」としています。特定受信設備は、協会の放送を受信できる受信設備で、放送の受信を目的としないものやラジオだけのものは除かれます(同条8項3号)。各部屋でテレビを置いた人が設置者で、屋根に共用のアンテナを立てた大家さんが部屋ごとの契約者になる書き方にはなっていません。また同条2項1号は、同じ住居・同じ生計の人がすでに契約していれば新たな契約は要らないとしており、契約の単位は住居ごとです。

なお64条は2025年10月1日時点の条文から形が変わり、「特定必要的配信の受信を開始した者」(インターネットでの配信の受信)も契約が要る者として1項2号に加わっています。アンテナの有無で入居者の契約が変わるわけではない、という点は同じです。家具家電付きでテレビを備え付けている部屋は、誰が設置者かの見方が変わり得るので、NHKに確認してください。

使っているかどうかの確かめ方

  1. 入居者に文書で聞く…「テレビを屋上のアンテナ(壁のテレビ端子)で見ていますか。ケーブルテレビや光回線のテレビですか。テレビはありませんか」の3択にする
  2. 共用部の機器を見る…屋根裏や外壁の分配器・ブースターに電源が入っているか。ブースターの電源を共用部の電気から取っている場合もあります
  3. 契約書の設備欄を部屋ごとに見る…古い契約ほど「有」のまま更新されていることがあります

1部屋でも使っていれば、先に代わりの受信方法を決め、切替えの日を入居者に知らせてから外す順番になります。回線を建物に引き込む話は光回線は、法律で勝手に引かれることはありませんに、設備を足すときの見られ方はインターネット無料は築古賃貸でも導入できるかに書いています。

アンテナ撤去までの手順の図。設備欄が有の部屋を数え、入居者に受信方法を聞き、ブースターを見て、代わりの受信方法と切替えの日を決めてから撤去する。

都合の悪いことも書いておきます

撤去の費用は、屋根の形・勾配・高さと、足場が要るかどうかで大きく変わります。2階建ての切妻屋根と3階建ての陸屋根では別の工事になるので、この記事では金額を置きません。同じ写真と条件を複数の業者に渡して見積りを取ってください。また、アンテナを残したまま支柱だけ補強する選択もあります。全員が別の方法で見ていると分かるまでは、撤去より補強のほうが揉めないことがあります。

今日やることを1つだけ選ぶなら

契約書の設備欄を全室分めくって、「地デジ対応・CATV対応」の行が「有」になっている部屋を数えてください。0なら撤去の話を進められます。1以上なら、その部屋に受信方法を聞く文書を先に出す。傾いたアンテナが落ちそうなら、使っているかどうかに関係なく、今日のうちに業者へ固定か撤去の相談を入れてください。

出典

  • 民法601条・606条・611条・717条(e-Gov 法令API・2026年9月25日時点)
  • 放送法64条(e-Gov 法令API・時点指定 2025年9月30日/2025年10月1日、および2026年9月25日時点)
  • 国土交通省「賃貸住宅標準契約書(平成30年3月版・連帯保証人型)」頭書(2)・9条、「賃貸住宅標準契約書(改訂版)作成にあたっての注意点」

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