光回線は、法律で勝手に引かれることはありません|築古アパートのオーナーが承諾の前に見る3つの条文

入居者から「光回線を自分で引きたい」と言われた。数日後、通信会社の担当者から電話が来て「法律で認められていますので」と説明された。外壁に穴を開けるとも聞いた。断っていいのか、断ったら何か言われるのか——この2つが分からないまま、返事を保留している。築古のアパートでは、ここ数年よく起きています。

結論からお伝えすると、電気通信事業法に「大家の承諾なしにアパートへ引ける」という条文はありません。その法律にある使用権の制度は、総務大臣の認可 → 所有者との協議 → 調わなければ裁定という段を踏むもので、しかも建物については「線路を支持するため」に使う場合に限られています。建物の中を通す配線は、この制度の外です。

光回線の承諾を決める前に見る条文を並べた図。使用権は協議から、建物は線路を支えるだけ、立入りは住む人の承諾、あとで動かせる条文、移設の費用は所有者負担になることがある。

第128条の使用権は「協議を求めることができる」まで

電気通信事業法第128条第1項は、認定電気通信事業者について、線路を設置するため他人の土地や建物を利用することが必要かつ適当であるときは、「総務大臣の認可を受けて、その土地等の所有者に対し、その土地等を使用する権利の設定に関する協議を求めることができる」と定めています。

読み方のポイントは3つです。

  • 認可は「協議を求める資格」であって、使う権利そのものではありません。第6項・第7項で、協議が調って総務大臣に届け出たときに、はじめて使用権を取得します
  • 第1項のかっこ書きが範囲を絞っています。主として一の構内や建物内にいる者の通信のためにそこへ設置する線路等は、「公衆の通行し、又は集合する構内等に設置するものに限る」。アパートの住人だけのための建物内配線は、ここに当てはまりません
  • 第2項ただし書がもう一段絞ります。「建物その他の工作物にあつては線路を支持するために利用する場合に限る」。建物は線を支える台としてしか出てきません

使用権の存続期間は第3項で15年、地下ケーブルなどの地下工作物や鉄鋼・コンクリート造の地上工作物を目的とするものは50年とされています。協議が調わないときは第129条第1項で総務大臣の裁定を申請できますが、認可があった日から3か月を経過したときは申請できません。

承諾しないと、入居者に不利益がありますか?

その事業者が引けない、というだけです。ただし都合の悪いことも書きます。いまの募集では、回線の有無そのものより「工事が必要かどうか」を見られます。断り続けた部屋が決まりにくくなることは、現実に起きます。「断れる」と「断ったほうがよい」は別の話です。設備として自分で入れる側の判断はインターネット無料は築古賃貸でも導入できるか|オーナーが確かめる順番に順番で書いています。

一時使用と立入りには、居住者の承諾が要ります

第133条第1項は、工事の資材置場、非常時の重要通信を確保するための設備、測標の設置——この3つの目的で、他人の土地等を一時使用できると定めています。ここも段があります。

  1. 第2項——総務大臣の許可が要る(天災・事変などで15日以内の一時使用をするときを除く)
  2. 第3項——あらかじめ土地等の占有者に通知する(困難なときは使用開始後、遅滞なく)
  3. 第4項——一時使用しようとする土地等が居住の用に供されているときは、その居住者の承諾を得なければならない
  4. 第5項——期間は6か月以内(仮線路や測標を設置したときは1年)
  5. 第6項——立ち入る人は許可を受けたことを証する書面を携帯し、関係人に提示する

第134条第1項は測量・実地調査・工事のための立入りで、第2項で第133条の第2項から第4項まで及び第6項が準用されます。つまり立入りにも、居住の用に供されているところは居住者の承諾が要ります。

ここを取り違えると順番が狂います。オーナーが承諾したから部屋に入れる、ではありません。入居中の部屋については、承諾するのは住んでいる人です。敷地の設備で誰が何を決めるかは敷地の電柱は、電気事業法で立っているのではありません|築古アパートのオーナーが契約書から確かめる3点と同じ考え方になります。

入れたあとに動かしてもらう条文もあります

第138条第1項は、使用権に基づいて線路が設置されている土地等について、利用の目的または方法が変更されたため、その線路が土地等の利用に著しく支障を及ぼすようになったときは、所有者は移転その他の措置を請求できると定めています。第2項で事業者は「業務の遂行上又は技術上著しく困難な場合を除き」その措置をしなければなりません。

ただし第5項があります。措置をすべき旨を定める裁定においては、その措置に要する費用の全部又は一部を土地等の所有者が負担すべき旨を定めることができる。

建て替えや大規模な修繕を考えているなら、承諾する時点でここを書面にしておくかどうかで、あとの負担が変わります。「将来こちらの都合で工事をするときは、移設の費用をどちらが持つか」——この1行です。

よく言われる説明と電気通信事業法の条文を比べた図。言われがちなのは法律で引く権利がある、大家は断れない。条文にあるのは認可のうえで協議を求める、建物は線路を支える場合だけ、支障が出れば移転を請求できる。

相談が増える方向にある理由(2026年9月17日時点)

2026年9月4日、情報通信審議会が総務省に「ネットワーク環境の変化を踏まえた接続政策等の在り方」第一次答申を出しました。その概要資料に、賃貸のオーナーに関係する事実が2つ書かれています。

  • 令和6(2024)年12月に、公衆交換電話網(PSTN)からIP網への移行が完了した
  • 令和7(2025)年9月、NTT東日本・西日本から、メタル設備を利用した加入電話等について、令和17(2035)年を目途に光回線及びモバイル回線を用いたサービスへ段階的に移行する方針(メタル縮退)が示された

同じ資料には、メタル回線設備は2035年頃に維持限界を迎えるという記述と、メタルと光で共用している電柱・管路の費用の配り方を見直すという検討項目が並んでいます。電柱・管路の状況の情報開示は令和8(2026)年内を目途とされています。

これは事業者間の接続料の話で、明日すぐオーナーが何かをする話ではありません。ただ、昭和や平成初期に建てた建物に残っている電話の配管が、10年ほどかけて役目を終える方向にあるのは確かです。だから「引かせてほしい」の連絡は、これから減りません。慌てる必要はなく、断るか承諾するかを毎回その場で考えるのをやめて、条件を決めておくほうが楽になります。

都合の悪いことも書いておきます

ここに書いたのは、条文がどこで何を決めているかという位置関係です。実際にその事業者が認定電気通信事業者に当たるか、その工事が第128条の線路に当たるかは、個別に見ないと分かりません。賃貸借契約の側で入居者の工事をどこまで認めているかも、契約書ごとに違います。法律上の判断が必要になる場面では、弁護士にご確認ください。

建物に穴を開ける工事は、断るか認めるかの二択ではありません。「外壁は貫通しない」「共用部の配管までにする」「退去時に撤去する」——条件を付けて認める形が、いちばん現実的です。電気の側で4年に1回来る調査の断り方は4年に1回の電気の調査は、断られたら行われません|築古アパートのオーナーが停電と断水で動く順番に書きました。同じ構造です。

今日やることを1つだけ選ぶなら

賃貸借契約書の「模様替え」か「造作」の条項を開いて、通信の配線工事がそこに入っているかを確かめてください。入っていれば、承諾するかどうかはその条項の運用の話になります。入っていなければ、次に作る契約書へ1行足す材料になります。法律の条文を読みに行くより、自分の契約書を先に読むほうが早く決まります。

出典

  • 電気通信事業法(昭和59年法律第86号)第128条・第129条・第133条・第134条・第138条(e-Gov法令検索・2026年9月17日時点)
  • 情報通信審議会「ネットワーク環境の変化を踏まえた接続政策等の在り方」第一次答申 概要(令和8年9月4日・総務省報道資料)

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